第107話

第1次アステロイド会戦で完勝を収めた三崎達はそのままの勢いで月に向かって順調に進んでいた。


なおデウス・エクス・マキナで召喚していた三崎艦隊は魔力温存のために既に消しており、アルファ達の実体化と旗艦を守る数隻の盾艦のみの実体化を維持したままの編成となっている。


先の会戦の後も数度小規模なモンスター群との遭遇戦は発生していたものの、それらのモンスターは文字通り鎧袖一触で粉砕していた。


そして地球から打ち上げられ早くも1日以上が経過しようとしていた。この間、三崎は軽い休息はとっていたものの宇宙にやってきた興奮と度重なる接敵でかなりテンションが上っていたこともありほぼずっと出ずっぱりであった。


デウス・エクス・マキナを発動してアルファ達を実体化し、さらに敵モンスターとの戦いも今のところ問題ない事を確認した三崎はしばらく休むことにした。


月への行程も1/3ほどを消化しており、おそらく月で派手に戦うことになることを考えると2回ほどは休息をいれておいた方が賢明かと考えたためだ。


「ということで諸君、俺はちょいとしっかり休憩してこようと思う。何もなければ8時間ぐらいはガッツリ寝たい」


”早くねろw”

”そして配信が流れっぱなしで我々も辛いw”

”え、ずっと見てるやつもいるの?”

”仕事とか学校は??”

”おいばかやめろ”


打ち上げから丸1日以上にわたり配信自体もずっと流れっぱなしになっており、多くのリスナーが出たり入ったりしていたもののこの配信に関連するワードは常にトレンド上位に入り続けていた。


「はい、マスター。しっかり休んできてください。この先もまだ長いので休めるうちに。ここは私達に任せてください」


「おまかせあれー」


「ご心配なく」


「…しっかり寝てね」


実体化していたアルファ姉妹たちも4者4様のリアクションを取る。彼女たちのリアクションを確認した三崎は一つ大きなあくびをすると、


「ありがとう。じゃあ悪いけどちょっと休むわ。なんかあったらすぐに起こしてくれ」


そう言って艦橋を出て自室に向かっていった。



・ ・ ・



それから数時間。引き続き宇宙空間を進む宇宙戦艦のブリッジの中でアルファ姉妹はのんびりとお喋りに興じていた。


「さっきまでのモンスターの襲来が嘘みたいに静かだねぇ」


とアルファ2が操舵席でのんびりと伸びをしながら姉妹たちに話しかけていた。なお平時は自動操縦モードになっているので操舵手は特にすることが無い。


「…嵐の前の静けさ」


通信・管制用の座席で周囲の索敵をしつつアルファ2の相手をするアルファ4。今のところ周囲に敵影もなく、魔素濃度にも特に異常はみられない。しかしこれまでのモンスターの出現傾向を考えると次の戦いが無いわけがなかった。


「確かに。これまでの敵モンスターの適応スピードを考えると、次はもう艦隊戦は対応されていると考えておいたほうが良いでしょうね」


アルファ3はこれまでの敵モンスターとの戦闘データを解析しながら次の戦いに備えていた。


そしてアルファはその姉妹たちからの報告を聞きながら、次の戦いはマスターを寝させてあげたまま突破したいがどうしたものか?と考えていた。


そのような空気の中、


「…魔素反応に異常な動きを感知。来るよ」


アルファ4が進路上に異常な魔素反応を確認。そしてその宙域からモンスターの出現を感知した。それを聞いたアルファは


「接敵まではどれくらいですか?」


「…このペースならまだ1,2時間はかかりそう」


「敵の様子は?」


「さっきまでのモンスターの大群とは少し様子が違う。数は減ってるけど一体一体が強そう。しかも連携が取れた動きをしてる」


アルファ4からの報告を受けたアルファはしばらく考えた後、もはや先程の会戦のような艦隊戦で敵を突破するのは難しい可能性が高いと判断した。


「であればこちらから強力な個体でうって出て個別撃破していきましょう。本艦に敵を近づけずに勝ちます。マスターにはしっかり休んでおいていただきたいので」


そういったアルファは腰掛けていた司令官席から立ち上がると、


「アルファ2はこのまま旗艦の操縦・管制を頼みます。アルファ3とアルファ4は私と共に出撃しますよ」


「「「了解!!」」」


そしてアルファ2を艦橋に残して3人は格納庫へ向かった。



・ ・ ・



これまでの三崎との戦いから学び、急速に適応を進めてきたモンスターたち。今回出現した個体たちもまた新たに学びを反映した形での進化を遂げていた。


まずはサテライトキャノンや波動砲という高密度な魔素による一斉掃射に対応するためにモンスター同士が協調したシールドを会得し、そして今回は艦隊戦で完敗していたことからモンスターそれぞれのサイズを大型化しつつ、それでいてまるで統制がとれた艦隊のように連携して戦うための準備をした。


モンスターたちもこれらの適応に自信を持っていたはずだったが、この進化の方向性は三崎とアルファによって既に予測済みだった。


三崎艦隊を待ち構えていたモンスター群の前には彼らから見たら非常に小さな3機のマシンが急速に近づいてくる。


だがモンスターたちはまったくわかっていなかった。機体のサイズなどまったく関係ない理不尽な存在がこの世界にも存在していることを。


そしてその3機のマシンは速度を全く落とすことなく、アルファの号令とともに


「行きますよ!アルファ3,アルファ4!!!合わせなさい!!!!」


「「おう!!!!」」


3機のロマンマシンが直列に並ぶと


「チェェエエンジ!!!!!」


ロマンマシン1号が頭に、ロマンマシン2号が上半身に、そしてロマンマシン3号が下半身に変形し、足りない部分はどこかから出現したパーツによって補われ、そして


「「「真・ロマンロボ!!!!」」」


モンスターの大群を前にポーズを決めると同時、その大群の中に突っ込んでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る