第105話

モンスター群5万体と三崎の固有魔法デウス・エクス・マキナによる総計100隻の宇宙戦艦によるダンジョン史上初の宇宙艦隊戦が開戦してから早くも10分が経過した。


純白の旗艦ニーベルンゲンの艦橋では豪奢な司令官席に腰掛けた三崎が戦況を確認していた。


なおこの三崎、いつの間にか服装が黒い士官服に変わっており赤いマントも羽織っていた。完全にコスプレである。


”おい、三崎はいつの間に着替えたんだw”

”さっきまで割りと真面目な探索者の戦闘服的なの来てたよな?”

”気持ちは分かるけどなw”

”日本人がこの服装するとマジで似合わないなw”

”それを言ってやるなw”


完全に観戦モードのリスナー達の画面には、旗艦の艦橋の様子、三崎達が確認している戦場全体のマップ、そして各戦域における戦艦からの中継画像のマルチアングルが配信されていた。


そんな中で戦況を確認していた三崎がやや微妙な表情をしながらアルファ達と相談をしていた。


「思ってるより戦況が動かないな?」


「そうですね。いかんせん数の差が大きいみたいです。50,000 対 100 でお互いに防御もしっかりしており遠距離からの打ち合いではどちらも損耗がほぼ無いですね」


「ふむ。艦砲射撃も意外と当たらないもんなんだな?」


「的のサイズも小さいですし、相手も動きますからね。それに宇宙は広いということで」


三崎が召喚した宇宙艦隊は各艦が数百メートルから1000メートルにも及ぶような超大型の宇宙戦艦であり、一方のモンスター群は数十メートルから巨大なものでも200~300m程度のサイズ感だった。


そのため相手のモンスター群の方が数で優勢な上に小回りも効く状態だったのである。しかも距離もまだ離れていることもあり、三崎艦隊の艦砲射撃もそのかなりの攻撃が相手側には避けられていた。


三崎としては銀英伝の宇宙戦艦同士の撃ち合いのシーンのようなものをイメージしていたこともあり若干の肩透かしを食うような気持ちになっていたのだ。


「まぁ当たらないものはしゃーないな。ということはこのまま突っ込んで各艦から小型機バラまいて近接戦闘で駆逐するのが無難か」


「無難に行くならそうなるでしょうね。かなり危険ではありますが遠距離からのエネルギー兵器も、各種弾頭による艦砲射撃も効果がないとなると近接戦でモンスター達を分断したうえで各個撃破するしかないでしょうね」


アルファとの相談を終えた三崎はひとつ頷くと、腰掛けていた司令官席からスッと立ち上がり無駄にマントを翻しながら


「全軍に告げる!これより我が艦隊は敵軍に吶喊する!!全軍紡錘陣形を取れ!!!敵中央部へ全速で突撃。付近の敵軍を駆逐しつつ敵軍突破後は全軍で取舵。そのまま敵軍方向へ反転しつつ、敵の殲滅が完了するまで一撃離脱戦法を継続する!!」


”おおw”

”なんかそれっぽいw”

”敵前突破w”

”ライ◯ハルト様w”

”その戦型は敵に魔術師がいたらコテンパンにやられるぞw”


リスナー達のツッコミや冷やかしをチラリと画面で確認しながらも銀英伝ごっこが段々と楽しくなってきた三崎はそのままのノリで艦隊の指揮を続ける。


盾艦を先頭に配置した三崎艦隊は紡錘陣形をとりながらモンスター群へ全速で突っ込んでいく。当然モンスターたちからの攻撃も接近するに従い苛烈なものになっていくが、各艦の防御機構を活用しながら捌いていく。


なおも全速で吶喊した三崎艦隊はついに敵モンスター群中央部にて接敵。各艦から無人機を射出して直掩機としつつ付近の大小様々なモンスターを狩り尽くしていく。


さらに三崎艦隊がモンスター群中央部に突っ込んだことで敵モンスター群の統率が緩み同士討ちもはじまった。


左右上下前後左右とあらゆる方向から攻撃を受けた三崎艦隊ではあるが敵モンスター群の連携不足もありそのまま敵中央部を切り裂いて無事に敵陣を突破した。


”おおおお、駆け抜けた!!!”

”冷静に考えると三次元での艦隊戦って全方向から攻撃が来てヤバいなw”

”見てるこっちがハラハラしたわw”

”雑兵の大群に対する精鋭部隊の中央突破は正解だったわけだw”

”結構爽快感あるなw”


敵軍を中央突破した後に敵の追撃を振り切ったことを確認した段階で三崎は艦隊を左方向へぐるっと直進させて再び敵軍へ艦首を向けさせながら


「アルファ、いまのでこちらの被害状況は?」


「我が艦隊の被害は0。全ての攻撃を防御することに成功しました。しかし射出した無人機は損耗率10%程度でそれなりに被害を受けています」


「ふむ。敵の状況は?」


「先程の我々の中央突破により敵の損害は30%を超えています。さらに陣形は大きく乱れたまま。このままあと2回ほど繰り返すと殲滅することは可能かと」


”アルファが完全に副官w”

”アルファさんも「我が艦隊」とか言ってたぞw”

”なんだかんだで付き合いいいからなw”


さらにその後も2回の突撃戦法を採用した三崎艦隊は敵モンスター群の駆逐に成功。第1次アステロイド会戦は一隻も宇宙戦艦を失うことなく三崎艦隊の完勝のままに終わった。

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