第68話
配信が再開した画面を見たリスナー達があまりの情報量に唖然として半笑いすることになる約30分前。
三崎が配信を停止すると同時に
『緊急警報。鬼ヶ島東海域に3隻の潜水艦の侵入を確認。さらにその潜水艦から島にむかって強襲揚陸艇らしきものが出されました』
「おう。予想通り釣れたな」
三崎達は依然として鬼ヶ島の西側の海域にいるが、島を挟んでちょうど反対側の海域から他国のものらしき武装組織が島へ上陸を図ろうとしていた。
一般的にダンジョンは近辺の環境を模擬してその内部環境が構築される。
例えば以前三崎達がダンジョンアタックをした富士五湖ダンジョンなども、その周囲の豊かな自然を模擬する形で様々な環境が存在していた。
そして今回発生した鬼ヶ島についてもこれまでのダンジョンの事例と違わず、周囲の環境を模擬する形で内部環境が構築された。
すなわち鬼ヶ島は近辺に存在していた八丈島とほぼ同じような形状をしていたのである。
八丈島は北西、南東それぞれに標高が約800m程度の山が存在し、その2つの山をつなぐような形で平野部や海岸が形成されている。
要するに八丈島と同様の形状をしている鬼ヶ島に強襲揚陸をかけようと思うのであれば、平野部の東側か西側からアタックすることが定石だった。
鬼ヶ島西岸は日本本土側でもあることから何かあった場合に色々とよろしくないと考えた林艦長や三崎たちは、鬼ヶ島東海域からダンジョンアタックを開始し、そして西側に移動していくことで安全地帯になった東側を「わざと」空けていた。
さらに配信を流し続けることで、わだつみとほあかりのインターバル、さらに三崎の休憩時間を公開し、まだ見ぬ謎の武装組織の釣り出しを企図したのである。
これをすることの狙いはシンプルに林艦長や三崎達が24時間警戒し続けなくて良い状態を作り出し、短期で色々と片を付けることだった。
三崎たちの配信を見ていた各国の特殊部隊の面々は正面切っての戦闘ではやはり勝てないと考え、三崎達が身動きができない瞬間を狙って島へ上陸し、迅速にダンジョンコアを破壊することで鬼ヶ島のダンジョンとしての機能を停止させることにした。
なお補足だが、ダンジョンはダンジョンコアが破壊されることでその機能が停止する。
ダンジョンコアが破壊されるとダンジョン産の資源などの一切も算出されなくなり、さらに当然モンスターが発生しなくなるためモンスター素材も打ち止めとなる。
そのため各国ではダンジョンコアの破壊は基本的に禁止されているどころか、ダンジョンコアの保護が推奨されている程だ。
ちなみに「星が流れた日」で三崎とアルファは13もの特級、および1級ダンジョンに大型杭をぶっ放しているが、それらも概ね下層までの破壊を目的としており、深層や超深層に存在するダンジョンコアにまではダメージが通らないように計算をしていた。
話は戻るがいずれにせよ、鬼ヶ島周辺に潜んでいた各国の特殊部隊の面々は貴重な地上開放型ダンジョンを日本に渡すくらいなら、ダンジョンそのものの機能を停止させることを決めたという次第であった。
そんなこんなで鬼ヶ島東岸に迫る強襲揚陸艦たち。
それを確認した林艦長は
「わだつみ、エマージェンシー・ブロー・システム起動。急速浮上」
『メインバラストタンクから緊急排水開始。全速で浮上します』
「さらに浮上後、カタパルトオープン。小型トルーパー6機に緊急展開ブースターを搭載して順次射出準備。特殊作戦群の諸君、いよいよデビュー戦だ。準備はいいな?」
「「「「「「Yes, Sir !!!!」」」」」」
「よし。小型トルーパー6機を鬼ヶ島平野部東岸エリアに展開後、輸送コンテナも続けて射出。SATの諸君も準備はできているな?」
「「「「「「Yes, Sir !!!!」」」」」」
「うむ。各隊良い返事だ」
林艦長が指示を出している中、わだつみは急速に上昇し、そして海を割って海面にその巨体を晒した。艦橋の林艦長達は各座席でその大きな揺れに耐える。
その勢いの波飛沫が収まらない中、わだつみのデッキが展開されていきカタパルトが出現する。
そのカタパルトの奥の格納庫からは全高約8mほどの小型のトルーパー6機が順に背部に緊急展開ブースターを装備しながら、カタパルトに出てきていた。
各小型トルーパーに搭乗しているのは軍の特殊作戦群から派遣されてきた深層探索者達。
彼らは三崎たちと合流してから今日まで常に小型トルーパーのシミュレーションを続けていたのだ。
なおこれらの小型トルーパーは三崎が軍の依頼で作成していた先行量産型になる。
「星が流れた日」にお披露目されたトルーパーであったが、そのサイズは18mもあり実際の運用を考えるとデカすぎて用途がかなり限られていた。
そこで三崎が追加で開発したのが全高8m程の小型トルーパーだった。
要するに18mのトルーパーはガ◯ダムサイズであり、8mの小型トルーパーはアーム・◯レイブである。
改めてフルメタル・◯ニックはメカの設定が良く出来ていると感じた三崎だった。
兎にも角にも小型トルーパーはその背部に緊急展開ブースターが装備され、カタパルトにセッティングされた。
「こちら1号機。いつでもいける」
『了解しました。これよりカタパルトの管制はアルファ2が実施します。1号機から6号機まで連続して射出します。各自待機して下さい。それでは1号機から。3カウントで射出します。…3、2,1,1号機、射出』
わだつみのカタパルトから6機の小型トルーパーが次々と飛び立ち、そして鬼ヶ島東岸の平野部に降り立った。
それに続くように、先行量産型強化外骨格に身を包んだSATの面々が乗り込んでいた輸送コンテナも戦場に向けて射出された。
鬼ヶ島東岸平野部にて多数の深層探索者同士の戦いの火蓋が切られた。
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