第76話
ダンジョン海域のギリギリ外を飛んでいた輸送機から投下されたトルーパー試作2号機はそのままダンジョンエリア内に入ると無事に起動を果たし、海面スレスレをホバーするように飛びながら鬼ヶ島へ向かって飛来しようとしていた。
『マスター。外装が黒く塗られて色が変わっていますが間違いなく試作2号機です』
「まじか。めちゃくちゃ普通に動いてるじゃん」
『ええ、正直私も驚いています』
三崎もアルファも並大抵の技術力ではまともに動かせない状態にした上でトルーパー試作2号機を鷹匠へ引き渡していたため、眼の前でなんら問題なく現実に動いている試作2号機を見て非常に驚いていた。
”あれは完全にトルーパーw”
”しかも敵だろ、アレw”
”試作2号機でしかも色が黒いって…完全に敵に奪われた機体ですねw”
”三崎とアルファがマジでびっくりしているという珍しい絵面w”
三崎とアルファが、さてどうしたものかなと考えていると島からだいぶ離れたところで急に試作2号機は海上で停止し、そしてそのまま高度を上げていった。
「なぁ、飛行ユニットとかつけてたっけ?」
『いえ、アレに飛行ユニットはつけていませんでした。なので恐らく自前のものかと』
そのアルファの言葉を聞いた三崎は一瞬で雰囲気を変え、いつもは見せない獰猛な笑みを浮かべ一言。
「へぇ、やるじゃん」
”おおお!?”
”三崎がめっちゃ怖い笑みを浮かべてるw”
”なになに!?”
”これはどういう流れなんだ??”
一度落ち着いていたテンションを急激に上昇させようとしていた三崎に対して、
『マスター!試作2号機がバズーカらしき大きな射撃用武器を構えました!異常なエネルギー密度を計測!!…これは対消滅弾!?』
「陸上戦艦やちほこ、アルファ4緊急起動。アルファ4聞こえるか?」
『こちらアルファ4、緊急起動しました。いつでもどうぞ』
「最高出力で拠点防御結界、神の盾を起動!!急いでくれ!対消滅弾が来る!」
『イージスシステム、緊急起動します。出力全開で第1層から第7層まで展開』
三崎達が周囲にシールドを張り終わった直後、飛来した対消滅弾らしき弾頭が炸裂し、光と轟音に周囲は包まれた。
・ ・ ・
「オメガ、あちらの様子はどう?」
『砂塵とノイズがひどくて観測不可能な状態です。今暫くお待ち下さい』
初手からいきなりぶっ放したウォードは海上から鬼ヶ島の方の様子を伺っていた。
先程ウォードとオメガが挨拶代わりにぶっ放したのは、ウォードが便宜上「(偽)対消滅弾」と呼んでいる特殊な弾頭である。
三崎が「ダンジョンに星が流れた日」に使用した対消滅弾はその技術や原理が不明なため、完全に同一のものかどうかが判断つかなかったための名称である。
ただいずれにせよ、細かい原理や威力には差があるもののウォードもまた独力で対消滅弾らしきものの開発には成功していた。
ウォードがいきなりこのようなヤバいモノをぶっ放したのにはいくつか理由がある。
まずはシンプルに、小手先の攻撃は三崎に通用しないだろうという確信というか謎の信頼である。この(偽)対消滅弾を使ったところで大きな人的被害は出ないであろうと踏んでいた。
第2に、三崎が配信を初めて以来その動画をずっと見続けていたウォードは、三崎が言うJapanese Romanceを理解するために多くのJapanese AnimationやJapanese Mangaを嗜んでいた。
特に三崎が元ネタにしたであろう作品は重点的にチェックしており、そしてもちろんトルーパーとヘビィ・キャバルリィの元ネタにもたどり着いていた。
こういった背景からグアムに「試作2号機」が届いた際に思ったのだ。
これはもう(偽)対消滅弾をぶっ放すしか無いと。
完全に三崎の日々の行動の自業自得だった。因果応報とも言う。
兎にも角にもウォードは同じ研究者としてその圧倒的な技術力や自由な発想をもつ三崎に対して敬意を持っており、だからこそ彼のスタイルに合わせる形で試作2号機をお披露目するためにぶっ放したのであった。
そんな背景を他所に、ウォードは引き続き鬼ヶ島方面を中止していたが、
『ボス、緊急アラート!島の方から攻撃来ます』
「OK!」
島で発生していた砂塵を切り裂いて無数のミサイルがウォードが駆る試作2号機に襲いかかる。
それらのミサイルの一部を頭部バルカンで撃ち落とし、そして海面スレスレまで高速で移動して振り切ったところで
『ボス、さらに警報!島からトルーパーが来ます!』
オメガの警告とともに島の砂塵から純白の機体が飛び出してきた。そしてその勢いのまま一気に黒い試作2号機に接近。
ビームサーベルを振り下ろし、その攻撃をウォードも起動したビームサーベルで受け止めた。
ここに人類史初のトルーパー同士の戦闘がはじまった。
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