第104話

「…アルファ、もう一回言ってもらえる?」


『敵モンスター5万体、無傷で残っています』


「…マジ?」


『マジです。どうやら何らかの大規模な防御魔法を展開したようです。現在解析中なのでしばらくお待ち下さい』


”波動砲食らって無傷のモンスターさん達”

”さすが宇宙モンスター”

”50年にわたり人類を地球から出さなかっただけはある”

”一瞬で掌返しw”

”くるくるー”

”まぁ舐めていいわけない環境だわなw”


波動砲が着弾しているにも関わらず無傷のモンスター群に三崎とアルファが驚き、リスナー達が宇宙モンスターたちの評価を一瞬で掌返ししている中でアルファの解析結果が出る。


『…マスター、結果がでました。どうやらモンスター群が群れとして全体が協調してシールドのようなものを展開したようですね。しかもそのシールドに触れると、魔素の結合が弱くなり拡散するようです。要するに波動砲やサテライトキャノンのような高密度の魔素エネルギーの照射に特化した形の防御魔法ですね』


「…おお。マジか。完全に対策されてるじゃん」


”学習するタイプのモンスター”

”これは笑えないなw”

”しかもたった2回の攻撃で学んだと”

”けど毎回全滅してたよね?”

”その辺は謎だよな”

”地上のモンスターでもこんなことあるの?”

”確かに事例が無いわけじゃないけどこの速さでの適応は異常”


一部のリスナー達も言及している通りモンスターの適応や進化は地上のダンジョンでも事象として観測されている。しかし地上の場合は魔素濃度が非常に高い特級や一部の一級ダンジョンの、しかも深層や超深層でしか観測されていない事象である。


要するにモンスターが進化するためにはかなりの魔素が必要となるため地上ではこのような事象はめったに観測されない。


しかし宇宙空間においては地球から離れるにつれてそもそも魔素濃度が高くなることに加えて、もともと人類の進出が殆どなされてこなった事もあり魔素が溜まりに溜まっている状態だった。


そんな中で三崎は二度にわたり似たような攻撃手段でかなり大規模なモンスター群を屠ったのだ。普通であれば相応の時間がかかる適応・進化が発生したのもこれらの複数の要因が絡みあった結果だった。


そのような状態の中、モンスター群が待ってくれるわけもなく。


『マスター、モンスター群高速で接近してきます。どうしますか?』


「波動砲やサテライトキャノンは無効化されるんだよな?」


『おそらくモンスターの数次第かと。さきほどの防御魔法もかなりのモンスター数が揃わないと成立しない術式のようです。あとは恐らくですが指揮官的な個体もいるのではないでしょうか?』


「…なるほど。まぁいずれにせよ今の状態では波動砲は効果がなさそうってことだな」


『そうなりますね』


アルファの回答を聞いた三崎は再び「うーん」と少しの間考え、


「これ使うと更に面倒なことになりそうだけど、致し方なしか…固有魔法 デウス・エクス・マキナ発動」


艦橋の三崎を中心にして膨大な魔力が放出される。そして虹色の魔素の風が宇宙空間にも広がっていき、三崎のための空間が成立した。そして艦橋には実体化したアルファ、アルファ2、アルファ3、アルファ4が揃う。


「マスター、固有魔法を使ってよかったのですか?さらにえぐいモンスターが出て来るのでは?」


鬼ヶ島での覚醒の際にもあったように、固有魔法を発動するとダンジョンからの反発が発生して強いモンスターが発生することが知られている。地上でも先の戦いの鬼のようなとんでもないモンスターが出現するのだ。宇宙空間なら最早何がでてきるのか想像すらつかない。


「あぁ、まぁそうだろうなぁ。でもいずれにせよこの状況を打破するために時間をかけるのもイケてないからな。力には力を、だ。とにかく5万体のモンスターをさっさと片付ける」


そう言うと三崎は艦橋の中心部に歩いていき、


「デウス・エクス・マキナ、出力上昇!いくぞ、偽宇宙艦隊召喚!!!」


三崎から今までにないレベルの魔法が放たれ世界が軋みはじめる。


そして三崎達が乗船していた宇宙戦艦ムサシがその船体の形状を大きく変化させ、純白の巨大な宇宙戦艦となった。そのサイズは1,000メートルを超える超巨体である。


さらにその純白の旗艦の周囲には100隻にもなる漆黒の戦艦、巡洋艦、駆逐艦が現れていた。


”うおおおおお!!!???”

”こちらもさらにエグいことにw”

”完全に銀英伝w”

”これは旗艦ブリュン◯ルト!!??”

”帝国艦隊じゃないですかw”

”おい、しかも配信でクラシック音楽流れ始めたぞw”

”新世界よりw”

”やばい、むちゃくちゃテンション上がるw”


三崎のとんでも固有魔法 デウス・エクス・マキナにより艦橋の中身も大きく変化していた。その艦橋においてまるで玉座のような司令官席にドヤ顔で着座した三崎。


しゃーないなとその隣に立つアルファ。アルファシスターズはそれぞれ旗艦の操舵、艦隊の管制のために配置につく。


「よし、諸君配置についたな。これより敵モンスター軍5万体を迎え撃つ。全艦、全速前進!!!!」


純白の戦艦を中心にした宇宙艦隊が進みはじめ、後に第1次アステロイド会戦と呼ばれることになる戦いがはじまった。

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