第99話

『リスナーのみなさん、こんにちはー!ダン研 オフィシャル 広報チャンネルです。あっと言う間に第11回目の配信です!マスターのかわりに今回はアルファ2さんが進行役をしますよー!!』


鬼ヶ島のロケット打ち上げ基地を見渡せるアングルからスタートした第11回目の配信。今回は鬼ヶ島宇宙センターからの打ち上げの様子をリアルタイムに配信しつつ、アルファ2が電脳空間上からまるでVtuberのようなデフォルメされた姿で進行役をしていた。


”ついきにこの日が!”

”やってきました宇宙編w”

”三崎も宇宙かぁ”

”思えば遠くまで来たものだ…”

”え、何このテンションw”

”アルファ2がデフォルメされとるw”


好調なスタートを切った今回の配信の内容も確認しつつ、アルファ2が説明を進めていく。


『事前告知の通り、今回はロケット打ち上げの模様をいろんなアングルからお送りしますね!さすがに今回はマスターもロケットの制御やら何かあった時の即応体制が必要だからとのことで配信には対応できみたいなので私が色々進めていきます!』


”それはそうw”

”さすがの三崎でもロケット打ち上げの際には配信してる余裕はないかw”

”打ち上げの動画って毎回すごくドキドキするw”

”まぁ今回は仮に失敗しても人命には影響ないだろうから気楽に行こうぜ”

”確かにその手の心配はいらないなw”


アルファ2はリスナー達のリアクションにもちょいちょい反応をしながら滞りなく配信していく。そうこうしている内にあっと言う間に打ち上げ時刻が迫り、アルファによる打ち上げ管制がスタートした。


そしてアルファのカウントダウンに合わせる形でアルファ2もリスナー達も声を揃えてカウントダウンを行い、轟音とともにロケットが打ち上げられた。


配信の画面は地上から、ロケットの操縦席、高高度を飛行する偵察用ドローン、そして宇宙の静止軌道衛星からの映像が配信されており、ロケットが地上から天高く飛翔している様子を様々なアングルから確認することができた。


”相変わらずのアングルw”

”至れり尽くせりw”

”操縦席の三崎の表情よw”

”さすがに緊張してるみたいだなw”

”そりゃそうよw”


全世界のリスナー達が見守る中でロケットは順調に飛行を続け、打ち上げから約2分後、固体ロケットブースターが無事に分離。さらに約4分後、フェアリングも分離。そこからさらに上昇を続け、約6分後には第1段主エンジンの燃焼が停止し分離。


そして打ち上げから約15分後には三崎が搭乗する宇宙船は所定の軌道に投入された。打ち上げの成功である。


”おおおお!”

”とりあえずこれでほっと一息”

”思ってたより普通の打ち上げだったな!”

”確かにそれはあるw”

”確かに普通の打ち上げだったなw”


三崎の毎回のアレコレでリスナー達も感覚がおかしくなっている部分があり若干の物足りなさも感じつつも打ち上げの成功にほっとした空気が世間に流れはじめる。


無事に打ち上げが成功したことで余裕が出てきた三崎も配信に参加した。


「はい、ということで皆様、無事に宇宙に到着です!思ってたより振動すごかったので久々にちょっと緊張しました。あと振動で酔うかと思った」


『マスター、確かにバイタルサインが少し緊張状態でしたね。あと今のあなたは乗り物酔いとかするのですか…?』


なかなか見ることができない少しほっとした表情という珍しい三崎の様子と、いつも通り淡々とした感じで三崎にツッコミを入れるアルファ。


”いつもの感じw”

”実家のような安心感”

”宇宙に来たというのにw”

”なんか特別な感じしないよなw”


「確かに言われて見れば乗り物酔いとかしないのか…?まぁそれはさておき、あとしばらくは地球の周囲を何周か周回してから月に向かって進んでいきます。アルファ、軌道計算とか機器の状態はどう?」


『軌道に関しては事前シミュレーション通りで問題ありません。このまま予定の進路を取りましょう。各種計器にも異常なし。非常にスムーズな打ち上げでしたね』


「おっけー、よかったよかった。さすがに宇宙来たのは初めてだからな。できるだけ平穏にいきたいわ」


”おい、それはフラグなのではw”

”三崎が平穏…?”

”HAHAHA”

”さて、そろそろ何か来るかな?”

”それなw”


三崎とアルファがテキパキと各種チェックを進めていきつつ、非常に順調に飛行が続いている。


「よし、じゃあ機体自体は問題なさそうだな。あとは魔素とか俺のアイテムボックスとかの状態を確認していきますか。アルファ、周囲の魔素濃度はどう?」


『周囲の魔素濃度も事前に衛星が取得していた値と大きく変化が無いですね。ムラが結構ありますが、それでも一般的な上位ダンジョンの上層クラスの濃度です。大きな問題にはならないかと』


「りょーかい。じゃあちょっとアイテムボックスとかロマン武器召喚も少し試してみるか」


そして何気なく、三崎が宇宙に来てから初めて自分の魔力を開放した瞬間


『…マスター!緊急警報!!宇宙空間上から突如モンスターの大群が出現!更に魔素の流れも急激に変化。このままでは本機体は重力に引かれて大気圏に再突入します!』

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