第83話

三崎の固有魔法 デウス・エクス・マキナが発動した直後、鬼ヶ島は今までとは全く異なる風景になっていた。


先程までは長閑で自然が豊かな南の島だったはずが、気づいたら近未来都市の真っ只中である。


周囲を天まで届く超高層ビルに包まれ、空には空飛ぶクルマが飛び交い、道ではロボットがゴミを拾い、あちこちでホログラムが稼働して何かの映像を流していた。


”なんか未来都市きたw”

”リアルで見るとすげぇ違和感あるなw”

”なんかスター◯ォーズで見たことあるような町並みだなw”

”固有○界ってこういうパターンもあるんだw”

”この心象風景、結構謎だよな?w”


リスナー達にとっては画面の先の変化であるが、実際に周囲の環境が一瞬にして変化したウォードは完全に呆気に取られていた。


そんなウォードを見かねたオメガが


『ボス、即時撤退を推奨します』


「…あの状態の三崎さんが逃してくれると思うか?」


とウォードに返され押し黙るオメガ。さらにそこで


『…ボス、すいません。こちらも時間切れです。全ての防壁が突破されました』


「…そうか、完全に詰んだな。…あーぁ。こんな覚醒イベントがなければ俺の勝ちだったんだけどなぁ」


と最早完全に勝ち目がなくなった事を悟ったウォードは遠い目をしつつ、なんとか逃げられないものか?と必死に考えを巡らせていた。


そんな途方にくれた様子のウォードを眺めつつ、三崎は


「お、やっと来たな」


と誰かに語りかけた。三崎が声をかけた方を確認したウォードは、またもや呆気に取られていた。


そこには見覚えのある4人の女性が立っていたのだ。


「マスター。お待たせしました」

「マスター、お待たせ~」

「お待たせしました」

「…お待たせ、マスター」


”おおおおお!!!???”

”えw”

”どういうことw”

”ええええええええ!!!!????”

”あれ、ホログラムじゃないよねw”

”実体がある…”

”どこからどう見ても普通の人間にしか見えない…”


そう、彼女たちは紛うことなきアルファ達である。しかもその見た目は人間と何ら代わりがない。


あまりにもアレな超絶展開に思考が停止したウォードとリスナー達に向けて三崎が軽く説明をする。


「俺の固有魔法、デウス・エクス・マキナって名前らしいんだけど、その名称通り機械に関連してダンジョン内限定だけど俺が望む形のロマン武器を形成できる能力みたいなんだよね」


「だからと言って私達を実体化させるのはどうなんですか?」


三崎の説明を聞いたアルファがやれやれと首を振りながら三崎のそばまで歩いてくる。その様子をまじまじと見つめた三崎は


「…さすがにこのクオリティのアンドロイドは今の俺には作れないわ。マジで人間と見た目の区別がつかないな。…え。こわ」


「怖いってなんですか!あなたがやったんでしょう!!」


三崎とアルファの戯れを見たアルファシスターズは


「姉さん、超嬉しそうだねぇ」

「そうですね、しばらくそっとしておいてあげましょう」

「…うん。でも多分マスターは全然気づいてない」


”最早カオスw”

”ホログラムで歌ってるアルファも凄かったけどw”

”こんなん完全に人間ですやん”

”え、これは怖いw”

”さすがにトンデモない能力だなw”


そのカオスな状況を見たウォードがこっそりとその場を離脱しようとするが、


「バインド」


三崎の魔法によって一瞬でその場に拘束される。


「…三崎さん、離してくれませんかね?」


「ばーか、離すわけ無いだろ?でだ。せっかくの固有魔法のお披露目会。ちょっと付き合ってもらうぜ。アルファ達も準備はいいな?」


4人のアルファ達は三崎の問いかけに、ある者はしぶしぶ、ある者はノリノリで答えを返す。


「よし、じゃあ行くぜ!ウォード、お前には感謝してる!お前のおかげで俺は諦めていたロマン武器を使うことができるようになった!いくぞ!」


そう三崎が叫ぶと、三崎とアルファ達の計5人は三崎を中心にして横一列に並び、全員揃って


「「「「「変身!!!!!!」」」」」


「ロマンレッド、三崎考!!!」

「ロマンホワイト、アルファ!!!」

「ロマンブルー、アルファ2!!!」

「ロマンイエロー、アルファ3!!!」

「ロマンピンク、アルファ4!!!」


「「「「「ダンジョン戦隊、ロマンレンジャー!!!!!」」」」」


5人がポーズを決めると同時、彼らの後ろで5色の盛大な爆発が発生した。

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