第88話 【第2部】エピローグ

通称「鬼ヶ島事変」から約一週間後。


三崎は南の島のビーチで優雅にビーチチェアに寝っ転がりながらトロピカルジュースを啜っていた。


「貸し切りのビーチで飲むトロピカルジュース。…これもまたロマンか」


「何をお馬鹿な独り言を言っているのですか」


三崎が一人で悦に入っていると水着姿のアルファが近づいてきた。


アルファが歩いてきた方を見てみるとその奥の砂浜でアルファ2、アルファ3、そしてアルファ4が人智を超えた動きをしながらビーチバレーを楽しんでいる。


彼女たちが全力で楽しむ様子を呆れながらも微笑んで確認した三崎は、


「アルファ、お前はあっちで遊んでなくて良いのか?」


「私は少し休憩です。何か飲み物を取ってくるので、マスターもなにか要りますか?」


「いや、俺はまだあるから良いよ。椅子は準備しておくから早く取ってこいよ」


「ありがとうございます」


そう言って少し笑みを浮かべたアルファは直ぐ側の海辺のコテージに飲み物を取りに行く。


それを確認した三崎は近くに積んであったビーチチェアを広げながら、数日前の事を思い出す。


・ ・ ・


「は?俺が自治区の首長?」


鬼ヶ島にて赤鬼と青鬼を討伐した直後、ダンジョン全体の魔素の波長が三崎と同調したことで文字通りこの島は三崎の一部となった。


その後の島地下部のダンジョン探索は三崎が出るまでもなく拍子抜けするほどあっさりと他の面々で最深部までの探索が完了し、鬼ヶ島の完全制圧がなされた。


それから2日後、ひきつづき鬼ヶ島にとどまり事後処理を行っていた三崎のもとに大量の護衛に守られた鷹匠がやってきていた。


「そうだ。世界で5人目の超深層探索者、三崎考くん。この島は君のものだ。正確に言うのであればこの鬼ヶ島ダンジョンエリアは君が治める自治区になる。この島そのものに加え、半径10km圏内のダンジョン海域まで含めてね」


鷹匠からの話に改めて超深層探索者のトンデモ具合を認識しつつ、三崎はアルファのサポートを受けながら鷹匠と詳細を詰めていく。


そもそも三崎は政治的な野心や自己顕示欲などにはあまり関心がなかった。そのため交渉は平和裏に進みこの鬼ヶ島ダンジョンの処遇も比較的あっさりとケリがつく。


そして三崎が気になっていたことを鷹匠に質問した。


「謎の黒い人達と金髪はどうなります?」


「安心してくれ、基本的にはすぐに彼らの国に返す予定だよ。ただその代わりにちょっと色々融通してもらうつもりだけどね」


そういいながら非常に良い笑みを浮かべた鷹匠を見た三崎は、この人とは今後も仲良くやっていこうと心に決める。


「しかし俺が言うのもなんですけどあの金髪、結構むちゃくちゃしてませんでした?俺は全然気にしてないですけど」


「そうだねぇ。ちょっとやりすぎたよね。なのでそのぶん色々ぶん取ってきたよ」


そう言いながら引き続きにやにやしていた鷹匠が傍に控えていた秘書官に合図をすると、その秘書官は一通の封筒を三崎に渡した。


その封筒を開けた三崎はその中から取り出した書類にざっと目を通していく。


「…鷹匠さん、これはマジですか?」


「あぁ。大マジだ。今回の一件の見返りとして我々は有人宇宙飛行に関連する技術供与を受けることが決定した。有人ロケット、打ち上げ施設、管制施設すべて含めてね。そして打ち上げ基地をこの鬼ヶ島ダンジョンに作らせてもらいたい」


鷹匠の言葉を聞き、手元の資料を改めて見直していた三崎は相変わらず苦笑いをしながらも鷹匠の言葉を聞く。


「ということで三崎くん。次は月旅行にでも行ってみないかね?」

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