第101話

宇宙に到着して早々にモンスターの大群に襲われた三崎だったが、サテライトキャノンの一撃でそれらを薙ぎ払うことでひとまずの安全を確保していた。


「自分で撃っといて何だけど、サテライトキャノンもヤバいな」


『そうですね、しかも出力全開ではない状態でこれなのでかなりの代物です。地上だと危なすぎて撃てません』


”さっそくとんでも武器が出てきたw”

”これまでのロマン武器も大概だったけどw”

”威力だけなら屈指のロマン武器だよな”

”月は出ているか?が超好きw”

”わかるw”


今回三崎が使用したサテライトキャノンもどきは鬼ヶ島の地上設備で集積されたエネルギーをマイクロウェーブとして伝送して放つものだった。


鬼ヶ島ダンジョンでは上質で高密度の魔素が確保できるため、そのエネルギーを活用する方法を考えた結果としてたどり着いたロマン武器である。


「しかし地上からのエネルギー伝送で減衰とかもあんまり無いのも不思議」


『まぁその辺りは現時点では”魔素だから”としか言いようがない部分もありますが…ただいずれにせよまだ地球の軌道上だから使える武器ですね。地上設備から遠ざかるごとに運用が難しくなっていきます』


三崎版サテライトキャノンでは鬼ヶ島からのエネルギー伝送が必要になるため地球から離れていくごとにエネルギー効率も悪くなり、さらに位置取りの関係で利用が難しくなっていく。


このように運用が難しいロマン武器のことを三崎とアルファは考えつつトルーパー宇宙戦仕様の中で警戒態勢を維持していた彼らだったが、ひとまず付近の宙域でモンスター反応が完全に消失したことを再度確認して戦闘態勢を解除していた。


「ちなみにアルファ、やっぱさっきのモンスター群は俺の魔力に反応して出てきた感じだよね?」


『はい、そのようです。改めて各種データを解析しましたがマスターが魔法を使ったしばらく後に魔素反応が急激に活発化して小規模な次元振が発生。そこからモンスターの大群が現れたようです』


「また露骨な反応だなぁ」


地上のダンジョンにおいても「モンスターはどこから来るのか?」というのは長年の研究テーマとなっている。


地上ダンジョンでは現在では概ね2種類の発生方法が確認されており、ひとつは「ダンジョンが産み出す」方法、そしてもう一つが「時空の歪みから出てくる」方法である。


ダンジョンに棲み着いているタイプのモンスターはダンジョンが生み出したモンスターであり、探索者がダンジョンに来ようが来るまいがモンスターは野生動物のように存在している。


一方で時空の歪みから出てくるタイプのモンスターは、探索者がダンジョンにおいてなんらかの魔法能力を行使した際に出現するとされている。


要するにまるでシュレディンガーの猫のような状態のモンスターが存在し、探索者が魔法を利用したり何からの形で観測を確定することでモンスターが実体化してしまうのだ。


今回三崎達が宇宙においてさっそく遭遇したモンスターの大群は、三崎の魔力波動がきっかけになって出現したものだと推測される。


このようなモンスターの出現方法の場合はその探索者のレベルが高く、さらにそのエリアのダンジョンになかなか人がこなかった場合には魔力が溜まっているケースが多いため先程のように大群が現れるケースが地上ダンジョンでも観測されていた。


これらの状況を踏まえると、三崎が今後宇宙で魔法を使えば使うほどモンスターがどんどん出現するという非常に嫌な無限ループが発生することが予測された。


だからこそ三崎とアルファは最初はできるだけロマン武器に頼らないで既存のロケット技術を活用して宇宙探索を進めるつもりだったのだが。


「最初から予定が狂いましたなぁ…」


『残念ですが。マスターが乗ってきた宇宙船は先程大気圏に再突入して盛大に燃えてましたよ』


三崎がトルーパーに移った後にモンスターからの攻撃を受けて損傷していた宇宙船はそのまま地球の重力に囚われてどんどん落下していき、さらに損傷を受けていた箇所から構造が崩壊。既にきれいな流れ星となっていた。


”魔法使ったらモンスター出てくるって知らんかった!”

”それなり以上の探索者の間では割りと有名よ”

”徘徊型とかレベル低いモンスターとは別口ね”

”あと人が少ない不人気ダンジョンあるあるかも”

”宇宙は不人気だし高難易度だしで条件が完全にそろっているなw”

”たしかにこれは宇宙進出が進まない訳だわ”


「おっけー、まぁいずれにせよ月につくまでにずっとトルーパーの操縦席に座ってるわけにも行かないし」


なお三崎達は月までの旅程をおよそ3日程度と考えていた。深層探索者の能力を考えれば3日であれば何とか無理すればトルーパーのコックピットだけで保たないことも無いが、これからの戦闘の頻度を考えると出来れば体への負荷は下げたい。


それにいずれにせよ魔法を使えばどうせモンスターがわんさか出てくるのだ。であれば。強行突破で行くしか無いかと腹をくくった三崎はトルーパーを収容し、敵陣の只中を単騎で駆け抜けるためのロマン武器を早速呼び出すことにした。


「よし、じゃあ早速。来い、宇宙戦艦ムサシ!!!」

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