第77話

鬼ヶ島から少し離れたダンジョン海域内で激しくぶつかり合う2機のトルーパー。


比較的スリムなシルエットの純白の機体と、マッシブなシルエットをした漆黒の機体。トルーパー試作3号機と試作2号機である。


”巨大ロボ同士のバトルw”

”こんなもんが現実で見られるとは…w”

”俺の知ってるダンジョン配信じゃないw”

”そういえばコレ、ダンジョン配信でしたねw”

”この映像だけ見てるともう完全に別のジャンルだよなw”


接近すればお互いの機体が手に持つビームサーベルを振りかざし、距離を取ればお互いにビーム兵器やバルカンなどを放つ。


さらにどちらの機体も飛行ユニットを駆使して海上を縦横無尽に駆け、その性能を存分に発揮していた。


とは言え試作2号機は主武装が(偽)消滅弾を放った巨大なバズーカ砲であり、その他の武装はビームサーベルや頭部バルカンや巨大なシールドなどに限られていた。


試作2号機が徐々に押されている事が傍目に見ていても分かる様になってきていた。


『ボス、このままだと押し切られます』


試作2号機の管制をしているオメガが淡々と事実を告げる。


「くそっ、もう少し善戦できるかと思っていたけど厳しいな」


三崎からの攻撃を避けながら悪態をつくウォード。三崎側の試作3号機はビームライフルやビームライフルと行った基本武装しか活用しておらず、ファ○ネル系の武装やヘビィ・キャバルリィのような追加兵装は未だにアイテムボックスから出していなかった。


このことからもウォードは三崎がかなり手加減していることを認識していた。


さらに試作2号機を問題なく動くように改修できたとは言え、この機体自体が三崎が元々作成したものでありその特徴や癖も把握されている。


「オメガ、戦闘データはしっかり取れた?」


『はい、そちらは問題ありません。非常に良い稼働データを取得することができました。データ自体も輸送機と衛星を経て、本国の研究所にまで転送完了しています』


「OK、なら最低限の目標は達成できたかな。なら次の段階に進まないとね」


ウォード自身も当初からこの機体同士の戦いはあくまでもデータ収集をメインに置いており「本番」に向けた仕込みでもあった。


「オメガ、なら最後にこの機能も開放する。魔素エンジンリミッター解除、Omega System起動!」


『Command approved. Boot the system』


三崎が駆る白い機体から少し距離を取っていたウォード機の周囲の魔素濃度が急上昇し、機体そのものがまるで三崎の強化外骨格のリミッター解除状態のように淡く発光し始めた。


・ ・ ・


ウォードがOmega Systemを起動する少し前。三崎とアルファは改めてシンプルに試作2号機の仕上がり具合に驚いていた。


「これは思ってたよりテンション上がるな!!マジでゲーセンで戦場○絆を遊んでるみたいだ!」


『気持ちはわかりますけど、気をつけて下さいね』


”戦場○絆w”

”余裕ありすぎて笑ったw”

”リアルにロボバトルだもんなw”

”三崎目線の画面の動きがすごくて画面酔いしそうw”

”空中のドローンからの第3者目線の画面が見てて一番わかりやすいよねw”

”最初出てきたときはびっくりしたけどいつも通りw”


黒いトルーパーが出現していきなり対消滅弾をぶっ放してきた際には三崎も含めて驚いていた面々だったがイージスシステムで攻撃を防ぎきり、さらにトルーパー同士の戦いでも基本武装で問題なく戦えている状態を確認してかなり余裕が出てきていた。


「ま、びっくりしたしロボ同士の戦いも楽しいけど、そろそろデータも取れたか」


『そうですね、トルーパー同士の戦闘データはこれで充分かと。なかなか取得できる機会がないデータかと思うのでこれはラッキーでしたね』


「確かにな!じゃあそろそろ片付けちゃって鬼ヶ島のダンジョン攻略の方に戻りますかね」


そんな余裕なやり取りを三崎とアルファがしている中で、


『ん…?マスター、試作2号機の魔素出力が急激に上昇中です』


「げ。目視でも確認できてる。あれは…」


トルーパー試作2号機の機体が急に淡い光に包まれ始め、そして次の瞬間、ゴンッッッッ!!!!という凄まじい音ともに三崎の乗る機体が吹き飛ばされた。


激しく振動しながら海面に向けて墜落しそうになる機体をなんとか立て直した三崎は、巨大なシールドでシールドバッシュをブチかましてきた試作2号機を見ながら


「っったく、トラ○ザムかよ!やってくれるな!!」


と非常に嬉しそうにテンションを上げていた。


『これも驚きました、魔素エンジンのリミッター制御もできていますね』


「さすがってところなんだろうな。多分だけどやっぱり要素技術とか基礎研究の積み上げはアチラさんも相当レベル高いからなぁ。ある程度の再現なら結構できるってことだと思う。これは俺が舐めてたわ」


そんなことを言いながらもトラ○ザム状態の攻撃をなんとか避けながら、コックピット内で計器の確認をする三崎。そして


「じゃあアルファ、アレを見せられたらこちらもやるしかないな!」


『もちろんです。トルーパー試作3号機、全リミッター解除。アイテムボックスからフルアーマー装備展開。デストロイモード起動しました』


アルファの宣言とともに純白の機体が一瞬にして重兵装に覆われ、そして機体の全身が変形して淡く発光し、試作2号機にむけて全ての武装を一斉に掃射した。

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