第62話

魚雷と水中音響兵器を盛大にぶっ放し、さらに200mにも及ぶ巨大な船体を魔素エンジンを用いることで約50ノットの爆速で全速前進させたことで当然の帰結として


『マスター。本艦の周囲にものすごい勢いでモンスターが集まってきています』


まったく潜んでいない潜水艦めがけて四方八方から水棲型モンスターが襲いかかろうとしていた。


「包囲網は抜けられそうか?」


『ダンジョン海域外へは抜けられそうですが、ダンジョン海域内では包囲の突破は難しそうですね』


「うーん…モンスターが仮にダンジョン海域外に出てきたら色々ややこしいしな。やっぱここで迎撃するか」


これまでの報告では水棲モンスター達は鬼ヶ島からあくまで10km圏内に留まっており、それ以上の範囲にまで進出してきた例は確認できていない。


しかし地上のダンジョンにおいても稀にダンジョン開口部から出てくる個体もいないわけでは無いので三崎はダンジョン海域内で片付けることにした。


「まずはとりあえず手数を増やす。UUVをアイテムボックスから直接転送してくれ。残りの40機出しちゃってくださいな」


『承知しました。アイテムボックス内から戦闘支援型UUV40機を本艦の周囲に展開しました。これで本艦の随伴艦は計50機です』


「相手の数と様子は?」


『現在確認できている範囲で150体程度のサメ型モンスターの群れが7つ。さらにそれより遠方に何やら巨大な影が一つ観測できました』


”モンスターの数がエグいw”

”普通のダンジョンじゃ考えられないw”

”え、普通にモンスター1000匹超えてない?w”

”もはやちょっとしたスタンピード並なのではw”

”しかも大型の影w”


「よし、じゃあできるだけ早くサメのほうは片付けていこう。魚雷もマイクロミサイル搭載型の特殊弾頭に切り替え。切り替え完了次第、7つのモンスター群に対してそれぞれ8発ずつ連続して発射。足りない魚雷はアイテムボックス内から直接ミサイル発射管へ転送してくれ」


『内容承知しました。特殊弾等に切り替え済みの魚雷を装填しました。本艦に近いモンスター群を順に駆逐していきます。魚雷発射後、各モンスター群の撃ち漏らしは戦闘支援型UUVの水中音響兵器で殲滅します』


それからは凄かった。50発を超える魚雷が間髪入れずわだつみから放たれ、水中で盛大に爆発音と振動を周囲に撒き散らし続け、そしてなんとかその弾幕を超えてわだつみに近づこうとしたモンスター達を戦闘支援型UUVが囲んであっという間に水中音響兵器で殲滅していく。


まさに虐殺と言う表現が相応しい蹂躙っぷりだった。


”結局のところ物量が正義w”

”ほんと改めてアイテムボックス様々だなw”

”冷静に考えると普通の探索者だとこのダンジョンは無理ゲーでは?w”

”普通の探索者だったら多分正面突破しようとはしないだろw”

”これ、ダンジョン内じゃなかったら環境破壊やばいなw”


三崎とアルファが圧倒的な火力で1000匹を超える水棲型モンスターをほぼ殲滅したタイミングで


『マスター。大型種、射程に入りました』


「先手必勝。魚雷発射」


『魚雷1番から8番まで発射しました』


そしてふたたび海中に爆発音と衝撃波が響き渡る中、


『大型種、健在のようです』


わだつみのブリッジ内のモニターに水中カメラで捉えたモンスターが映し出された。それはまるで伝説にしか存在しないクラーケンを想起させる大型のタコ。


その姿をみた三崎は


「なぁ、この新種、誰が名前つけてもクラーケンになるよな?」


”確かにw”

”新種のモンスターの命名権は発見者に与えられるとはいえw”

”ここまで議論の余地がない新型モンスターの名称も珍しいw”

”誰かさっきのサメ型モンスターにもちゃんと名前つけてあげてw”

”そういえばあれも新種かw”


海中は魚雷の爆発の余波でやや濁っており、その姿を鮮明に捉えることは出来ていないが遠目にみてもその巨大なサイズがわかる程に圧倒的な存在感を放っていた。


『マスター。無駄話はその辺りで。あのサイズだと本艦に取り付かれるのはさすがに避けたいです』


「確かにこの艦内には結構人乗ってるしな。安全にいこう、ひとまず距離を取る」


魚雷の有効射程範囲ギリギリにクラーケンを捉えたまま、わだつみに近づこうとするクラーケンから逃げつつ魚雷を散発的に放つ。


「どうだ?効いてる??」


『ダメージが見当たりません。どうも爆発の瞬間に何らかの防御障壁らしきものを展開しているみたいですね』


”さすがクラーケン”

”あのサイズで防御障壁ってw”

”三崎の雑な物量攻撃に耐えるモンスターとか久々なのでは?”

”これは新しいロマン武器来るか??w”


「さすがクラーケンってところか…よし、海面に出よう。海中でアレとこのまま撃ち合ってもあんまり意味がなさそうだ」


『承知しました。本艦はこれより海面へ浮上します』


「あと林艦長、操艦を頼みます!俺はわだつみが海面に出次第、単騎でクラーケンに突っ込みます。あとアルファ2は置いていくので援護射撃もお願いします」


『こちらアルファ、私はこのままマスターの支援を継続します』


『こちらアルファ2、アルファから分岐する形で起動しました。これより林艦長の指揮下に入りわだつみの操艦を続けます』

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