第87話

鬼ヶ島中央部の平野部に立つ全長400メートルを超えるサイズの超大型戦隊ロボ、ゴッドロマン。


そして鬼ヶ島北西部に立つ全長400メートルを超える青鬼。南東部に立つ同じく400メートルを超える赤鬼。


3体の巨人の戦いが始まろうとしていた。


”ゴッドロマンw”

”変形機構が謎すぎたw”

”わだつみとやちほこ、パカッと割れてたぞ”

”これはヒドイw”

”この変形の仕方はおもちゃになる時に大変なやつw”


もともと変形機構を備えてなかった各艦がデウス・エクス・マキナによって三崎が思い描いたように変形合体したことで、三崎自身もその固有魔法の汎用性に内心でドン引きしていた。


なんとなく出来ると思ったからやってみたら出来た。それが固有魔法が固有魔法たる所以である。


三崎自身は自分で設計開発できる人であるが故に変形や合体の難易度を理解しており、だからこそ途中でひとまず思考放棄した。後でゆっくり考えてちゃんと再現できるようになろうと思いながら。


もはや確認するのもあまり意味がない各種計器をチェックしたり、リスナー達のリアクションを追加で確認していた三崎は


「しかし俺が言うのもアレだけど、マジでこの変形機構謎だな。どうなってるんだ?それにこのサイズのモンスターってアリなのか?」


「一般的なダンジョンではまずありえないサイズですね。開放型ダンジョンだからこそという前提はありますが、あとは固有魔法が影響しているのかもしれません」


事例は非常に少ないながらも固有魔法を発現した超深層探索者たちの記録は残っている。三崎が超深層探索者として覚醒してからアルファ達は戦いの裏側で並行してこれらの記録を精査していた。


そしてそれらの調査によると、確かに固有魔法を発動するとダンジョン内部をその発動主の思うがままに環境を再構成することができる。


しかし同時にダンジョン側も固有魔法による侵食に対して自衛機構のようなものが働くらしい事がわかった。


そのため固有魔法を発動すると通常時では考えられないほど強力なモンスターがダンジョンによって生み出されるらしい。


今回の全長400メートルを超えるような赤鬼、青鬼についてもおそらく三崎の固有魔法による侵食を受けたダンジョン側の自衛機構が作動した結果だと考えられた。


「…ということはあの鬼さん達は俺のせいってこと?」


「まぁ端的に言うと貴方を倒すにはアレくらいが必要だとダンジョン側が慌てて用意したのでしょう」


”ダンジョンさんの慌てっぷりw”

”海で出てきたタコが可愛く見えるレベルの災害w”

”これ、マジで人類が滅びるレベルの災厄級のモンスターなのでは?w”

”そしてそうとは思えないくらいの余裕ある空気感”

”それなw”


「ただ一方でダンジョン側が出してきたモンスターを討伐できれば、そのダンジョンは特定の超深層探索者の支配下に置くことができるようですね」


「どういうこと?」


「マスターは各地の超深層探索者達が、ダンジョンを根城にして最早独立国家に近いレベルの自治区を治めているのは知ってますよね?」


「まぁそりゃ学校で習うしな」


「ですよね。それでこれから先は正確な資料が公開されていないのであくまで推測ですが、どうも超深層探索者が固有魔法を発動したダンジョンは一定の条件が揃うと、その超深層探索者の魔力の波長と同調するようです。つまり、そのダンジョン内においては常時固有魔法発動状態に近い形になるようですね」


”なんというチートw”

”それは確かに国も手が出せなくなるw”

”自治区、商社の仕事で行ったことあるけど意外と普通のところだったぞ”

”つまりあの鬼を倒せば…”

”この島は三崎のものだ!!!”

”え、なにそれ怖いw”


そんな会話をしながら三崎達はまず比較的距離が近かった南東の赤鬼に向かいゴッドロマンを走らせる。


全長400メートルを超える超巨体が走ることで地上部はとんでもない揺れに襲われていた。


ちなみにSATや特殊作戦群、林艦長などの面々は三崎が新たに用意した大型ヘリ数機でコンテナを抱えて島をすでに離脱していたため無事である。地上部の惨状を見た彼らが血の気が引く思いをしていたのは別の話。


そしてゴッドロマンと赤鬼の距離がだいぶ近づいた段階で、赤鬼から超弩級の炎魔法が放たれた。もはや測定不能のレベルの魔法である。


しかしそれらの攻撃をゴッドロマンは避けない。赤鬼からの様々な攻撃を、胸を張ったまま威風堂々と歩きながら全て受けきっていく。


”戦隊モノのお約束だがw”

”全ての攻撃を受けながらも歩き続けるのもまたロマン”

”赤鬼さんの表情よw”

”うーんw”

”もはや負けるビジョンが浮かばないw”


そしてさらに距離が近づいたところでゴッドロマンは歩みを止め、


「超浪漫砲ゴッドロマンキャノン!!」


三崎の掛け声とともにゴッドロマンと同程度のサイズの両手持ちの大型キャノン砲が出現した。


その大型キャノン砲を構えるゴッドロマン。それを見た赤鬼は逃げようとするが、


「「「「「超浪漫砲ゴッドロマンキャノン、ファイヤ!!!!!」」」」」


5人のロマン戦士の掛け声とともに超エネルギーが放出され、そして一撃で爆散する赤鬼。


この一撃ははるか地平線を超え宇宙空間まで届き、光の奔流が世界の各地から観測された。


一撃で赤鬼を屠ったゴッドロマンは両手に持っていたゴッドロマンキャノンをその場に放棄すると、その背部に準備していたスラスターを起動させて大空に舞い上がる。


そのまま島の北西部にまで一気に飛び呆気に取られている青鬼の頭上にて


「超浪漫剣ゴッドロマンソード!!」


三崎の掛け声とともにゴッドロマンの全長を超える500メートルにも渡る超大型の剣が出現した。


そしてその超大型剣を手に持ったゴッドロマンは、天空から一直線に青鬼に向かって急降下し、


「「「「「超必殺技、真・浪漫斬り!!!!!」」」」」


一撃で切り裂かれた青鬼が、最後に盛大な爆発を引き起こした。

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