第66話
高度500mまで一気に上昇した三崎は、そのまま浮遊航空艦ほあかりのカタパルトに着地して艦内に入った後に艦橋に向かった。
”高さ500mまで一気に上昇する動画とかw”
”すごい迫力だったなw”
”色んなアングルがあるけど、三崎の後ろを随伴しているドローンからの映像が一番迫力があって好きw”
”わかるw”
”やっぱ主観に近い視点の動画が一番興奮するよなw”
そして艦橋に到着した三崎は強化外骨格を解除し、そのまま艦長席に腰掛けた。
「よし、じゃあ行きますか。アルファ、どうだ?」
『準備はできています。浮遊航空艦ほあかりの全てのシステム、想定通りに稼働しています。いつでもどうぞ』
「了解。しかし六本木でヘビィ・キャバルリィを出した時はあんまり余裕なかったから気にする暇もなかったけど、本当に浮いてますなぁ…」
『そうですね。理論値やシミュレーションでは魔素濃度が一定値を超えれば大型構造物の飛行や浮遊が可能であることはわかっていましたが、実際にやってみると不思議な感じがしますよね』
「だよね。ちなみにリスナー向けに。今回参考にしたのはコー○・ギアスのアヴァロンです」
”作った本人たちが不思議そうな顔をするなw”
”もしかしたら最初に空を飛んだ人達もこんな感じだったのかもなw”
”しかしマジで不思議だよなw”
”魔素、なんでもアリだなw”
”まぁ冷静に考えればモンスターやら魔法があるんだから何でもアリだけどw”
”モンスターとか魔法よりも人間が作ったものに対して不思議さを感じるのが不思議だよな”
”モンスターとか魔法は「そういうもんだ」って思えるからかもな”
”アヴァロンw”
”南の島といいシチュエーションも近いよなw”
スタンピードの際、六本木の空に出現したヘビィ・キャバルリィも大概世界を騒がせたが、三崎含めて皆が余裕が無かったこと、その直後の神の杖のインパクトがとんでもなかった事からやや忘れられがちだった飛行ユニット。
しかし改めて安全マージンが確保された状態で、かつ太陽の光が降り注ぐ南の島の近くの大海原上に現れた大型の浮遊航空艦を見た世界中の人々は唖然としていた。
「ま、飛ぶのが分かればそれで良し。細かい理論的な話とか技術的な話は帰ってから配信してない時にしよう。そういうのは地味だからな」
『そうですね。データは全て観測・測定していますのでまた後日確認しましょう』
”世界中の科学者、技術者はまさにそこが知りたいんだと思うぞw”
”それなw”
”我々一般人は爽快感が得られる配信であればOKw”
”それなw”
「はいはい、じゃあ改めて行くか。浮遊航空艦ほあかり、発進」
『メインエンジン点火。ほあかり、発進します』
アルファの管制によって空に浮く200mの巨体が空を滑るように動きはじめる。
「アルファ、林艦長につないでくれる?」
『承知しました。…繋がりました』
「こちら林だ。相変わらずお前のアイテムボックスの中はびっくり箱だな」
やや苦笑したように林艦長が三崎に語りかけ、三崎は微妙な表情をしつつ頭を掻いていた。
”艦長さんw”
”完全にびっくり箱だよねw”
”もう何が出てきても驚かないと毎回思った直後に驚いている自分がいるw”
「まぁそれはさておき、俺とアルファはこのまま先行して西側海域に向かいます。爆雷や魚雷、ビーム系の主砲などを海に向けてバラ撒きながら進むので、わだつみは巻き添えを食らわないように安全圏から追随して下さい。その後、こちらで打ち漏らしたモンスターの掃討をお願いします」
「承知した。では頼んだぞ」
「もちろんです!よし、じゃあアルファ、西側海域へ向けて侵攻開始」
浮遊航空艦ほあかりはわだつみの上空から離れ、鬼ヶ島の南方の海域上空を時計回りに進みながら西側海域へ進出した。
そのまま数分後
『マスター、海中の偵察用小型潜水ドローンが水棲モンスター群を捉えました』
「数は?」
『また150体ほどの群が5つほど。それからクラーケンらしき大型個体が3体です』
「基本的な構成がそういう感じなんだな。そんでクラーケンが3体って。普通のダンジョンだったらこれさすがに無理ゲーじゃね?」
『そうですね、あのサイズが3体同時はなかなかキツいかと』
”クラーケンが3体w”
”このダンジョン、完全に難易度がバグってるw”
”そのバグってる難易度のダンジョンを蹂躙する三崎w”
三崎とアルファが軽い雑談をしていると、さらに距離が近づいてきたモンスターに対して艦内で警報が鳴り響く。
「よし。じゃあ第1種戦闘配置。対潜戦闘準備!」
そしてほあかりの下部のミサイル発射管や爆雷投下の準備を進め、
『対潜戦闘、準備完了しました。いつでもどうぞ』
「目標、海中の水棲モンスター群。爆雷、1番から6番、全弾連続して投下。魚雷、1番から10番まで全弾連続して発射。爆雷、魚雷ともに弾はアイテムボックスから直接充填してくれてOKなのでとにかくバラ撒いてくれ」
『承知しました。爆雷、魚雷ともに全弾発射します』
高度を海面から100m程度まで下げたほあかりから爆雷と魚雷がまるで雨のように海に向かって降り注ぐ。
着水、爆発、轟音、閃光が海中、海面を問わず水棲モンスター群を蹂躙していく。
爆雷と魚雷をばら撒く中、
『マスター、大型個体3体が海面にまで上がってきます』
「爆雷、魚雷の発射エリアを除いて本艦の艦底部分にエネルギーシールドを展開」
海面にまで上がってきたクラーケン3体から怒涛の勢いで魔法攻撃がほあかりに向かって放たれたが、その尽くがエネルギーシールドで無効化される。
”とんでもない絵面w”
”サイズ感覚がバグるなw”
”やっぱこれゴ○ラ映画だろw”
『マスター、クラーケンからの攻撃は無効化できていますが、やはり爆雷や魚雷ではあのサイズには効果がないですね』
「よし。じゃあ主砲を使う。陽電子破城砲準備」
『承知しました。陽電子破城砲、展開します』
ほあかりの船首部分が開放され、そこから大型の主砲が姿を現した。
”またえぐい主砲がきたw”
”陽電子破城砲ってアーク○ンジェルやないかw”
”王道のロマン砲来たなw”
「連続して3発発射するぞ」
『了解です。…エネルギー充填完了しました。魔素エンジンも出力最高、冷却機構もフル稼働します。10秒ほどのインターバルは必要になりますが3発連続発射、準備完了しました』
「おっけい。じゃあ対象は海面のクラーケン。主砲発射」
『主砲発射します』
ほあかりから閃光が轟音を轟かせながらインターバルをおいて3発連続して放たれる。
その光の奔流は空を切り裂いて一瞬でクラーケンを飲み込み、この世から消し去った。
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