第3部_最終章
第98話【第3部_ 最終章】プロローグ
1969年7月20日。人類は初の月面着陸を成功させる。
1972年までに計6度の月面着陸を成功させ、合計12名を月に送り込んだ人類であったがその後50年以上にわたり人類は月に足を踏み入れていない。
なぜか?
そう、ダンジョンの出現である。人類の宇宙進出と同時期に地球上で目撃例が確認され始めた謎の洞窟や未確認生物は1970年代以降に観測事例が爆発的に増加し、やがて「ダンジョン」や「モンスター」と呼ばれるようになる。
当初はそれらUMAの存在を否定していた各国政府もその存在を隠しきれなくなりダンジョンおよびモンスターの存在を公式に認定。1990年代以降はダンジョンの開発や研究が爆発的に進み現代に至る。
この過程で地球圏ではダンジョンの開発や研究が進んでいった一方で、人類の宇宙進出は1960年代に期待されていたほどの進展を見せていなかった。
宇宙空間が魔素で満たされてることが発覚し、そして宇宙でもモンスターが度々観測されるようになったためだった。
もともとはダークマターと呼ばれていた宇宙空間の大部分を占める謎の物質が、ダンジョンで観測される謎のエネルギー「魔素」と同じものであるという研究結果が世間に公開された際には世界中が大騒ぎになった。
要するに宇宙空間は魔素濃度の濃淡があるもののダンジョン内の環境と大差ないことが判明したのである。この事実に人類が気づくとほぼ同時期。地球の重力圏外でたびたびモンスターが観測されるようになった。
1980年代には探索者が宇宙空間に進出し宇宙モンスターを討伐するという試みが数度実施されたがその尽くが失敗。当時は探索者自身の技量も低く、現代で言う深層級以上の探索者の数も多くなかったことに加えて、宇宙空間で戦うための装備も貧弱であった。
これ以降、人類は地球の重力圏内での宇宙開発が主となり、静止軌道衛星を含めた衛星関連技術や宇宙ステーションの構築までは進んだものの再度の月面着陸を成し遂げることはできていない。
そんな停滞していた50年であったが、ついにこの状況を打破しうる可能性がある人物が登場した。それこそが三崎考である。
これまでにも超深層探索者へ宇宙開発の協力依頼は各国政府から出されていたが、それぞれの固有魔法との相性もあり実現していなかった。
だが三崎の固有魔法デウス・エクス・マキナと、そもそもの彼自身が実現したロマン武器の組み合わせを見た時に鷹匠は確信した。「これはいける」と。
月には膨大な量の資源があることは1969年から1972年の月面着陸時には既に確認されており、月を抑えることの重要性は計り知れなかった。
このような経緯を経て三崎は50年ぶりとなる月面着陸にむけて突き進むことになる。
ダンジョンに星が流れた日や、鬼ヶ島事変の事後処理を経て鬼ヶ島にはロケットの打ち上げ施設の建設が進められた。同時期に三崎は鬼ヶ島に建設した超大型ファクトリー内で宇宙戦用のロマン武器たちの開発を進める。
さらに宇宙空間では3次元機動が前提となることからアルファシリーズの演算能力強化のためにデータセンターの新造も進めた。
これらの準備が整い、そろそろ秋を感じさせるような気候のある日。ついに三崎は宇宙へ進出するための最後の仕上げに勤しんでいた。
デウス・エクス・マキナによって実体化していたアルファ達もその実体化が解かれ、ロケットや各種支援設備の管制にその全性能を振り向けていた。
そして全世界のリスナー達が見守る中、打ち上げのカウントダウンがはじまる。
『マスター。すべての準備が整いました。心の準備は良いですか?』
「あぁ、いつでも」
ロケットの中で各種計器を確認した三崎は、地上を背にする形で椅子に固定されている。
『ではカウントダウンを開始します。10、9、点火シーケンス起動、6、5、4、3、2、1、全エンジンフル稼働、離陸します』
三崎を乗せたロケットが轟音を轟かせ、天へ一直線に舞い上がった。
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