第58話

太平洋の海面を割って出てきたのは全長200メートルを超える大型の潜水艦だった。


”うおおおおwww”

”なんかトンデモナイものが海から飛び出してきたw”

”潜水艦の急速浮上って確かにロマンだよねw”

”これ普通の潜水艦だったら折れてないか?w”

”三崎が出してくるものは普通じゃないから大丈夫w”


「前々から作ってはいたんですけどね、使い道がなさそうだったのでアイテムボックス内で死蔵していた大型潜水母艦のわだつみです!なお元ネタはトゥアハ・○・ダナーンです」


”トゥアハ・○・ダナーンw”

”やっぱフル○タ好きなんだなw”

”形状とかかなり似てるよねw”

”人工知能といい大型潜水艦といいw”


太平洋に浮かぶ大型潜水空母わだつみは三崎が予めアイテムボックスから出現させておいたものになる。


2日前、三崎は首相公邸で鷹匠から依頼を受けた直後には入間基地へ向かいそこから軍用機で八丈島空港へ飛んだ。


八丈島空港に到着してからはまず空港で佐野と生田と合流。


その後政府で借り上げた大型の宿泊施設へ向かい、軍と警察から派遣されてきた深層探索者たちや、医師、調理師などの支援部隊の面々とも挨拶を交わした。


さらにそこから海へ向かい、海上にわだつみを展開。わだつみ内を関係各位に案内し、その日の夜はホテルに戻り作戦会議を実施した。


翌日は朝から全員でわだつみに乗り込み潜水艦の操縦や、潜水艦から島への強襲揚陸の練習を積み、そして今日配信をしつついよいよ鬼ヶ島へ向かうという流れになっていた。


「今回の鬼ヶ島へのダンジョンアタックではこちらの潜水艦を利用していこうと思います。島に上陸する前にまずは島の周辺海域の調査からする必要があるので」


『マスターの言う通り、今回の国からの強制指名依頼には島周辺海域に出現するモンスターの種類の確認、および可能な限りの討伐も含まれています。なので島に上陸する前にまずは海戦が必要な状況ですね』


地上開放型ダンジョンそのものが人類史上初のケースなのだが、それに伴う周辺海域のダンジョン化も勿論人類史上初の事態となっている。


そのため実は人類はモンスターと海で戦ったという経験が皆無である。


これまでのダンジョンでも例えば富士五湖ダンジョンのようにダンジョン内に湖や川などは存在しており、水棲型モンスターとの交戦記録は存在する。


ただその大半は水陸の両方で活動可能なモンスターであり、例えば伝説上の海の生き物であるリヴァイアサンや大型のタコのようなものは観測されたことがなかった。


今回の海のダンジョン化でそのような海の化け物が出現するのではないかと懸念されており、その調査と討伐も三崎の役割の一つとなっていた。


なお先立って島に上陸していた日本や各国の強行偵察部隊は、海の中を可能な限り潜んで島まで接近・上陸していたため大型水棲モンスターとの戦闘は経験していなかった。


「よし、アルファも補足ありがとう。ということで俺たちはこれからあの潜水艦に乗ってダンジョンアタックをし始めます」


「ただ大変申し訳無いのですが、本日の配信はここまでにさせてください。なお次回の配信は多分明日?頃には配信させていただきます。このあたりもちょっと予定が流動的になりそうなので告知の方を随時確認して下さいね」


”めちゃ見たいけどおk”

”というか今までがむしろ見せ過ぎではw”

”確かに。ここまで配信して良いの?ってのがめちゃ多かったよなw”

”次回楽しみにしています!!!”


ーーー


『マスター、配信の終了が確認できました』


「おう、さんきゅーアルファ。っと佐野と生田も待たせてごめん!」


配信終了後、八丈島の海岸にて。三崎の配信を少し離れたところから物珍しそうに眺めていた佐野と生田が近づいてきた。


「おつかれ。ほい、水」


そう言ってペットボトルを投げて渡してきたのはダン研技術評価本部所属の深層探索者、佐野恵太郎だった。


「さんきゅー。めっちゃ喉乾いてたから助かるわ」


「三崎先輩の配信というか喋りもなんとなく小慣れてきましたね」


普段はクールな表情をややくずしてにやにやしながら話しかけてきたのは、こちらもダン研技術評価本部所属の深層探索者の生田鈴。富士五湖ダンジョンで強行偵察を担当した探索者だ。


「生田も待たせて悪いな。他の人達は?」


「いえいえ。見てて面白かったから気にしないでください。他の人達は既にボートの方に荷物を積み始めています。あちらの準備が終わればボートに分乗して、そこから潜水艦に移りましょう」


八丈島の港湾設備ではわだつみを接舷できるような場所がなかったため、わだつみ自体は沖合に停泊させてある。


陸地からわだつみまではボートを利用して乗り降りをしていた。


そのため今回も三崎の配信を待って、ボートに分乗してわだつみへ乗船することになっていたのだ。

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