第47話

19時53分。コードレッドが発令されてから11分後。


”三崎どうなった…?”

”まだ画面復旧してないよな?”

”うおおおお、怖えええええ”

”ソワソワが過ぎる”


六本木ダンジョン地上部分。そこには市ヶ谷駐屯地から急行した部隊が既に展開を概ね完了していた。


さらに警察組織の全力の避難誘導もあり半径1km以内の民間人の避難も進んでいた。


この時間は間違いなく三崎が単騎で稼いだ時間である。


その三崎の配信画面がブラックアウトしてから約1分。


配信画面を確認していたあらゆる人達が固唾を呑んで画面を見守る中、画面が一瞬ザザッと鳴り


「こちら三崎、これで通信は復旧してるか??」


という声とともに画面が復活した。同時に日本全国の各所から湧き上がる大歓声。


リスナー達のコメント欄の狂喜乱舞は勿論、現場に展開していた部隊や、三鷹のダンジョン研究所 戦闘支援センター管制室でも大歓声が起きていた。


”うおおおおおおおおお!!!!!”

”きたあああああああああ!!!!!!”

”完全に英雄やんけコレw”

”うおおおおお!!!!!!”

”なんかもう感情がついていかないw”


『はい、マスター。通信は復旧しています』


「よし。じゃあ状況を手短に。現在俺は中層にまで退避してきました。先程のミサイル攻撃でモンスターの大半が消滅したようです。ただまだ全滅にまでは至ってないようですが」


そう説明する三崎の様子はボロボロだった。


強化外骨格はかなりの部分が壊れており体の表面が露出している部分もある。対消滅弾の威力の大きさを物語っていた。


「現在偵察ドローンを下層に飛ばしていますが、ダンジョン内の振動をから察するにヤマタノオロチなど一部の超深層級モンスターは健在。さらにその他のモンスターも深層からまだ湧いてきてるようです。ただ勢いは弱くなってきてるのでもう一押しでスタンピードを鎮圧できそうですね」


それを聞いた人々はまだ予断を許さない状況であることを理解し安心していた表情を引き締めつつ、しかし希望をもってその配信を見ていた。


「ただダンジョン内で利用可能な手持ちの武装で、ダンジョンの中でヤマタノオロチや他のモンスターを抑えられる武器が尽きました。なので地上部で決着をつけます」


その一言で特に地上に展開していた部隊の間に緊張が走る。


「俺はこれから中層、上層に地雷や自動機銃なんかの嫌がらせセットを設置しながら地上部分へ退避します。10分ほどで地上に戻ると思うので、その間に地上部は半径1km圏内を無人にして下さい。で、地上部隊の方々は半径1kmの円周部でバリアや防御魔法などを使って流れ弾で周囲に被害が出ないようにお願いします」


三崎からの言葉を聞いた部隊の面々が慌ただしく動き出す。


「ダンジョンの外に出たらデカい武器を使います。これがダンジョン内では動かせないので。俺の砲撃やヤマタノオロチの魔法攻撃が飛び交うと思うので、その流れ弾から街を守って下さい」


ーーー


10分後。20時03分。六本木ダンジョン地上部。


「地上に戻ってきたぞ!」


ボロボロの強化外骨格を途中で破棄した三崎は、その道中で地雷や残っていたあらゆる使えそうな武装をダンジョン内に適当に撒き散らすように設置してきながら全速力で地上へ戻ってきていた。


「アルファ、周囲の状況は?」


『半径1km以内に生体反応なし。部隊は円周部に展開済みのようです。防御魔法やバリアなども確認できます』


都内で半径1kmもの範囲を本当に無人にできるのかと若干疑問に思っていた三崎だったが、その結果を聞いて内心では驚いていた。


きっと警察組織や軍が全力で避難誘導してくれたのであろうと感謝しながら。


「おっけい、じゃあ最後にもうひと踏ん張り全力出しますか。ちなみに配信見てる方向けにですが対消滅弾はさっきの1発しかないので別の手でいきます」


「本当はこれももう少しちゃんと稼働試験してから落ち着いた環境でお披露目したかったんですが仕方がなしですね…アルファ。準備はいいか?」


『はい。データセンターの方の稼働率もほぼ100%ですがいけます』


「じゃあモンスターさんたちが来る前に準備しちゃいますか。アルファ、大型人型兵器トルーパー試作1号機を実体化」


『了解です。量子空間から大型人型兵器トルーパー試作1号機を実体化します』


何もない空間から突如現れたのは高さ約18メートルを誇る巨大な人型ロボット。そのサイズ感はまさしくガ○ダムそのものであった。


”うおおおおおおおおお!!!!!!!”

”ガ○ダム!!!!!!!”

”マジで大型のやつきた!!!!????”

”もう訳がわからないよw”

”え、これ模型じゃなくてガチで動くの?www”


トルーパー試作1号機と呼ばれた大型人型兵器の胸の辺りが開き、そこから垂れてきたウィンチを使って三崎はその巨体のコックピットに乗り込む。


ちなみに配信画面はコックピット内の様子と上空数か所からのマルチアングルに切り替わっており、リスナー達は大興奮状態だった。


「アルファ、周囲の魔素濃度はどうだ?」


『スタンピードの影響で地上部にも関わらず非常に濃度が高いです。これならアレも行けます』


「わかった。じゃあトルーパー支援兵装、統合型火力追加兵装および多目的飛行モジュール、ヘビィ・キャバルリィも実体化」


『承知しました。ヘビィ・キャバルリィも実体化します』


六本木の空に高さ40メートル、幅60メートル、砲身部も含めると全長150メートルにもおよぶ巨大な構造物が現れた。


ぞの構造物の巨大さに目が奪われるのも勿論だが、それは空に浮いていた。全ての人が唖然としている中で三崎はさらに


「よし、じゃあトルーパーとヘビィ・キャバルリィをドッキング」


『承知しました。ドッキングします』


出現してから佇んでいたトルーパーがついに動き出す。


三崎の操縦に従い一歩踏み出したその巨体は、続けてスラスターを噴出させて空に飛び上る。


そのままヘビィ・キャバルリィに近づくと、その大型構造物の中心部にドッキングした。


『各モジュールのドッキング完了。これでいつでもいけます』


「よっしゃ、じゃあいくか。正真正銘、今夜のパーティーラストダンスだぜ!!!!」


”これはもうなんと言って良いのかわからないw”

”これは試作1号機と言うか試作3号機なのでは?w”

”完全にデン○ロビウムですねw”

”元ネタはわかる、元ネタはわかるだけど現実で再現していいやつじゃないだろw”

”もう意味が分からないw”

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