第56話

「リスナーのみなさん、こんにちは。ダン研 オフィシャル 広報チャンネルです。大変お待たせいたしました。第6回目の配信を開始させていただきますね。本日は南の島からお送りさせていただきます」


”きたー!!!!”

”英雄のお出ましだ!!!!”

”おい、こいつ普通にはじめやがったぞw”

”星の流れた日以来初の配信なのにw”

”平常運転すぎて逆にすごいわw”

”同接、あっと言う間の100万オーバー”

”そりゃそうよw”

”色んな国の言葉が流れとるw”


通称「ダンジョンに星が流れた日」から10日程経過したある日。三崎は久々に配信を始めていた。


この10日間。三崎は首相公邸でごろごろしながらソファーで色々なロマン武器の設計に勤しんでいただけでかなり自由に過ごしていたのだが、もちろん世間は大荒れだった。


まず荒れたのが戦略衛星兵器神の杖の存在。


日本国総理大臣の鷹匠は13か所の特級および1級ダンジョンのスタンピードが鎮圧された直後には神の杖の廃棄を全世界に向けて宣言。


スタンピード完全制圧から1日後には神の杖を大気圏に再突入させ、燃え尽きさせたことでひとまずの問題解決を図った。(なお国連では宇宙条約がどうやら、軍事条約がどうやらと議論が大紛糾した。日本の国連大使はそれは酷い目にあった)


さらに神の杖の廃棄と時をほぼ同じくして日本の領海で新たな島が発見された。しかもその島の地上部分にはモンスターまで確認されたのだ。


一般にスタンピードの発生後には既存のダンジョンが拡張したり、新規ダンジョンが発生することは知られていたが、まさか島全体がダンジョンとなっている新規ダンジョンが発生するなどは誰も想定しておらずこれも世間に大いに混乱をもたらした。


報道規制などもかかっていたものの、八丈島から約300kmと比較的陸地からも近いこともありその島の存在は一夜にして日本中、いや世界中に知れ渡った。


なおその島。日本では現在「鬼ヶ島」と呼ばれており連日連夜様々なメディアを騒がしていた。


そんな中でスタンピードから日本を救った英雄は例の配信以降はまったく露出もなく、政府やダン研から「然るべき時に三崎に会見させる」という趣旨のそっけない広報が出されていたのみだった。


そんな状況の中での突然の配信である。注目が集まらない訳がなかった。


「ちょっと色々あって配信まで時間が空いてしまってすいません。今日はその辺りの事情とかも説明させていただきつつ、今後の方針なんかについても説明させていただければと思います」


”ちょっと色々で済ませるなw”

”まじで待ち望んでいたぞw”

”スタンピードの時の総力戦はツッコミどころが多すぎるw”

”ん?今後の方針??”


「色々コメント頂いているようですがさくさく進めてしまいますね。ということでアルファ。前回の配信から今日までの概要と言うか、あらましを視聴者の皆様にご説明してくださいな」


『承知しました。では視聴者の皆様、ここからは私が説明させていただきますね。まずはスタンピードの直後からです。あの日は神の杖で13か所のダンジョンのスタンピードが鎮圧されるところまでを配信させていただきました』


”だな”

”夜空に流れた13個の星はマジで幻想的だった”

”スタンピードが発生したダンジョンの近くに住んでたんだけど、着弾の直前にサイレンなって、直後に光と地震がすごかったぞw”

”警察関係の人たちから聞いたけどバリアとか防御魔法がなかったら半径数km圏内はヤバかったんじゃないかって”

”けどアレの直撃をくらって数日後には普通な感じになってる各ダンジョンもたいがいだよな”

”改めてダンジョンの異常さというか不思議さを感じたわ”


『あの直後からマスターはぶっ倒れて翌日の昼ごろまで完全にダウンしてました。マスターがダウンした瞬間はさすがに私も周囲の人間も焦ったのですが、単純に心労と過労で緊張の糸が切れて倒れたみたいでしたね』


”おおうw”

”マジで大丈夫かよw”

”そりゃアレだけやれば倒れるわw”


『マスターがダウンしている間に鷹匠総理と林所長の間で話がついたので神の杖の管理を日本政府に移管し、スタンピード翌日の夜には廃棄されたという流れです。なおマスターは昼には復活しておりその日の午後は念のため安静にしてましたね』


六本木ダンジョンの地上部でぶっ倒れた三崎はそのまま首相公邸に担ぎ込まれ軽い手当を受けて安静にされていた。


ちなみにこの時、首相公邸にはダン研 第2課のメンツが招集されており様々なポーションが惜しげもなく三崎に投与されていた。


補足だがダン研 研究開発本部 第2課について説明しておく。ダンジョン内での移動や通信といった探索に不可欠な技術群が第1課によって担保された後に必要とされた技術が「死なない」ための技術だった。


このような背景の中でポーションなどの回復アイテム関連が第2課の代表的な成果であり、現在でも多種多様なポーション類の研究開発を実施しているのが第2課である。


いずれにせよ元々の怪我も大したことがなかったこと、そしてダン研 第2課のおかげもあり翌日にはすっかり調子を取り戻した三崎であった。


『その後も詳細は色々あるのですが基本的にマスターは首相公邸のソファーでごろごろしながら書類を読んだりロマン武器の設計をしたりして今日に至るという感じです』


”その後の詳細が知りたいw”

”首相公邸のソファーでゴロゴロってw”

”急に雑な説明になったなw”

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