第86話
ダンジョン戦隊 ロマンレンジャーの合体武器、ロマンキャノンの直撃を受けたウォードはボロボロになって転がっていた。
様子を伺いながら傍に近づいた三崎が赤い戦隊スーツを身にまとったままウォードを指先でつんつんしつつ、
「…死んでないよな?」
「はい、大丈夫です。5重拘束魔法の中に自動回復魔法を仕込んでおいたので生命維持には問題ない水準です」
”つんつんする戦隊レッドw”
”シュールな絵面w”
”なぞの気配りw”
”バインドってそんな使い方もあったのねw”
”しかし一瞬で決着ついたなw”
その様子を見たリスナーたちもこれでひとまず謎の金髪については一件落着か?と思いながら様子を伺っていた。
引き続きウォードをつんつんしつつ各種バイタルで無事を確認した三崎はアイテムボックスから取り出したポーションをウォードにぶっかけつつ、
「ちなみにこの人、巨大化とかしないよね?」
「…は?あなたは何を言ってるのですか?」
戦隊モノのお約束としての怪人巨大化を想起しながらアルファに訪ねた三崎だったが、アルファの「こいつマジで何言ってるんだ?」という冷たい目線にいたたまれなくなりそっと目を反らした。
”アルファさん、実体化するとなかなかの鋭さw”
”そっと目を反らした三崎w”
”巨大化しないか気になるのは分かるw”
”さすがに巨大化は無かったw”
”戦隊ロボ…”
ウォードがボロボロのままピクリとも動かず気を失ったままの状態を見たリスナーたちも、残念そうにしながらもひとまずホッとした空気が流れていた。
そんな中、三崎達5人の近くにSATや特殊作戦群のメンバーたちもぞろぞろと集まってきていた。彼らは三崎とウォードの戦いが始まった時点でかなり遠くまで退避していたのである。
戻ってきた彼らにウォードを預けた三崎達は、そのままその場で一休みしつつ戦場全体の確認を進めていた。
ウォードとオメガのハッキング/通信遮断によって連絡が途切れていた潜水空母わだつみ、浮遊航空艦ほあかり、陸上戦艦やちほこの各艦ともすでに連絡は回復しており、それぞれ大きな問題なく稼働可能なことが確認できていた。
またSATや特殊作戦群が確保・拘束したおよそ50名程度の謎の組織のメンバーたちもすでにコンテナに収容が完了しており移送の準備が進んでいる。
控えめに言っても完勝の状態となっていた。
そんなアレやコレやの作業をし始める三崎たちのところに、潜水空母わだつみに残っていた面々がわだつみからヘリコプターで島に到着。
さて、警戒態勢もそろそろ大丈夫かな?と皆が思い始めたところで、
「ん?」
引き続き固有魔法を展開していた三崎が何か異常な気配を感じ、島の北西、南東それぞれの大きな山の方をそれぞれ何度か確認した。
「マスター、どうしました?」
「あぁ、いま固有魔法に変なノイズが入った気がして。アルファ達のセンサー類はどうだ?」
「大きな異常は見当たらないのですが…。…いや。これは…?」
三崎やアルファ達が詳細な確認を始めようとした瞬間、突如ドンッと突き上げるような島全体を襲う大きな揺れが発生した。
その揺れはあっと言う間に収まると、続いて北西、南東のそれぞれの山からゴゴゴ…という大きな地鳴りのような音が聞こえてきた。
音の方を確認した三崎も、アルファも、そしてリスナーたちもそのあまりの光景に絶句していた。
そう、まるで山が立ち上がったかのようにその形が崩れ、その山だった場所から超巨大な鬼が出現したのだ。
「…なるほど、これが鬼ヶ島か」
「マスター。北西、南東のそれぞれの山から出現した2体の鬼、ともに400メートルを超えるサイズのようです」
”ついにラスボスきたw”
”しかも赤色と青色の鬼w”
”赤鬼さんと青鬼さんw”
”400メートルってw”
”東京タワー超えてるなw”
”大丈夫、スカイツリーは超えてないぞw”
そして二体の鬼が大きな咆哮。
それを聞いた三崎はニヤリと笑い、
「これが本当のラストバトルだな、ロマンレンジャー、出動!!!」
まだ戦隊スーツを脱いでなかったアルファシスターズは、全員が「しゃーないなぁ」という雰囲気を出しつつも三崎のもとに集まってきた。
「じゃあそれぞれダンジョン内転移させるから、あとは適当に合わせてくれ」
三崎の雑な指示の直後、三崎の理不尽なまでの圧倒的な魔力をもとに一瞬で構成された転送装置によってロマンブルーは潜水空母わだつみの艦橋、ロマンイエローは浮遊航空艦の艦橋、ロマンピンクは陸上戦艦ほあかりの艦橋にそれぞれ転移された。
さらにアルファは三崎がその場で召喚した可変戦闘機ドラグーン歌姫エディションに、三崎自身は特殊管制ユニット型トルーパーに搭乗。
全員がメカに搭乗したことを確認した三崎は、
「全員揃ったな?行くぞ、ロマンビークル出動!」
三崎の掛け声とともに島の各地に散らばっていた各ロマンビークルは島の中央部に集まりながら、
「「「「「合体!!!!!!」」」」」
5機のロマンビークルが急に宙を飛び、そしてそれぞれが三崎の固有魔法 デウス・エクス・マキナの支援を受けて変形しはじめる。
浮遊航空艦ほあかりがいい感じに変形し、胸部ユニットと背部の大型スラスターに。
陸上戦艦ほあかりが突如、どうやってるのか三崎にも分からないまま縦に2つに割れ、2本の脚部となり胸部ユニットに合体して脚部が完成。
おなじく潜水空母わだつみも、縦に2つに割れて2本の腕となり胸部ユニットにそれぞれ合体し、更にどこからともなく5本の指を備えた手が出てきて腕部が完成。
可変戦闘機ドラグーン歌姫エディションががちゃがちゃと形が変わり、デュアルアイにブレードアンテナを備えた良い感じの頭部ユニットとなりそのまま胸部ユニットに合体。
最後に胸部ユニットに吸い込まれるように特殊管制ユニット型トルーパーが埋め込まれる。
各ロマンビークルに乗っていたはずの5人のロマン戦士もいつの間にか胸部ユニットになっていた元ほあかりの艦橋部に揃っており、デウス・エクス・マキナ、いくらなんでも万能すぎるだろ…とリスナー達の心は一つになっていた。
そして巨大ロボットの目が急に光り、ぐぐっと全身に力を込めた後、バンッ!と決めポーズを決め、
「「「「「超ロマン合体、ゴッドロマン!!!!!」」」」」
全高400メートルを超える超大型ロボが鬼ヶ島ダンジョンに降り立った。
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