第11話
それから、僕と紺野さんは少しずつ話すようになった。
「あれ、次って移動教室だっけ?」
「そうだよ……あっ資料集も忘れないで」
「あっそれは聞いてた!ほら、じゃーん」
「そこは聞いてるんだ」
「本来は全部聞いてるんだけどどっかのタイミングで一部分だけ抜けちゃうとかよくあるんだよね」
「それはまた困った癖だね、図書委員の仕事も忘れずにね」
「それはそれは忘れませんよー。それ忘れてたら認知症になったと思って」
またある時は、
「ねね、なんの本読んでるの?」
「『僕の黄金の姫君』ってやつ」
「へえ、なんか新美くんが恋愛小説読むと思ってなかった」
「基本何でも読むけど、、確かに恋愛小説はあんまり読まないかも」
「新美くんの小説もSFとか探偵ものとかはあるけど恋愛はないよね」
「僕の場合、恋愛は全て本の中の情報しかないからベタなパターンしか書けないというか……」
「私ベタ好きだよ」
「前も言ってたね」
「ええ、言ったっけ?」
「言ってたよ」
「そっかあ、じゃあファンのためにベタな恋愛小説書いてくれる人いないかなあ」
「いないんじゃないかな」
「いや、そこはいてよっ!」
でもこういうことも所詮神様が僕に少しだけ運をつけてくれたというだけの話であって、
「百合華、次移動だから一緒に行こ!」
と彼女の友達が呼べば、少し申し訳なさそうな顔をしながら去っていくまでが決まっている。
僕と彼女は住む世界が違うのだ。
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