第71話

そして配信が中断してから30分が経過し、再び配信が再開された。


”配信が再開された瞬間からカオスw”

”マルチ画面の全てで別の戦闘が発生してて意味がわからないw”

”三崎はいつの間にかヴァ◯キリーに乗って空を飛んでるし、地上では小型のトルーパーが6体もいる上に強化外骨格も6人いて、何やら40-50人くらいの人たちと集団戦しているし、わだつみからは艦砲射撃がエグい量放たれてるし、ほあかりも陽電子破城砲ぶっ放し続けてるしw”

”情報量が多すぎるw”


可変戦闘機ドラグーンで深層級のモンスターと割りとガチのバトルを繰り広げていた三崎は配信の再開に気づくと


「お、配信始まりましたか。もう30分経ったの?」


『あっという間ですね。状況説明は私の方からしておきましょうか?』


「あぁ、悪い頼める?さすがにちょっと今は手が離せないわ」


アルファといつも通りに話しながらもドラグーンの操縦桿を操り鬼ヶ島上空を高速で旋回する三崎。


”なぁ、超普通に喋ってるけどガチ戦闘機の中じゃないか?w”

”さっき一瞬変形してた気がするからヴァ◯キリーだなw”

”三崎の主観カメラの映像が早すぎて画面酔いしそうw”


配信が中断されていた30分間の様子をかいつまんでリスナーに説明するアルファ。


もちろん諸外国のアレコレの話や、そもそもこの30分間の休憩時間は林艦長や三崎達が仕込んでいた罠だという話などには一切触れず、あくまでの謎の勢力が突然鬼ヶ島に上陸し、それに対応しはじめる形で各方面で戦端が開かれたと説明した。


『というような感じが空白の30分間ですね』


”うーんw”

”これはカオスw”

”そしてなんとなく、嘘は言ってないけど本当のことも…感を感じたw”

”というかこの30分休憩、たぶん誘い水だったんだなw”

”30分配信されないだけでこれだけ陰謀論とか一気に出てくるから、やはり徹底的な情報開示は偉大w”


『色々憶測推測などもあるかと思いますが、何にせよ私もマスターも絶対に死人は出しませんのでその点はご安心を』


”おお”

”アルファから強い意志を感じた!”

”なんかその一言でちょっとホッとしたw”

”ある意味サッカーとかオリンピックとかと同じでこういうのも国同士の擬似戦争なのかもな”


アルファの色々とぼかした説明に納得3割、様子見5割、ふざけるな2割というような割合がリスナー達の温度感だった。


アルファや三崎、そしてこの様子を見守っていた林艦長や、さらに遠くの鷹匠等もこれなら問題ないと踏んで内心で胸を撫で下ろしていた。


そんなこんなでアルファとリスナー達がしばらくやり取りをしていると、


「っよし!翼竜型モンスターはひとまず殲滅完了!これで鬼ヶ島南東部上空の制空権は完全に確保!」


『こちらアルファ3、こちらもドラゴン種の殲滅が完了しました。鬼ヶ島北西部上空の制空権を確保しました』


”なんかアルファがまた増えてるw”

”アルファ3ってw”

”ということはほあかりは今完全に無人ってこと?”


制空権を確保した三崎はそのまま一度浮遊航空艦ほあかりへ帰投。


深層級翼竜型モンスターとの戦闘でエンジン廻りにかなり無茶をさせた上、超高速からの木の葉落としをした際に無茶な変形をしたせいで関節部にかなり負荷がかかっていたためだった。


そのためほあかりへ戻った三崎はまた別の装備を積んだ可変戦闘機をアイテムボックスから召喚し、格納庫で装備の最終チェックを進めていた。


残る戦場は鬼ヶ島東岸平野部。


6体の小型トルーパー、6人の強化外骨格を纏った深層探索者、そして45名の謎の勢力の深層探索者が入り乱れて完全に乱戦状態になっている戦場である。


・ ・ ・


三崎やアルファ3が鬼ヶ島上空の制空権を確保していた頃、地上の戦場は完全に膠着状態となっていた。


形勢が不利と見た謎の3組織の深層探索者達が一時的に手を結んだのである。


小型のトルーパーが6機、そして先行量産型強化外骨格を纏った深層探索者が6名いるとてその数の差は中々にキツいものがあった。


加えて今回は特に小型トルーパーの装備が非致死性兵器がメインであり決定力に欠け、さらにトルーパーは主に平野部のモンスターを優先的に狙っていたという事情もあった。


ただし逆に言うとたった6名の深層探索者で45名もの深層探索者を抑えているわけで、むしろ今までの三崎の現実離れした無茶苦茶なロマン武器たちよりも純粋に6~7倍の戦力差をものともせず戦況を維持している先行量産型強化外骨格の性能が際立つ形になっていた。


配信を見ていた各国の探索者達や軍・警察関係者達は改めて三崎の装備のヤバさを今までに無い現実感をもって認識し直していた。


そんな膠着した戦場で誰もが何かしらのキッカケとチャンスを待つ中、補給と搭乗機の交換を終えた三崎がガウォーク形態で空からゆったりと舞い降りてくる。


そしてその可変戦闘機の主翼の下には何やら大きなスピーカーらしきものが片翼に2機づつ計4機搭載されており、急に戦場全体に音楽を爆音で流し始めた。


戦場にいた50名を超える深層探索者たちが急に流れ始めたアップテンポな音楽に呆気に取られた顔をして三崎が乗る可変戦闘機を見上げる中、三崎のドラグーンの上にホログラムで大きく女性のシルエットが浮かび上がる。


空気中に映し出されたその女性は某ボーカロイドを彷彿とさせるような出で立ちで手にマイクをもち、そして音楽に合わせて唐突に叫んだ。


『私の歌を聞けぇぇぇぇ!!!!!』

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