第57話
「はい、ということでアルファくん。説明ありがとう」
『いえいえ。この程度はお安い御用です』
「まぁ何にせよですね、だいたいそんなかんじーくらいのノリで理解していただけると幸いです」
”だいたいそんなカンジーw”
”だいたいそんなカンジーw”
”だいたいそんなカンジーw”
”いや、それはあかんやろw”
「というかですね、マジな話この10日間で世の中って知らない事が良いほうが多いことをすごく理解しました。もう国家機密とか聞きたくない」
『そうですねぇ。この10日間は結構濃かったですね。まぁかなりの部分はマスターが発端ではあるのですが』
”おおw”
”これはマジなやつだw”
”この辺でやめときますw”
三崎が若干遠い目をしてかなり本気のトーンでボヤいたのを聞いたリスナー達はなんとなく大人の事情を察した。
そもそもダンジョンが登場して以降の社会体制はダンジョン登場以前と大きく異なる。
ダンジョン黎明期には世界中が大混乱に陥り、ダンジョン資源を巡っての内乱、テロ、国家間の武力衝突は勿論、超常の能力を得た探索者と一般人の間での争いなどあらゆる混乱が発生した。
これらの混乱期を経たうえで日本を含めた現在の世界中の国家は存在しており、各国の政府機関や軍の立ち位置はダンジョン登場以前に比べると格段に強い。
要するに一定の武威を示さないと平和や治安を維持できなかったのだ。
そういったアレコレを経た現在の国々や政府機関は、ダンジョン登場以前の人々が想像することが難しいレベルで色々な意味で強い上にしたたかである。
そして三崎は「ダンジョンが存在する現代社会を何事もなく平和に治めている」化け物たちの中でもその筆頭の一人である鷹匠と一週間程度一つ屋根の下で暮らしていたのだ。
研究者や技術者としては明らかにその能力が突出している三崎ではあるが、所詮は30代前半の青年。魑魅魍魎が跋扈する政治の世界ではまだまだ青二才であった。
「ま、そんな訳でですね。俺はあくまで研究者や探索者であって政治家ではないので、この配信ではあくまでロマン武器の話だけをさせて頂きたいと思います」
”確かにそのスタンスが無難”
”政治の話とか混ぜ始めると大変だもんなぁ”
”色々変なの湧いてくるしなw”
「というのがまずは今後の方針第1ですね。真面目な話とかは政府広報の方をご確認いただければと思います」
”おk”
”おk”
”おk”
「はい、みなさんありがとうございます。では真面目な話はここまでにして、ここからは今後の方針第2です!!」
”お!”
”何々?”
”わくわく”
「今後の方針第2、それは鬼ヶ島で鬼退治です!」
”おおおおお!!!”
”やっぱ来た!”
”最初に南の島って言ってたもんね!”
”これは期待大!!!!”
”地上開放型ダンジョンとか楽しみすぎる”
「皆様お察しの通り、俺はこれから通称鬼ヶ島にダンジョンアタックしようと思います。なおこのダンジョンアタックは政府機関から正式な許可を得てのアタックになりますので、良い子は真似しないで下さいね」
”しねぇよw”
”したくても出来ないしなw”
”というか特級ダンジョンを超える可能性があるダンジョンとか行きたくないわw”
”そもそもたどり着けないw”
ここで改めて「鬼ヶ島」のおさらいをしておく。通称鬼ヶ島、正式名称はまだ付いていないこの島は「ダンジョンに星が流れた日」に突如八丈島の南西300km付近に出現した地上開放型のダンジョンである。
衛星写真やらメディアの航空写真の映像からその地上部分にモンスターが徘徊していることが確認されており、さらに合成開口レーダーの結果から地下構造物まで確認されている。
しかもその島のみに留まらず、その島を中心にして半径10km圏内はどうやらダンジョンエリアであるらしく水棲型モンスターが海域で確認されている。
その島に近づこうとした船舶や、周辺海域で漁を行おうとしていた漁船がモンスターに襲われかけるという事態も発生していた。
なおその島から半径10kmを超えた途端にモンスターは出現せず、さらにモンスターも追って来なくなることが確認されており、おそらく魔素濃度が影響しているのであろうと考えられている。
いずれにせよその島は地上に存在しているものの、完全にダンジョンと化しているため日本国はその島、および周囲の海域も念のため半径20km圏内は立ち入り禁止に指定しており、現在は海軍の艦艇が周辺海域に展開している状況であった。
「この島の実地調査を正式に国から依頼されました。建付けとしては深層探索者の三崎考に対する国からの強制指名依頼という形ですね」
『さらに補足しておくと、現在マスターはダンジョン技術研究所から内閣府に出向扱いとなっています』
”完全に外堀埋められているやないかw”
”こういうときに公務員の出向って色々便利なのねw”
”万全の体制で笑ったw”
「アルファも補足ありがとう。ということで鬼ヶ島へ早速向かおうと思います」
”ん?”
”どうやっていくの?”
”飛行機から落下傘とか??”
突然の三崎の宣言を聞いたリスナー達が疑問を浮かべる中、
「よし、じゃあアルファ準備はいいか?」
『もちろんです。いつでも行けます』
「おっけー!では皆様にお披露目です!リスナーの皆様は俺の背後の海を見てて下さいね。それでは。来い、大型潜水空母わだつみ!エマージェンシー・ブロー・システム起動。急速浮上!」
『メインバラストタンクから緊急排水開始。全速で浮上します』
海岸で配信を撮影していた三崎たちの背後の海から突然、海を割って大型の潜水艦が飛び出してきた。
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