閑話

第90話 閑話①

鬼ヶ島事変が終わり、鷹匠との会談から数日後。


鬼ヶ島はロケット打ち上げ施設の建設に向けて急ピッチで様々なインフラ整備が進められていた。


資材搬入のための大型港湾施設、飛行場、住居区画、それらをつなぐための道路、水道などの各種インフラ類、そして島の地下にはアルファ達のための新しいデータセンターと超大型のファクトリー。


いくら固有魔法 デウス・エクス・マキナがあるとはいえ、万が一にも魔法の調子がおかしくなった際のリスクも考えた三崎はこれらのインフラは地道にしっかり整備を進めることにしていた。


なお固有魔法 デウス・エクス・マキナは平常時には基本的にアルファ達の実体化など最小限の用途に留めることにしている。


逆に言うと鬼ヶ島においてアルファ達は三崎がいる限り半永久的に実体を持つことになった。


三崎自身も「これは良いのか…?」と一瞬迷ったものの実体を得たアルファ達の楽しそうな様子をみて「楽しそうならまぁいいか」と深く考えることをやめた。


それはともかく。


島全体の開発計画をアルファ達と急ピッチで策定しつつ建設作業自体は可能な限りドローンなどで自動化し、モンスターの襲撃を防ぎつつ、そしてダンジョン資材なども適宜調達したりと三崎はガチで忙しく過ごしていた。


そんな日々が1週間ほど続いたある週末の日曜朝。三崎とアルファシスターズは鬼ヶ島に建てた小洒落た海沿いの別荘風コテージで朝食をとっていた。


そして何気なく、本当に何気なくアルファ2がリビングのテレビを付けたことが事の発端となる。


日曜の朝8時30分。


そう。プリ◯ュアの時間である。テレビから軽快なオープニング音楽が流れはじめた。


先程までアルファ達と穏やかに談笑しながら朝食を食べ、そして食後のコーヒーをのんびり啜っていた三崎の動きがピクリと止まった。


その様子を見ていたアルファはマズイと思いながら


「さて、じゃあお皿を下げますね」


と言いつつ片付けるふりをして戦線を華麗に離脱しようとした。それを見たアルファ3も


「姉さん、私も手伝います」


と言って席を立とうとするが、


「まぁ待ちなよ。いつも2人とも頑張ってるからな。今日は俺がやるよ」


と朗らかな表情をした三崎が2人の機先を制してささっと食卓を片付けキッチンに向かう。


なおアルファ2とアルファ4は早々にダイニングテーブルを離れ、リビングのソファで大型テレビの前でグダっていた。


三崎に出鼻をくじかれた形のアルファとアルファ3はなんとかこの場を自然に離脱する方法な無いものか?とその演算能力を最大限活用させようとするが、


「そういえばさ」


とキッチンで洗い物をしている三崎がアルファ達に話しかけてくる。リビングのテレビでは引き続きプリ◯ュアが放送されており、今週も微妙に力が抜ける怪人たちが出現していた。


「仮面ラ◯ダーシリーズと戦隊モノはもうやったじゃない?」


と三崎がど直球の球を投げ込んでくる。それを聞いたアルファとアルファ3はお互いに「マスターの質問にはあんたが応えなさいよ」と目線でバチバチ応酬する。


そんな事は露知らず三崎はのんきに続ける。


「でもほら、日曜の朝といえばプ◯キュアもあるじゃん?男の子が初めてロマンを覚えるのがライダーと戦隊モノだとしたら、女の子が初めてロマンを覚えるのはプ◯キュアだと思うんだ。一昔前ならセー◯ームーンとかおジャ◯女でも良いけど」


ずっと黙っているのも流石に不自然だと思ったアルファがしぶしぶ答える。


「…そのようですね。私達は直接的な経験が無いのでなんとも言えないですが、ネットを見る限りでは日本においてはもはや伝統的な番組なのは間違いないかと」


内心ではなんとか話を逸らせないか?と焦っていたアルファだったが、ついに無慈悲な宣告が下された。


「だよな。ということでさ、今度の配信でアルファ達はプ◯キュアやってみない??俺は謎の精霊役やるわ」


三崎の謎の精霊役やるわ宣言を聞いたアルファ2は盛大に吹き出し、アルファとアルファ3は困ったなという微妙な顔をしながら笑い、そしてアルファ4はぼーっとしながら引き続きテレビを見ていた。


「マスター、謎の精霊役はさておき、私達の外見は10代後半から20代前半程度に見える状態です。これでは外見年齢的にプ◯キュアにはなれません。なので諦めましょう?」


さすがに恥ずかしすぎるのでなんとか魔法少女は回避したい一心でアルファがそう提案するが、洗い物を終えた三崎がエプロンで手を拭きながらキッチンから出てきつつキリッとした顔で、


「最近は大人プ◯キュアという存在もいるらしいメポ!」


すでに精霊役をやる気満々の三崎のその声を聞いたアルファ2はかなりツボに入ったのかソファの上で腹を抱えて爆笑し、アルファとアルファ3もたまらず吹き出し、アルファ4はうとうとしながら半分夢の世界に旅立っていた。


「それに大丈夫メポ!こんな事もあろうかと!メポ!」


三崎が唐突にデウス・エクス・マキナの出力を上げ、アルファ達4人が光に包まれる。


そしてそこには外見年齢が中学生程度に下がったアルファシスターズが困惑した表情で立っていた。

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