第63話

わだつみが海面に浮上した直後、三崎はハッチから外に出てきた。なお既に撮影は撮影用ドローンが三崎に随伴する形で行われている。


「さて。久しぶりに体をがっつり動かしますか」


『承知しました。どう行きますか?』


「まずはひとまず久々に。アルファ、強化外骨格 ニュートラルモード スタンバイ!」


『確かに久々ですね。さて、Ready! Set!』


「変身!!!!!」


『変身コマンド承認しました。強化外骨格を量子空間から実体化、使用者に装着します』


まばゆい光が一瞬にして三崎を包んだ後、そこには黒い強化外骨格に身を包んだ三崎が立っていた。


”おお!変身きた!”

”確かになんとなく久々な感じするなw”

”最近は大型の武器をぶっ放す感じが続いてたしなw”


「まぁアレです。スタンピードの時は絶対に勝たないといけなかったので、遊び心ゼロでしたし。今回はまだ余裕が全然あるので。わだつみも最悪の場合は全速でダンジョン海域外に逃げれば問題ないですしね」


『確かに今回は安全マージンがスタンピードの時と全然違いますね。で、ここからは?』


アルファからの問いかけにニヤリとした三崎は


「南の島、青い海、広がる空、そしてそこに漂う魔素という謎の粒子とくれば…」


そういって言葉を溜めつつ、わだつみの広いデッキを急に駆け出し、そしてデッキの端からジャンプして空に跳んだ。


「来い、リフボード!行くぜ!早くしないと波に乗り遅れるぞ!」


『はいはい、まったくもう』


三崎の非常に無邪気で楽しそうな表情を見たアルファは若干呆れながらも、空に跳んだ三崎の足元にリフボードを出現させた。


そしてまるでスケボーの着地のようにボードに着地した三崎はそのまま


「俺には魔素の風が見える!見えるぞ!はははははははは!」


と異様なハイテンションで強化外骨格をまとったままリフボードの出力を最大にして空を駆けた。


”おお!!!???w”

”すげぇ、まじで空でサーフィンしてるw”

“魔素はト◯パーだったのかw”

”てかなんであんなにテンション高いんだw”

”夏の海だからだろ。知らんけどw”


『ちなみにリスナーの方々向けに補足すると、強化外骨格のセンサーを活用することで魔素濃度の濃淡を視覚化することは可能です。なのでマスターの言ってる魔素の風が見えることは結構マジだったりします』


”本当に見えてたのかw”

”ビュンビュン飛んでるなw”

”確かにこれまでのダンジョン内だとこれだけ自由に空は飛べないよなw”

”でもなんであんなにテンション高いの?w”


『テンションの高さは私にも若干謎なのですが…恐らくですが、ダンジョンに星が流れた日以来、ずっと外に出られず、しかもそのまま潜水艦の閉鎖空間ですから色々溜まっていたのでしょう。あとは純粋にロマン魂が爆発したのかもです。青い海、広い空、そしてその空でエウ○カセブンごっこをするのはAIの私でも確かにロマンを感じます』


”エウ○カセブンごっこw”

”確かに気持ちはわかるw”

”ねぇ、リフボード、まじで商用化されない?普通にめっちゃ乗りたいw”


そんなアルファとリスナー達のふんわりしたやりとりを聞いていた三崎は空をリフボードで駆けながら


「確かにそれもあるけどな!もうひとつ、生身の人間が巨大な敵にそのまま立ち向かうってのもすごいロマンだと思わない??」


”確かにw”

”巨大ロボ 対 巨大怪獣のバトルも熱いけど、人サイズ 対 巨大怪獣もそれはそれでアリ”

”ということは今回はトルーパーとかヘヴィ・キャバルリィ使わない感じ?”


なお三崎がリフボードで空を駆け、アルファやリスナー達と戯れている中、クラーケンは林艦長とアルファ2が魚雷や水中音響兵器を打ち込むことで牽制していいた。


そしてその牽制の効果がそろそろ薄くなってきた頃、


「よし、だいぶ慣れたわ!アルファ、このままクラーケンに突っ込む。レールガンをくれ」


『承知しました。レールガンを実体化します』


そしてレールガンを手にした三崎はリフボードであっという間にクラーケンに近づいていくと、クラーケンからの様々な魔法攻撃、および物理攻撃をことごとくトリックを決めながら避け続け、そして隙を見てレールガンを打ち込んだ。


”マジで波乗りw”

”波乗りというかスノーボードのハーフパイプ見てるみたいだなw”

”トリック決めすぎw”

”マジでご機嫌だなw”

”なぁ、さっきタコの触手を避けた技はトリプルコーク1440なのでは?w”

”すげぇくるくるしてたなw”

”何回転してた??w”


三崎の超ゴキゲンな波乗りに盛り上がるリスナー達。


全長50メートル、ビルで言うと15階建てから20階建て相当の大きさを超えるような超大型のモンスターに単騎で突撃し、さらにその攻撃を広い空と青い海を背景にしてトリックを決めながらひらひら躱し続けるのだから非常に絵になる光景だった。


”こういうの、何かで見たことある気がするなと思ったらレッ○・ブルスポーツの動画だわw”

”あぁ!めっちゃスッキリしたw”

”確かにめちゃわかるw”


しかし隙を見て打ち込んだはずのレールガンも魔法障壁に弾かれており、攻撃の決め手には欠けていた。


「アルファ、小型のレールガンじゃ威力が足りないな。まずはあのタコの動きを止めてくれ」


『承知しました。ではアルファ2へ。凍結弾頭を装填した魚雷をお願いします』


『こちらアルファ2、わだつみより凍結弾頭を装填した魚雷を発射しました』


数秒後、わだつみより放たれた凍結弾頭に被弾したクラーケンが一瞬で凍りつき、その動きを止めた。


そしてそれを見た三崎は一気にクラーケンの上空へ上昇し、


「さぁ、これも前からお披露目したかったんだよな!来い、パイルバンカーぁあああああああ!!!!」


『そんなに叫ばなくても出しますよ。強化外骨格右腕部にパイルバンカー実体化しました。同時に強化外骨格のリミッターを解除します』


強化外骨格全体が淡く発光し、更に実体化されたパイルバンカーの射出機構が唸りを上げる。


そのまま三崎はクラーケンめがけて急降下していき、パイルバンカーをクラーケンに叩きつけた。


凍って動きが止まっているクラーケンだったが防御障壁を展開し、その攻撃を受け止める。


攻撃を受け止められた三崎はニヤリとし、


「受け止められてからが本番だろ!パイルバンカー、座標固定、エネルギー全開で射出!」


『承知しました。座標固定、エネルギー全開で射出します』


そして強化外骨格がまばゆい光を放ち、パイルバンカーの射出機構がさらに唸りを上げ、一瞬の間の後、渾身の一撃が放たれた。


放たれた杭はクラーケンの防御障壁をまるで紙切れを破るようにたやすく突破し、そのままクラーケンを串刺しにして貫いた。

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