第103話
ラグランジュポイントを無事に通過し、スイングバイにも成功した宇宙戦艦ムサシ。月へ向かう軌道に乗ってから約1時間後。再び眼前にはモンスターの大群が出現していた。
「さすがにこのペースでこの数は萎えるかも」
『六本木ダンジョンでのスタンピードの際のモンスター数を余裕で超えていますね。しかも各個体のサイズが圧倒的に大きいです』
”熱烈な出迎えw”
”マジで宇宙戦は色々なレートがバグるなw”
”マジレスするとなんでこんなにモンスター多いの?”
”多分だけど、これまで全然人類が開拓してなかったからまとめて出てきてる”
”確かに新規のダンジョンが発見されたら最初はモンスターの数が多いらしいな”
”それの比じゃない数だけどなw”
”そこは宇宙仕様ということで”
センサーと望遠カメラで捉えたモンスターの大群を見た三崎は若干ゲンナリしながらアルファにボヤきつつ
「まぁある意味で予想通りではあるわけだけど。だからこそのチョイスということで。アルファ、主砲発射準備」
『波動砲、発射準備に入ります。180秒後に発射可能になります。』
宇宙戦艦ムサシとモンスター大群の距離は充分に離れており接敵までもまだ時間があった。そのため三崎はさっさとまとめて敵を叩くことにした。
三崎の指示により主砲発射準備に入った宇宙戦艦ムサシの艦内全域にアラートが鳴り響き、全ての照明が非常灯に切り替わる。薄暗くなった艦内ではさらにエンジン系統の出力が絞られほとんど全てのエネルギーが主砲に回された。
『主砲へのエネルギー供給進めます。圧力上昇、非常弁全閉鎖。波動砲システム起動。接続完了』
「波動砲安全装置解除」
『安全装置解除しました。圧力、発射点へ上昇中。…最終セーフティー解除。圧力臨界値へ』
「波動砲用意」
『敵モンスター軍の座標固定。ターゲットロックオン』
「発射10秒前。耐ショック、耐閃光防御。配信画面も光量調整よろしく」
『5、4、3、2、1、発射!!』
轟音と閃光とともに主砲が発射された。光の奔流がはるか宇宙を駆け、モンスターの大群が位置していた場所に到達すると連鎖的に大きな爆発が発生していった。
”画面がホワイト・アウトしてたぞw”
”相変わらずエグい光景”
”先程のサテライトキャノンも大概アレですがw”
”これもヒドイw”
”汚ねぇ花火だぜ…”
”一方的に屠られるモンスターさん達”
”数を揃えても意味がないんだなw”
数秒間の照射の後、静けさを取り戻した宇宙空間には宇宙戦艦ムサシ以外には動くものが無かった。
『敵モンスター軍の消滅を確認しました。波動砲冷却開始。艦内モードを通常モードへ戻します。メインエンジンも再点火します』
アルファの声とともに艦内が非常灯から元の明るさに戻る。さらに波動砲の反動を抑えるために利用されていた各種エンジンやスラスター類も全て通常モードへ移行したことで艦内も元の状態に戻っていた。
「しっかしまぁ作った自分が言うのもあれだけどこれもエグい主砲だなぁ。砲身はどうだ?次も使えそうか?」
『現在精密な確認を進めていますが問題なさそうですね。出力次第ではありますが、あと2、3発はメンテナンス無しでも打てると思いますよ。動力炉の方も安定しています』
”もはや作業ゲーのような状態w”
”圧倒的な火力を淡々とぶちかますだけの簡単なお仕事です”
”マジで簡単そうにみえて困るw”
”そもそもが圧倒的な技術力が無いと成立しない作業w”
”人類の悲願がこんなにサクサク進んで良いのかw”
三崎とアルファのいつも通りのやり取りに加えて超長距離からの圧倒的な火力による面制圧の結果、まったく緊張感のない戦いとなっていた。しかも戦艦や砲身自体も特に問題が起きることもなく順調そのもの。
超深層探索者としての覚醒や、鬼ヶ島で万全の準備を整えていた三崎にとっては最早このレベルの戦いはあってないような物となってしまっていた。
そしてまさにこの状態を、人は油断と呼ぶ。
・ ・ ・
サテライトキャノン、波動砲と初っ端から最終兵器クラスの超ロマン武器をぶっ放して宇宙モンスターの大群を軽く捻り潰した三崎達はそのままの勢いで月に向かって順調に進んでいた。
波動砲をぶっ放してから数時間後。艦橋から見える星々を眺めながら、
「星が綺麗ですね」
と銀英伝ごっこをしながらアルファに話しかけ、
『は?急になんですか?』
と至って冷静なトーンで返されてしょんぼりしたりととても平和な時間が流れていた。そのタイミングで再び
『マスター。またモンスターの大群を確認しました』
「やれやれ。飽きもせずによく出てくるな。数は?」
『さらに先程よりも増えていますね。数えるのも億劫になるレベルですが5万体程度です』
”もはや意味がわらかない数w”
”なんだそれw”
”宇宙レートだとそれが普通普通”
”確かに宇宙モノだとそういう数字になりがちだよなw”
その数字に若干驚きながらも最早流れ作業のように波動砲の発射準備に取り掛かり、そして再びぶっ放した。
まぁこれで今回も終わってるやろ程度のノリで三崎は確認し、
「アルファ、状況を頼む」
『…マスター、信じられません。敵モンスター軍、無傷です』
「は?」
”は?”
”えw”
”お??”
”げ”
”ふむ”
彼らはすっかり失念していたのだ。すなわち、進化するのが人類だけの特権では無いということを。
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