第102話
三崎の召喚とともに軌道上に大きな円環が出現し、その中から大きな船体がその威容を誇るように出現した。全長約265メートル。見た目は旧式の超弩級戦艦にも見えるがその船首には大きな砲門が備え付けられている。
”宇宙戦艦!!!!”
”名前もそのまんまw”
”1番艦には永遠のリスペクトを…!”
”サテライトキャノンといいコレと言いw”
”宇宙モノは攻撃力がバグるなw”
アイテムボックスから出現したその船体はまんま宇宙戦艦ヤ◯トである。ただし細かい部分は三崎にもよくわからない部分が多かったので実際の軍や造船所の方々にもコメントをいただきながら突貫工事で作り上げた力作だ。
なおこの宇宙戦艦、デウス・エクス・マキナなどの魔法能力は一切使わずに作り上げておりまさに三崎の科学力の結晶の一つでもある。
「おおお、地球を背景にして浮かぶ宇宙戦艦…これだけで感無量だわ…」
トルーパーのコックピットの中から宇宙戦艦ムサシの召喚を確認していた三崎は一人で非常に感動していた。ロマン武器を自体はずっと作ってきており、スタンピードの際や鬼ヶ島事変においても大概やりたい放題をやってきた自覚はあるものの、今回の感動はこれまで以上のものだった。
宇宙戦艦ムサシの船体を確認するようにトルーパーでその周囲を飛行しながら外観を見ていきつつ、時折地球を背景にしたアングルで機体を止めては眺めていた。
”これは確かに感動するなw”
”三崎氏、ガチで感動中w”
”確かにこれまでのロマン武器もすごかったけど宇宙となるとちょっと別格感あるなw”
”しかもこの船は特になぁ”
”良いものが見れました…”
三崎やリスナー達が地球を背景にして宇宙に浮かぶその宇宙戦艦のあまりの尊さに呆けている様子を見ていたアルファは若干引きつつも、
『マスター、あとしばらくしたら月へのスイングバイを実施しますのでそろそろ準備をしましょう』
と三崎に声をかけた。このままほっといたらいつまでも眺めていそうだった三崎をなんとか正気に戻しつつ、トルーパーを宇宙戦艦ムサシの後部デッキに着艦させるべく誘導を開始する。
アルファの管制にしたがいムサシの後部デッキに着艦した三崎はそのまま格納庫へトルーパーを進めた。そして格納庫の隔壁が全て閉じられるとコックピットを開き、ついにムサシに降り立った。なお当然無重力状態なので、三崎はコックピットブロックを蹴って通路まで移動した。
「…宇宙戦艦への着艦と言い、この隔壁つきの格納庫といい、そして無重力状態でコックピットからドアを蹴って出てくると良い、ロマンがあふれすぎてヤバい」
”三崎の様子がさっきからおかしいw”
”でも気持ちはわかるなw”
”細かい部分だけど宇宙ならではだもんなぁ。ロマン味がすごいw”
”確かに宇宙モノの格納庫ってロマン溢れてるよなw”
”コックピットからの出方にすごいこだわりを感じたw”
三崎はリスナー達とカッコいいコックピットからの降り方や機体への搭乗の仕方を雑談しつつ、途中でパイロットスーツを解除して艦橋へ向かった。そして艦橋にたどり着くとそのまま艦長席に腰掛ける。
「アルファ、状況を頼む」
『はい、マスター。本艦は現在地球の周回軌道上を周回中です。今回は地球-月間のラグランジュポイントを経由して月に向かいますが、可能な限りスイングバイも利用します。宇宙戦艦ムサシの準備が完了次第、タイミングを確定します』
「りょーかい。ムサシの状況はどう?」
『各種計器に異常なし。エンジン系統、電装系、通信系、全て問題ありません。隔壁や与圧モジュールについても異常なし。マスターが活動する船内エリアは既に空気が存在するので好きに活動して下さい。あとは武装系のテストですが、これはあとにしましょうか』
”なんかすごいw”
”与圧モジュールとかかっこよすぎるw”
”ロマンしてるなぁ…”
”ロマってるな”
”ググるみたいに言うなw”
三崎とアルファが各種確認を進めつつ、その間もムサシは静かに軌道上の周回を続けている。そして全ての計器の確認が完了した。
「じゃあそろそろ出撃ってかんじでいきますか。準備はいいな?」
『はい、問題ありません。いつでもどうぞ』
「よし。では宇宙戦艦ムサシ、メインエンジン点火。ラグランジュポイントに到達次第全速前進して地球の重力圏を離脱して月へ向かう」
『メインエンジン点火しました。ラグランジュポイントは約3分後に通過します。エンジン出力調整してタイミングを測ります』
三崎の号令とアルファの復唱の後、船体がぐっと加速する。そして3分後。
『マスター、ラグランジュポイントを通過します』
「うむ。では宇宙戦艦ムサシ!月に向かって出撃!メインエンジン点火、全速前進!!」
『全速前進。…ラグランジュポイントを通過しました。…地球周回軌道からの離脱に成功。本艦はこれより地球圏を離れ月へ向かいます』
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