第50話
20時21分。六本木ダンジョン地上部開口部付近。
ヤマタノオロチの首が飛び、ヘビィ・キャバルリィが大爆発した光景を見ていた周囲の人たちや配信を視聴していたリスナー達は固唾をのんで砂塵が晴れるのを待っていた。
なおコックピットブロックからの配信は再びブラックアウトしており、周囲を飛ぶ撮影・偵察用ドローンからの映像のみが生きていた。
皆が爆心地を見守る中、急に強い風が吹き、そして
「こちら三崎です。スタンピードを完全に鎮圧しました」
その声とともにコックピットブロックからの配信が復帰する。
爆心地には頭部、片足、片手を喪失したトルーパー試作1号機が転がっていた。
”うおおおおおお!!!!!”
”うおおおおおおおお!!!!!”
”うおおおおお!!!!!”
”うおおおおおおおおお!!!!!”
”うおおおおおお!!!!!”
”うわあああああああ!!!!!”
文字通り日本が、いや世界が歓喜に揺れた。
コックピットブロック内の三崎は頭から血を流していたものの比較的ピンピンしており、ひしゃげたコックピットブロックの前部を蹴り飛ばして機体の外に出てきた。
機体は既にボロボロで使い物にならなかったが三崎は小さな怪我をいくつかしていたものの大きな問題はなく、自身の体を触りながら怪我の有無を再確認していた。
ヘッドセットをつけ直しながら撮影用ドローンを近場に呼び出した三崎はそのまま激闘の後が残る爆心地で
「はい、という訳で改めてヤマタノオロチの討伐完了です。その他のモンスターの発生も今のところ確認できません」
と改めて宣言した。
”やったああああああ!!!!”
”とんでもないものをみてしまった…”
”これはマジで歴史の教科書のるのでは?”
”しかも世界史の方なw”
”都内住みです、本当にありがとう!!!!”
「いやぁ、さすがに今回は何回かダメかと思いましたが…新兵装たちがちゃんと動いてくれてよかったです」
『そうですね、稼働テストもほとんど出来てない状態でしたしね』
「あぁ、アルファもホント助かったよ、ありがとう。これはもう一度やれと言われても無理だわ」
『はい、データセンターの方のサーバーも大分焼き切れました。私の本体の修理も頼みますよ』
「わかってる。ほんとサンキューな。ただちょっと疲れたからさすがに休みたい」
”おつかれおつかれ!!!”
”ひとまず休んでな!”
”今夜は祭りじゃーーーー!!!!”
ボロボロの機体の上で座り込む三崎に、遠くから軍や警察部隊の面々もかけつけてきた。
お互いの健闘を称え合いながらハイタッチをし合う三崎達。そんな素敵な光景を見ながらホッと一息つく画面の前のリスナー達。
だが、悪夢はまだ終わっていなかった。
歓喜の輪を切り裂くように各自の端末から警報音が鳴り響く。
一瞬で警戒態勢を取り戻した三崎たち。
『マスター』
言いよどむ人工知能、という非常に珍しいものを見て驚く三崎。
間違いなく悪い知らせであることを察した三崎の表情をみて周囲の人たちも警戒度をさらにあげる。
「今度はなんだ?」
『大変申し上げにくいのですが…』
「あぁ。言ってくれ」
『三重県の伊勢ダンジョン、高知県の四万十ダンジョン、鹿児島の霧島ダンジョン他複数の特級および1級ダンジョンでダンジョン震が観測されました』
20時23分。日本滅亡の危機が訪れた。
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