第94話 閑話⑤
リアルZ◯IDS作るぞ宣言の翌日の日中。三崎は島の開発関連業務をアルファ、アルファ2、アルファ3におまかせしてアルファ4と島の探索に取り掛かっていた。
「ということでアルファ4隊員。本日は我々だけでまずはZ◯IDSの素体となるモンスターを確保します」
「…いぇっさー」
比較的物静かだが何故か毎度ノリが良いアルファ4を連れた三崎は島の開発エリアから大きく離れた場所にやってきていた。
今回三崎はリアルZ◯IDSをデウス・エクス・マキナの力を使わずに実現しようと考えている。これは三崎が島を離れ、デウス・エクス・マキナの効力が途切れた後もしっかり稼働して拠点の防衛をしてほしいと考えているためだった。
さらに可能であれば建造中のファクトリーで量産体制も確立したいと考えたため、できるだけ無傷でモンスターを確保する方法、捕獲したモンスターのZ◯IDS化の方法、そしてその運用方法まで含めて一連の流れを全て宇宙に行く前までに実現したいと思い描いていた。やる気まんまんである。
「まずはどんなモンスターを確保するかだけど…。アルファ4隊員。案はあるかね?」
相変わらずの謎テンションで自然豊かな南の島を闊歩しながらアルファ4に尋ねる三崎。
「…ライオン、狼、そしてティラノサウルス型は外せない」
「…なんと。お前は共和国派だったのか」
全く想定していなかったアルファ4からのノリが良い回答を聞いた三崎は一瞬驚きながらも同志を見つけてルンルン気分になっていた。
折よく鬼ヶ島にはこれらのライオン型、狼型、ティラノサウルス型のモンスターは確認されていたためそれらのモンスターを確保しに行くことにする。
まずは手始めに狼型のモンスターを確保しに行きつつ、島を散歩しながら三崎は前から気になっていたことをアルファ4に質問していた。
「今更なんだけどさ、アルファ4も含めてアルファシリーズってみんな結構性格ちがうじゃん?これ、俺は設定した覚えは無いんだけどどうしてこうなったん??」
「…確かに今更の質問。ただ私達も最初は性格にバリエーションをつけようとは思ってなかった。ただ色々シミュレーションをした結果、性格や考え方に多様性があった方がチーム全体としての能力が上がることがわかったからそうした」
元々は三鷹のデータセンターを用いることで生まれたアルファをそのままコピペして作成したのがアルファシリーズであり、データセンターの容量の都合でアルファ2~4まで含めて計4体の独立した仮想エージェントを実現していた。
これらの仮想エージェントは先程アルファ4が説明したとおり元々は全員がアルファであり同じ性格をしていたが、せっかく個体識別番号を付与するからには何か追加のメリットを考えたいと元祖アルファが思った事が切掛だった。
その後、様々な科学技術系の文献や組織開発、人材開発、経営戦略、チームスポーツなどの資料を調べまくったアルファが出した答えが「多様性の確保」である。
さらに三崎が実現したデータセンターで用いているダンジョン素材によるGPUやCPU自体が、生体素材を活用していたことから一般的なGPUやCPUと異なり実は性能に個体差があった。
このようなハードウェアの個体差を活かすという観点からもアルファ達の人格の差別化が進み、今に至るというわけである。
アルファ4の説明を歩きながら聞いていた三崎は「なるほどなぁ」と思いながらアルファの抜け目なさを再認識しつつふと不安になり、
「…AIの反乱とか笑えない冗談はないよな?」
とアルファ4に質問していた。その質問を聞いたアルファ4は少しびっくりした顔をした後に笑いながら、
「…ふふっ。それは大丈夫だと思うよ」
と意味深な笑みを浮かべて回答していた。その表情をみた三崎はこれは聞いても無駄なやつだなと思ったためその話題を早々に切り上げた。
そんな話をしているとあっと言う間に狼型モンスターの群生地にたどり着く。今回三崎達が確保したいのは全長約15メートル、全高約8メートル程度の個体だった。
手元の端末でZ◯IDSのサイズ感を確認していた三崎は、
「改めて数字で見ると思っていたよりデカいな!まぁ確かにプラモだとパイロットめちゃ小さかったからそういうサイズ感なんだな」
と思いのほか大きかったサイズ感に驚いていた。なお比較のために補足すると一般的にガ◯ダムは全高18メートル程度、アーム・◯レイブは全高8~9メートル程度である。建物でいうと一般的な2階建ての屋根部分が7~9メートル程度。
要するにコマン◯ウルフはアーム・◯レイブとほぼ同じ全高なのだ。これは確かに意外とデカい。
そういった調べ物をしつつ三崎とアルファ4は遭遇した比較的小型の狼型モンスターを難なく駆逐しつつ、ときおり遭遇した大型の狼型モンスターを麻痺させたり、眠らせたりしながら無力化させていく。
これらの確保したモンスターは三崎がアイテムボックスから取り出した大型の檻の中に放り込み、それらの檻は輸送用ドローンを用いて大型ファクトリーへ順次運ばれていった。
こうして三崎とアルファ4によるリアルZ◯IDS実現にむけた下準備は順調に進んでいった。
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