第100話
宇宙空間において三崎が初めて魔法を使った瞬間から怒涛の勢いで各種アラートが鳴り響いた。
「…ミスったな。まさか魔法使うだけでこんだけ刺激しちゃうとは」
『そうですね、これまで宇宙空間において超深層探索者が魔法を利用した事例がなかったので予測自体が難しかったのですが…。固有魔法ですらない普通の魔法でこれなら固有魔法を使ったら更に先が思いやられます』
”おおおお?”
”さっそくw”
”なんか見たことないモンスターがいっぱい”
”そして地球の重力に引かれていると…”
”このままだと燃え尽きるのでは??”
”地球の重力圏内での戦い。確かにこれはロマンw”
三崎とアルファは突如出現したモンスターの大群の索敵を実施しつつ、魔素の流れに押し流されそうになっている機体の軌道計算を確認していた。
「アルファ、モンスターは俺の方で対処する。軌道計算の方は任せる」
『承知しました。このままだと大気圏内に再突入してしまうので少し補助エンジンと予備燃料を使います』
アルファが機体の制御を進める中で三崎は機体全体を防御魔法で覆い、さらに機体の外に攻撃魔法を展開してモンスターの大群に放ちはじめる。
”三崎が普通の探索者みたいな戦い方をw”
”このロケット自体は普通のロケットなの?”
”みたいだな。打ち上げの際にダンジョンエリアを抜けちゃうから一般的な技術で作ってるんじゃないか?”
”なるほど?”
”ということは結構戦い方にも制約がありそうだな?”
出現したモンスター群は地上で確認されているドラゴン種に近いようなものもいるが、その殆どが宇宙空間固有のモンスターであり地上のモンスターとは比較にならないレベルの脅威となる。
そしてそれらのモンスターに対して攻撃魔法を放ち続ける三崎だが、
「うーむ。分かってはいたけどかなり手強いな。普通の魔法だけじゃ埒が明かない」
『確かに予測の範囲内ではありますが中々厳しいですね。これは確かに宇宙開発が進展しないわけです。更にマスター、悪い知らせです。おそらく高い魔素濃度の影響でエンジン出力が不安定になってきています。このままだと地上に落ちます』
モンスターからの攻撃魔法が防御魔法に直撃したり、エンジンの出力がかなり不安定になってきていることから機体の中はかなり激しい振動となってきている。
さらに先程から鳴り響いているアラートも止まらず、三崎の宇宙進出は初っ端から騒々しい船出となっていた。
”さっきから揺れがすごいw”
”三崎なら結局大丈夫と分かっていてもヒヤヒヤするw”
”もうアラートの音だけでも止めてほしい”
”わかるw”
そんな状況をヒヤヒヤしながら眺めているリスナー達をよそに三崎とアルファは対策の検討を進める。
「アルファ、このまま機体は保つか?」
『正直難しいと思います。できるだけこの機体は温存して近づけるだけ月に近づきたかったですが、ここまで来ると逆にこの機体に拘るのも悪手かと』
「だよなぁ。宇宙はさすがに不確定要素が強いから信頼性が高い既存技術でいけるところまで行きたかったけど。初っ端からこれならもう開き直るか」
三崎がそういうと自身が身につけていた宇宙服のチェックを進めていく。
「よし、じゃあもう開き直って初っ端からアクセル全開でいくぜ!来い、トルーパー宇宙戦仕様!!」
三崎が魔力を更に開放しアイテムボックスからトルーパーを召喚した。そのトルーパーは三崎が現在搭乗している宇宙船とドッキングした状態で出現し、三崎はそのままドッキングモジュールを経由してトルーパーに乗り込んだ。
”いよいよ宇宙で人型の大型ロボットがw”
”これ、マジでフェイク画像じゃないのがすごいよなぁ”
”毎度冷静に考えると意味不明”
”マジでそれだよなw”
トルーパーのコックピットで更に各種機能を確認した三崎は、
「じゃあここからは祭りと行きますか!トルーパー、三崎考、出るぞ!!!」
宇宙船のドッキングモジュールから離脱したトルーパーが背部の大型スラスターを吹かせながら宇宙空間に飛び出した。
三崎が離れた宇宙船はそのままモンスターの攻撃を受けて損傷し、さらにエンジンの不調によりだんだんと地上に向けて落ちていった。
それを背景に三崎は高速でモンスターの大群に向かって突撃し、ビームライフルやビームサーベルでモンスターたちを怒涛の勢いで屠っていく。しかしモンスターの数は減るどころかさらに増えていた。
「アルファさんや。敵の数が全然減らないんだけど」
『いわゆるリポップのスピードが異常ですね。地上では考えられない速さでモンスターが再出現しています。これはもう一気に片付けないときりがないかもですね』
トルーパーを駆りながらアルファの話を聞いていた三崎は少し「うーん」と考えた後、
「ま、出し惜しみするもんじゃないしいいか」
と一言呟いた後にトルーパーを急制動しモンスターの大群から一気に離脱した。そして離脱している最中に
「アルファ、トルーパーの武装変換。フルアーマーモードでさらに例のブツを頼む」
『了解しました。フルアーマー武装、およびサテライトキャノンを実体化しました』
アルファの言葉と共にトルーパーが重装甲で覆われ、そしてその片方の肩部には大型のキャノン武装が出現。さらにトルーパーの背部には大型のパネルが出現した。
「さて宇宙モンスターの諸君よ!さっそくロマン武器の餌食になれ!!!ということでアルファ。月は出ているか??」
『本武装は月ではなく鬼ヶ島からのエネルギー伝送ですけどね。鬼ヶ島は補足できています。マイクロウェーブ、地上施設からきますよ』
地上からのエネルギー伝送をその背部のパネルで受け止めた三崎が駆るトルーパーの大型キャノンの砲身が煌めき出す。
「ま、最初だからいきなりフルチャージではないけどな!サテライトキャノン、発射!!!」
そして光の奔流がモンスターの大群を飲み込み、その輝きは地球上の各所からも観測された。
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