第12話

「ええと、今日の連絡は、保健委員が帰りに仕事があるので保健室に来るように、とのこと……だそうです。まあ、多分あれだろうな、今度ある身体測定だろうな。おい、太田、仕事サボろうとか考えるんじゃないぞー。」

毎朝恒例のホームルームで畑山先生は連絡をする。朝からよくそんな声量を出せるなと初めは驚いていたが、もうだいぶ慣れてきた。

「だあっ、そんなことするわけないじゃないっすかー。」

「この前、仕事忘れて帰っちまったやつはどこの誰だっけなあ」

「いや、あれは、まあ……そういうこともたまにありますよねって話っすよ」

よく寝ていて仕事を忘れがちな、お調子者の典型、太田くんはよく先生に絡まれる。場を和ませるトークをする彼はすごい。みんなからも談笑が聞こえる。

「いや、ないだろ。まあとにかく気をつけろよ。あとは……ああ、二年一組の図書委員当番が今年初めてらしい、です。紺野と新美だっけな。よろしくな。」

二年一組になって二ヶ月。初の担任で慣れないことばかりだろうに、畑山先生はしっかりとクラス全員の名前と出席番号、どこの委員会に所属しているか、果ては部活まで、かなり多くのことを早々に記憶していることがわかった。いつ、どのクラスでもクラスメイトの名前と顔が一致するのが遅く、一致されるのも遅い僕にとっては尊敬しかない。

そう思っていると、僕の右斜め前方に座る紺野さんが少し振り返って僕を瞳で捉えると少し、微笑んだ。僕もそこらのイケメンみたく微笑み返してあげたいところだけども、どう笑えばいいのかをあたふたと考えていたら、すっかり機会を失ってしまった。

まあいいか。あとで会えるから。

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