第3話

今年の四月ごろ、新しい学年にも上がり、委員会を決める時間があった。僕は当然、図書委員。いつでも、図書委員は面倒な仕事が多いことや地味めな人たちが集うことが多いことで人気を成していなかった。今年ももれなく、僕は図書委員に配属。残りの一枠は井田くんだろうか、間宮さんだろうか……

「はい。私図書委員やりたいです。」

思ってもいない方向から声が聞こえ、思わず振り返る。一番窓側の列の後ろから二番目の席。凛とした声で言葉を発した彼女こそ紺野百合華だった。ざわめく教室に気づかないのか、担任の畑山は続ける。

「おっ、紺野がやってくれるか。それじゃあ図書委員は新美と紺野で決まりだな。次ー、保健委員と清掃委員、かな。やってくれる人ー?」


「ちょっとどうしたの、紺野サン」

「今度は図書委員の男を落とす気なんじゃないの?」

「えー!それはやばすぎ、っていうかいいやついないっしょ」

「自信があるんじゃないの、イキってるやつより陰キャだったら自分に即惚れるんじゃないかって」

休み時間になると女子の軍団の声が聞こえてくる。聞きたくもない、あんな甲高く笑う声なんて。

でも、今回ばかりは気になる……。なぜ、紺野さんが図書委員に立候補したのか。それが永遠の謎だろう。

チラリと後ろを覗けば、いつものように窓の外を見ている紺野さんがいる。僕のように邪魔者扱いをされているわけでもなく、それなりに仲の良い友達もいる印象があるが、時々彼女は一人でいることがある。

それは彼女の美しさゆえのものであるとも感じている。彼女は学年一の美少女と言われるがゆえに先ほどの女子グループの主犯格の笹村さんの好きな人をも奪ったと噂されている。顔が良いからと言って学校で過ごしやすくなるとも言えないという場面を見る限り、うまく学校生活を送れている人はすごいんだなと改めて感じさせられる。

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