第117話
覚悟を決めた穏やかな表情で語りかけてきたアルファを見た三崎は一瞬呆けた表情をした後に、
「は?お前は何を言ってるんだ?」
と慌てた様子で取り繕う。その不自然な様子を見たリスナー達も
”なんか三崎の様子が?”
”それにアルファさんたちの様子も?”
”デウス・エクス・マキナがどうしたって??”
”とうか何でもいいから助けてw”
”それなw”
”緊急警報が街中で鳴り響いてるんだけどw”
”テレビもすごいことになってるなw”
と自身の身の安全を気にしつつも三崎とアルファ達のやり取りを固唾をのんで見守っていた。
「デウス・エクス・マキナ。それをしっかり使ってくださいと言ったのです」
三崎の慌てた様子の返答を気にかけた様子もなくアルファは繰り返す。その言葉を聞いた三崎は
「いや、だからお前は何を…」
「マスター、隠しごとは無駄ですよ」
「そうそう、私達にもちゃんとわかっちゃってるんだよねー」
「そうですね、そもそもマスターが嘘とか隠し事下手ですしね」
「…元からいつかはこういう日が来ると思っていた。むしろこれまでが上出来すぎた」
アルファに続いて、アルファ2がにこにこしながらもやれやれと苦笑し、アルファ3もアルファと同じような覚悟を決めた微笑みを浮かべ、そしてアルファ4は何かに満足した表情で頷いていた。
なおも何かを言おうとした三崎を制して、
「マスター、この状況を解消できる手立てをお持ちですか??」
「それなら今から考える!!!!!」
「…今から考えて間に合うのですか?もうモンスターも地上への降下準備に入りつつありますよ」
アルファの的確な指摘に対して苦虫を潰したような表情をした三崎。三崎達はすでに月の静止軌道まで上がってきており地球方面へ急行しつつあるがそれでもなおその距離は遥かに遠い。
三崎が考えうるどのロマン武器でもこの距離を詰め、そして地球を覆うように存在するモンスターを消し去る手立てが思い浮かばなかった。
そして他の手段含めて実現可能性が理解できてしまうからこそ三崎は艦橋で一人項垂れることになる。
「…いつから気づいてた?」
「デウス・エクス・マキナのことですか?それはもちろん、最初から」
”どういうこと?”
”頭上も気になるし、こっちの会話も気になる”
”何やら深刻な雰囲気”
”うーむ??”
”早く助けてw”
様子が様子なだけにリスナー達も静かに見守りつつ、一方で自身たちの身にも危険が及びはじめていることからかなりソワソワしていた。そんな様子をチラ見したアルファが説明を始める。
「デウス・エクス・マキナ。マスターの固有魔法。マスターはこの固有魔法の効果を”ロマン武器を実現する力”と表現しましたよね?」
「…あぁ」
「それがそもそもおかしかったんですよ。デウス・エクス・マキナという名称とロマン武器は何のつながりもありません。他の超深層級探索者たちの固有魔法の名称とその効力はわかりやすく一致しています。しかしマスターのそれは違う」
「…そうだな。だが実際にたくさんのロマン武器を実現してきただろ?」
「そうですね、だからこそ最初は私も騙されかけました。しかしいくつかの戦いを経て確信しました。というか最初に固有魔法を発現した時から確信していれば、いま貴方を悩ませることもなかったかもしれませんね」
淡々と言葉を重ねるアルファに対して三崎は諦めたようにその言葉を静かに聞いていた。
「マスター。あなたが最初に固有魔法を発現した際の風景、それは近未来の都市でした。そしてそこにはダンジョンもモンスターもおらず、そしてダンジョンに関連するような品物も存在していなかった」
”ん?”
”確かにそういえば三崎が初めてデウス・エクス・マキナ使った時に未来都市が出てきてたな?”
”あの心象風景、考察勢の中では不思議扱いされてたよね?”
”確かに。ロマン武器がいっぱい存在している光景かと思ったらただの近未来都市だったしな”
”ん?いまアルファちゃん、ダンジョンが存在しなかったとか言った?”
”お?”
アルファの言い回しに何人かの勘の良いリスナー達が真実に気づき始める。そう、三崎のデウス・エクス・マキナ、その真の能力は
「デウス・エクス・マキナ。機械仕掛けの神。元をたどれば古代ギリシアの演劇の演出手法の一つですね。演劇中においてその内容が錯綜した際に突如登場して、その物語の内容を強制的に解決・進展させる神様を指します。それまでの物語の因果関係を放棄してしまうので場合によっては批判されるケースもあります」
三崎の方を眺めながら、アルファが告げる。
「マスター。あなたの固有魔法、デウス・エクス・マキナの真の能力はロマン武器を実現させることではありません。その能力はダンジョンやモンスター、そして魔素といったものをこの世界から消し去る能力なのでは?」
ここについに三崎のデウス・エクス・マキナの真の能力が明かされた。
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