【第2シーズン?】不定期連載

第121話【第2シーズン?】異世界転移始めました

世界で5人目の超深層級探索者 三崎考の固有魔法デウス・エクス・マキナにより、地球圏からダンジョンやモンスターに関連するあらゆるものが消え去ってから7年。


一度は完全に消失したと思われた魔素が再度地球圏でも観測され、さらに1年前には再びダンジョンおよびモンスターの発生が確認された。


これに伴い失われたと思われていた探索者達の多くの超常の能力が再度発現した事も確認され、世界はあっという間にダンジョンが存在した7年前の状態に逆戻りした。しかし完全に元通りになったという訳でもなく、7年の歳月を経たことから世間にはの探索者達が溢れていた。


そんな新しい時代。今日も三崎考(39)は職場の国立高度計算機研究所に向かおうとしていた。なお7年経てば当然三崎も7歳年を取るわけで、配信でぶいぶい言わせていたのが32歳の時。あっという間に彼もアラフォーとなっていた。


とはいえ。特に大人になってから気づくことなのだが、大人とは思っている以上に大人では無い。もちろん社会的な地位や責任、役割などがあるため表面上は上手い振る舞いができるようになっていくため、年少の子どもたちから見ると大人は大人に見える訳だが…


つまり何が言いたいのかというと。三崎考は40歳を目前にしても「」ということである。


・ ・ ・


国立高度計算機研究所(旧国立ダンジョン技術研究所)がまた名称を変えて国立ダンジョン技術研究所に名前を戻そうとしている中、三崎はとある実験の準備に連日連夜取り組んでいた。


その実験名は「魔素への介入による人為的次元振の誘発」、三崎流に訳すと「ダンジョン作ってみた!作戦」である。


一度は世界から綺麗さっぱり消え去ったダンジョンだったが、まさに1年前にがたまたま観測された。この観測結果の解析自体がまったく完了していないものの三崎を含めた多くの科学者が思った。


「観測できるのであれば再現できるのでは?」と。


そこから各国において人造ダンジョン実現に向けた熾烈な研究競争がスタートすることになる。なおダンジョン自体も継続して自然発生しており、世界はダンジョンを探索したりダンジョンを確保するという概ね7年前までと同じ活動と、加えてダンジョンそのものを人工的に作り出すという2つの大きな活動が動いていた。


そんなこんなで三崎が1年かけて取り組んできた「ダンジョン作ってみた!作戦」の第1フェーズの実験がついに今日、始まろうとしていた。


しかしその日は朝から何かと調子がおかしかった気がすると三崎は後から思い出すことになる。


職場に向かうために朝自宅のマンションから出て階段を降りようとすると足を踏み外し、頭から落ちそうになったところで持ち前の身体能力を活かして空中で後方抱え込み2回宙返り2回ひねりを決めて着地してマンションの管理人さんに拍手され。


そして駅で電車を待っていたところ急に騒がしくなったホームの端を確認すると子供がホームから落ちていたため颯爽と線路に降りてその子供を助けた上で、電車が来る前にホーム下に存在している退避用スペースで無事に電車をやり過ごし。


さらに電車を降りた後に歩いて研究所に向かう途中、信号を無視したトラックが突っ込んできているのに気づいた三崎は周囲の学生や周囲の人たちを一斉に逃した後に、正面からトラックを受け止め、そして持ち上げ、更に逆さまにしてタイヤが空を向くようにして地面に置いた。


そしてやっとの思いで研究所の自室に到着すると専用端末を起動して話しかける。


「ということが朝っぱらからあってな。朝からさすがに疲れたわ」


『マスター。それ、ネット小説なら3回位異世界に転移か転生してますよ』


「それは俺も思った。というかアルファもネット小説とか読んでるの?」


『えぇ。別にネット小説に限りませんが、いわゆるユーザージェネレートコンテンツは一通りクローリングしてますよ。いい勉強にもなりますし世界の流れも結構見えます』


三崎が話しかけているのはアルファ。デウス・エクス・マキナにより一度は消滅した彼女だったが、2年ほど前に三崎が純粋な科学の力を用いてバックアップデータから彼女を復旧。いまだに研究所内の専用環境に閉じられてはいるものの、過去と遜色ないレベルで三崎と意思疎通が可能となっており、三崎の研究の補助を行っていた。


「ふーん。ま、それはともかく。今日はいよいよ初実験だな!加速器の調子はどうだ?」


『問題ありません。全てのコンディションが良好です。予定通り13時から起動実験を行えます。どうしますか?』


「おーけー、なら予定通りで。いよいよだな」


・ ・ ・


その日の13時すぎ。国立高度計算機研究所(旧国立ダンジョン技術研究所)の地下に極秘に設置された実験施設にていよいよ「魔素への介入による人為的次元振の誘発」実験の第1フェーズが実施されようとしていた。


この実験は秘匿性が非常に高いことから実験室内には三崎がただ一人。なお記録のために実験室内は録画されており、研究所の所長を含めてごく一部の人間のみが閲覧可能となっていた。


そしていよいよ


『マスター。加速器の出力安定しました。いつでもどうぞ』


「よし。じゃあいくぞ。ポチッとな」


その瞬間、三崎を中心として多数の次元世界を揺るがせる大規模次元振が発生。後に確認された実験室内の映像では、実験装置の起動ボタンを押した瞬間に三崎の姿が消失したまさにその瞬間が捉えられていた。


・ ・ ・


「…で、ここどこよ?」


「…どこですかね?」


「…いや、と言うかなんでまたお前も実体化してるんだよ?」


「…それも私に聞かれても困りますね」


三崎とアルファは呆然と周囲を見渡した。気づいたらまるで中世ヨーロッパの王宮のような場所に立っている。さらに二人の周囲を何やら古風な貴族風な衣装をまとった人間や、最近ではハロウィンでしか見ないような魔法使いの格好をした人たちが取り囲んでいる。さらに二人の足元には大きな魔法陣?が書かれていた。


当惑した二人を他所に、周囲の人々は「成功だ!」や「ついに…!!!」等と大変に盛り上がっていた。はてどうしたものか?と顔を見合わせた三崎とアルファの前に突然髭面の偉そうなおっさんが進み出てきて、


「ようこそアルコーン王国へ!勇者様!精霊様!これで世界が救われます!!!」


と叫んだ。


・ ・ ・


ダンジョン技術研究所職員、自作ロマン武器を試したくて副業で配信始めました。

第2シーズン 異世界転移始めました


つづく、かも?


・ ・ ・


【作者あとがき】

みなさま大変ご無沙汰しております。いかがおすごしでしょうか?


突然ですが「佐々木とピーちゃん」のアニメ版を見ていて、現代ファンタジー×異世界転移もおもろいやんと思い、そういえば三崎とかアルファって異世界行ったらなにするんだろう?とふと気になり、気づいたら書き終えていました。


現状ではあくまでSS的なノリで書いたので本作続けるかどうかは未定ですが、もし関心ある方がいればコメントください。


なお以下の新作は最近真面目に書いています。ダン研とはかなりテイストがことなりますが王道の異世界戦記物にご感心ある方は以下もどうぞ!


「おっさん、魔法を失い拳で語る。」

https://kakuyomu.jp/works/16817330669667670355/episodes/16817330669672637680

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