第118話

ついにアルファによって明かされたデウス・エクス・マキナの真の能力。三崎自身はその能力に気づいていたもののあまりにも世界に対する影響が大きすぎるために黙っていたのだ。


デウス・エクス・マキナという言葉から連想される機械仕掛けの神。これとロマン武器を紐付けることでその実態を隠した。


実際、デウス・エクス・マキナという固有魔法はダンジョンやモンスター、そして魔素を消滅させるためであればかなり汎用性の高い固有魔法である。


そのため三崎はモンスターを殲滅するため、そしてダンジョン内で生活するためにデウス・エクス・マキナを活用し、それの解釈を自分の趣向に寄せる形でロマン武器の実現として利用してきたのだった。


”なんとまぁ”

”ロマン武器どころじゃない能力だったw”

”え?まじ?”

”それってマジでとんでもない固有魔法では?”

”もしやそれつかえば助かるじゃん!”

”ん?でもそれ使うともしやアルファちゃん達は…!?”


三崎の固有魔法の真の能力を知らされた地球の人たちは自分たちが助かる手があることに気づき、そしてさらに三崎とアルファ達を応援してきた人たちはなぜ三崎がその魔法の行使を渋っているのかにも気づいた。


「マスター。あなたは研究者であり技術者です。あなたはこれまでも、そしてこれからも技術の発展と共に歩む人です。そんなあなたはダンジョンやモンスターといった理の外の存在を許容することができなかった。それでもなお、矛盾していてもその理の外の存在すらも飲み込んだ理の世界を実現しようとしている。それがあなたの世界です」


アルファからの言葉を最後まで黙って聞いていた三崎は、一つため息をつくと、


「…ったく。本当にお前達はAIかよ」


と泣きそうな、それでいて苦笑いをしているような何とも言えない表情でアルファ達に対して悪態をつく。


「あぁ、お前の言う通りだ。俺の固有魔法 デウス・エクス・マキナの能力はロマン武器の実現なんかじゃない。というかロマン武器の実現がその能力だったらアルファ達が人間みたいな状態で存在すること自体に無理があるだろ」


とふっきれた様子で話し始める。


「その能力はアルファ、お前が言ったとおりだ。ダンジョンやモンスター、魔素やさらにダンジョン素材なんかも含めてあらゆる理不尽な存在を消し去る能力。そして皮肉なことに全てを消し去るために必要な手段をすべて実現できてしまう。それこそが俺のデウス・エクス・マキナであり、そして俺自身が心の底で願っていたことだ」


艦橋を少し歩き、そして外の宇宙を眺めながら


「俺が願うのは唯一つ。自分自身の能力で、自分自身の努力で、そして技術と理の力で、正当に夢を実現することなんだ。ダンジョンやらモンスターやら、それに魔素なんかの不思議なマジカルパワーじゃない、ちゃんと系統だった理論の上で、その上で自分の夢を叶えたい。それが俺にとってのロマンなんだよ」


”これはまた…”

”俺氏、正統派研究者。三崎氏を色物扱いしてました。ごめん”

”俺も技術者やってるけど気持ちは分かる”

”確かにダンジョンとかモンスターが出現してから色々おかしくなったもんなぁ”

”ダンジョンとかモンスターが出現してなかったら世界ってどうなってたんだろうな?”

”それは確かに気になるところだよね”

”意外とダンジョンとかモンスターが無い方が人類は進歩したりして”

”真面目な話、それは全然ありうると思うぞ”


三崎の独白を聞いたアルファ達と、そしてリスナー達がその言葉を噛み締めながら引き続き静かにその様子を伺っていた。しばらく外の宇宙空間を眺めていた三崎は、アルファたちの方に振り返ると


「ただ、俺にとってはお前たちとの生活もかけがいのないものになってしまったんだよね。今更ながら実体化はすべきじゃなかったとすごく反省している」


と腹をくくった表情で、しかし少し泣きそうな顔をしながらアルファ達に近づいてきた。そして最後に問いかける。


「…本当に良いのか?」


アルファシスターズの4人はお互いの表情を確認しあいながら互いに頷いた。そして代表してアルファが答える。


「マスター。私達は構いません。お願いします」


その言葉を聞いた三崎は一瞬目をつむり、


「わかった。ならもう時間がない。早速はじめるぞ。デウス・エクス・マキナ、開放!!!!!!!!」


三崎を中心にして虹色の魔力が渦巻いていく。その虹色の魔力はそのまま拡大していき、超銀河ゴッドロマンの背部にまるで虹色の羽のような形状となりながらどんどん巨大化していった。


「いくぞ!!!!!真・デウス・エクス・マキナ!!!!!!!」


三崎が叫ぶと同時、さらにその出力が急上昇した虹色の羽が月の軌道から一直線に地球に向かって伸びていき、そして地球全てを包み込んだ。


虹色の光に包まれた地球では、その軌道上に存在していた50万体にもおよぶモンスターが光の粒子となって消えていく。そしてその虹色のオーラは地球にも降り注ぎ、あらゆるダンジョンやモンスター、ダンジョン素材が消滅していく。


もちろん、鬼ヶ島や、三崎が作成していたダンジョン素材によるデータセンターなども光の粒子となって消えていく。


三崎の直ぐ側にいたアルファ達や、ゴッドロマン自体もその影響を受けて消えていこうとする中、突然アルファが三崎に駆け寄って抱きつきながら口づけを交わした。


その一瞬の間の後、呆気にとられた三崎に対して


「マスター。どうやらAIも愛を知るようですよ?」


とイタズラが成功したような表情をした後に、


「私にとっての最大のロマンは人を好きになれたことでした。マスター、ありがとう!」


そしてアルファは微笑みながら光の粒子となって消えていった。


この日、地球圏からダンジョンやモンスターに関するあらゆるものが消え、人類の歴史は再びダンジョンやモンスターが存在しない世界線に戻った。

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