第37話
「アルファさんや」
『どうされました、マスター?』
「なんというか、俺が組んでた拠点防衛システムから数段進化している気がするんだけど…」
あまりにも手際の良いオーガ三体の片付け方を見ていた三崎は絶妙に微妙な表情をしていた。
『そうですね。マスターが初期に構築されていた防衛システムは人間の探索者との併用だったかと思います』
「うん。そうだよね。そもそも完全自動化とかはまだしてなかったよね」
『はい。当初は施設側はドローンやセンサーでの警戒がメインで、モンスターを発見した場合は小型のドローンで牽制攻撃をしつつ可能な限りモンスターが施設に近づかないようにしつつ、バリアを貼って耐えることがメインでした。技術評価本部の探索者の方が増援に来るまで待つという状態でしたね』
アルファの説明によると当初の拠点防衛システムでもそこそこ機能していたらしいが、ファクトリーが今後もどんどん大型化していくこと、さらに技術評価本部所属の探索者たちが別件で稼働状況が厳しくなってきたことから改善を計画したらしい。
『そのような状況下だったので、3ヶ月ほど前にマスターに改善提案と許可申請を出していますよ。そこでOKいただけたのでファクトリーの設備を稼働して拠点防衛システムを強化しました』
アルファに言われて、そういえば数ヶ月前にアルファからの申請で拠点の強化がお願いされていたな…とやっと思い出した三崎。
アルファからの提案は基本的には文字ベースの書類であり、かかる資材の量や納期、コストの説明が主だったため現物を目にするまでまさかこんなにヤバげなものが出来上がるとは想定していなかった三崎であった。
「お、おう。もちろんその申請は覚えているしOK出したのも覚えている。ただちょっと俺の想定以上だったというか、俺がちゃんと理解できてなかったというか…」
そう言って暫く思案した三崎だったが、
「よし、なら今後の申請や提案に関して追加オーダーを出しておくわ。可能な限り3Dモデルやイメージ動画なんかを作成して、今までのフォーマットに追加する形で提出してくれる?それを見て俺の方で判断するようにする」
『承知しました。私からの今後の申請や提案にはビジュアル関連の資料や動画も添付するようにしますね。…ちなみにマスター。このように仕事を増やされた場合、人間であれば悪態のひとつやふたつをついた方が良いかと思うのですが、私もマスターをディスった方が良いでしょうか?』
「ねぇ、急に微妙な性能のAIみたいなこと言わないでくれる?完全に俺のことからかってるでしょ」
『いえ、そんなことは。提出資料が増えて正直ちょっと面倒くさいなーとか、提出した資料はちゃんと全部目を通すんだろうな?なんてAIの私は全然思ってないですよ』
”相変わらずのアルファちゃんクオリティw”
”確かに仕事で提出書類が増えたらいらっとするよなw”
”提出フォーマット増えてもどうせ読んでないやろ!とかは頻繁に思うw”
「はいはい、ちゃんと見るに決まってるだろ。そもそもアルファの制御権やアウトプットについては林所長とか研究開発倫理審査委員会からも公式に指示が出てるからな。それ守らないとガチで所長に怒られるからな」
”林所長w”
”三崎の上司とかかなり苦労してそうw”
”そしてさらっと出てき研究開発倫理審査委員会w”
”アルファちゃんの制御権w”
”AIの反乱とか暴走もある意味ロマンだよね?”
”おいバカやめろw”
”この流れでそれは洒落にならんw”
三崎とアルファがデータセンター・ファクトリーの外でこんなやり取りをしていると再びサイレンが鳴り、大型ドローンの編隊が飛び立ち、施設にバリアが張られ、数分後にドローン編隊がモンスターだったものを抱えて帰還し、ファクトリーに納品し、そして大型ドローンが建物の上部から格納庫へ消えていった。
その一連の流れを再び見ていた三崎は半笑いになりつつ
「なぁアルファ、ちなみにこれって最近ではどれくらいの頻度でやってんの?」
『最近はモンスターの出現頻度も上がっているので、1時間に数回の頻度で大型ドローンを出していますね。基本的には一方的に殲滅できていますが、たまに変異種や上位種も出てきてバリアまで攻撃も受けることがあります』
「ということは1日で50体近いモンスターを狩り続けてるってことか?」
『はい、そうなります。元々は素材の回収なんかはそこまで期待していなかったのですがかなり良いペースで素材も集まってきていますよ』
「なるほど、最近は配信の方とかに夢中でデータあんまり確認してなかったけどちゃんと確認するようにするわ」
”ドン引きしている三崎という珍しい絵面w”
”しかし冷静に考えて1日50体を狩り続けてるってヤバイw”
”物量が半端ないなw”
”しかも基本的に下層モンスターだろ?”
”え、まじでAIの反乱とかないよね?w”
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