第70話

浮遊航空艦ほあかりから出撃した三崎はそのままの勢いで鬼ヶ島南東側の山岳地帯上空にまで進出した。


『マスター。翼竜型モンスター、38体が旋回中。地上部にもまだかなりの数が待機している模様です』


「了解、まずはこのまま間引くぞ!」


可変戦闘機ドラグーンは時速1,000km、マッハ1に迫る速度でまずは鬼ヶ島南東側上空をあっという間に通り過ぎ、そしてややスピードを落としながら旋回してモンスター群の方に突撃していった。


「マイクロミサイル、空中の翼竜型モンスターロックオン!」


『マルチロック完了しました。いつでもどうぞ』


「ファイア!」


三崎の掛け声とともに、ドラグーンから4発のミサイルが発射され、さらにそのミサイルから10発ずつのマイクロミサイルが放たれた。


翼竜型モンスターたちも空を駆け、魔法攻撃などでミサイルを撃ち落としたりもしていたもののその大半にミサイルが直撃し墜落していく。


しかし残った個体たちがそのまま三崎が駆るドラグーンの後ろにつき、ブレスなどの攻撃を断続的に放ってきた。


「うおっ、あぶね!このスピード付いてこれるのか!」


『最高速度では無いとは言え時速800kmの戦闘機に余裕で付いてくるモンスター達もなかなかやりますね』


三崎とアルファは軽口を叩き合いながら鬼ヶ島南東の山岳地帯上空を縦横無尽に駆ける。


モンスターからの攻撃を避け、隙を見てミサイルを放ち、そして更に速度を上げてモンスターを引き離した上で急減速をしてモンスターの背後を取り、マシンガンで撃ち落とす。


「よしよし、良い感じだな。翼竜型モンスターは後どれくらい残ってる?」


『地上部の個体も合わせて残りは100体を切った模様です。この調子なら狩り尽くせますね』


「了解、ここは問題なさそうだな。北東部とアルファ3はどうなってる?」


鬼ヶ島南東部山岳地帯上空で三崎がドラグーンを駆り、翼竜型モンスターを順調に撃墜していってるのと並行して北西部山岳地帯上空では浮遊航空艦ほあかりと、無人航空機50機を従えたアルファ3が淡々と作業を遂行していた。


『こちらアルファ3。北東部山岳地帯はドラゴン種の巣みたいですね。スピードの早い個体はいなかったのでこちらも順調にモンスターの殲滅が進んでいます』


三崎がドラグーンを操縦しながらチラリと北東部の方を見ると、空に浮かぶほあかりから断続的に光の奔流が放たれていた。


さらにほあかりの周囲に存在する無人航空機達もほあかりに近づこうとするドラゴン達を怒涛の勢いで駆逐していた。


そして数分後、翼竜型モンスターもドラゴン種も概ね片付け終わろうとしていたタイミングで


『強力な魔素反応確認、深層級のモンスター来ます』


アルファの警告の直後、三崎が駆るドラグーンのすぐ横をものすごい速さで何かが飛び去った。


「はやっ!」


サイズ自体はこれまで三崎が交戦していた翼竜型と大差なかったが、そのモンスターが発する雰囲気から明らかに別物だとわかる。


「タコといい、このトリといい、とんでもないモンスターが普通に出てくるな!!」


『しかも完全に飛行特化型ですからね。普通のダンジョンじゃ中々お目にかかれませんよ』


その深層級翼竜型モンスターからの攻撃をなんとか避けながら、マイクロミサイル、マシンガンをばら撒くが…


「すげぇな!まじで全く当たらん!!」


『ロックが追いつかないですね。これは私も驚きました…さて、どうしましょうか?』


「機体はまだ問題ないか?」


『かなり無茶な挙動をさせて来たのであまり長くは保たないかもしれないです。早めの決着を推奨します』


「りょーかい、ならこれで決める」


翼竜型モンスターに後ろを取られた三崎は操縦桿を手前にぐいっと引くと、そのまま天頂に向けて垂直に飛び出した。


「エンジン出力全開!!」


『出力全開にしました』


三崎を追いかけて翼竜型モンスターも最大戦速で迫る。


計器が、マッハ1を超え、マッハ1.5を超え、マッハ2を超え、そして三崎達の周囲の景色もだんだんと空の蒼さを超え、宇宙の黒さを感じさせるようになったきた瞬間、


「秘技、木の葉落とし!」


『可変戦闘機ドラグーン、ガウォーク形態に変形します』


変形したドラグーンが空気抵抗を一気に受けることで急激にスピードを落とし、一瞬にして三崎を追いかけてきていたモンスターの背後を取った。


木の葉落とし。空中戦においてかの零戦が得意とした事で有名になった空中戦闘機動である。


モンスターの背後を取った三崎は、そのままマシンガンとミサイルをばら撒き、深層級翼竜型モンスターを撃墜した。

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