第42話

ダン研での例の会議からおよそ二週間後。


後に「ダンジョンに星が流れた日」と呼ばれ、ダン研と三崎の名を世界に知らしめることになる1日がいつも通りにはじまった。


その日、三崎は西原とのコラボ配信のために六本木ダンジョンに向かっていた。


前回の第4回配信からはやや時間が空いたが、その間に西原とのコラボ配信の調整や広報部長や古賀との真面目な打ち合わせを済ませ、さらにダンジョン内のモニタリングやら計測やらでてんやわんやの状態だったため当初の想定よりも配信日が遅れてしまっていた。


もともと三崎と古賀が考えていた西原とのコラボ配信は、西原が下層探索者になりたての元中層探索者ということで下層での基本的な注意事項や必要な物資などを三崎が西原にレクチャーする形を想定していた。


しかしダン研での例の会議を経て三崎は「配信を通して探索者や一般的な人々に対して適切なダンジョンの危険度やスタンピードが発生した場合の対処法を伝えること」というミッションを林所長に与えられていた。


若者や探索者間で人気の西原とのコラボ配信はネタとしてちょうどよかったこともあり、広報部長、古賀、三崎の三人はこの配信で「仮にスタンピードが発生したらどう行動すれば良いのか?」をテーマに決めた。


そしてこのテーマを扱うために首都直下型の特級ダンジョンである六本木ダンジョンがその舞台に選ばれていた。


ーーー


「リスナーのみなさん、こんにちは。ダン研 オフィシャル 広報チャンネルです。大変お待たせいたしました。第5回目の配信を開始させていただきますね。本日は六本木ダンジョンからお送りさせていただきます」


”おつー!”

”待ってました!”

”待ちくたびれたw”

”焦らしやがってこのやろう!w”


「元々の配信日から遅れてしまってすいません、大変申し訳無いのですがダン研側の都合でこのタイミングになってしましました。改めて配信を楽しみにしていただいていた方々には申し訳ないです。そして今回のコラボ配信の方にもすでに色々ご迷惑をおかけてしているのですが… まぁそれは置いといてさっそくお呼びしましょう。今回ご一緒していただくのは西原さんです!」


「みなさーん、こんにちはー!ダンジョン配信者の西原ホマレです!今回はダン研さんのご厚意でコラボ配信に参加させていただくことになりました。よろしくおねがいします!」


”ホマレきた!”

”何気に最近のホマレはダン研との絡みが多いよね”

”元々三崎がバズったのもホマレの配信に映り込んだのがきっかけだしなw”


三崎と西原は第2回目のダン研会議室からの配信以来のタッグということでまず最初は当たり障りのない雑談パートからスタートする。


西原が引き続きソロで下層にたまに少しだけ挑戦していることや、話は少し逸れてダンジョン関連の仕事を考えていて就活でもその手の仕事を探そうとしていることなど。


そして開始から5分がすぎた頃に場が温まってきてことを感じた三崎は、


「はい、ではそろそろ本日の本題ということでダンジョンの中に入っていきましょうか。今日は六本木ダンジョンですがこのまま転移門を利用して下層まで一気に行きましょう」


そのまま三崎と西原は六本木ダンジョンに入り、転移門を利用することで下層にまで来ていた。


「改めて今回のテーマは「仮にスタンピードが発生したらどう行動すれば良いのか?」です。少し不穏なテーマではあるのですが、皆さんもご存知の通り最近ダンジョンやモンスターの活動が活発化しているので注意喚起も兼ねてこのテーマとさせていただきました」


「実際私も変異種ドラゴンに遭遇して死にかけてますからね… 割りと冗談抜きでこの手の話はしっかり知りたいと思います」


三崎の振り出しに対して西原は以前自分が遭遇したドラゴンを思い出したのか、若干顔色を悪くしながらコメントしていた。


「それと三崎さん、最近はやっぱりモンスターの活動が活発化しているんですか?」


「ご質問ありがとうございます。そうですね、ダンジョン庁などからも正式な告知が出ているかと思うのですが、平常時と比較して明らかにモンスターの発生頻度が高いですね。それに変異種や希少種などの個体との遭遇報告も増えています」


”なんとなく嫌な感じ”

”そういえば前の三崎研究員の配信でもドラゴン種のフルコースとかやってたなw”

”やっぱアレおかしかったのか…”


「その辺りの状況も踏まえて本日は西原さんやリスナーの皆様に、スタンピードなどの異常が発生した場合にどのような行動を取れば良いのか?をレクチャーしていければと思います。なお今回の一連のレクチャーは一人の深層探索者としても、ダンジョン技術研究所の研究員としてもオフィシャルな見解になるので後からダン研の公式ホームページからも正式なプレスリリースを出させていただく想定です」

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