第36話

三鷹ダンジョン上層からスタートした第4回目の配信では、三崎がさっそく転移門を利用することで一瞬のうちに下層に到着していた。


「みなさまご存知の通り主要な大規模ダンジョンの各階層には転移門が設置されていますが、三鷹ダンジョンは試験用の転移門がいくつか設置されています」


非常に便利な転移門だがコストや管理の課題から全てのダンジョンに設置されているわけではない。


話はすこし逸れるが、ダンジョンはその属性や難易度、素材の価値などに応じて等級がつけられている。


最難関の特級ダンジョンからはじまり、1級ダンジョン、2級ダンジョン、3級ダンジョン、そして準級ダンジョンである。


法律上のイメージとしては河川などと同じような扱いとなっている。


1級河川は国、2級河川は都道府県が管理してるが、ダンジョンも概ね同じような状態となっており、特級および1級は国が、2級以下は都道府県が管理している。


話は戻るが転移門については、現在のところは国が管理する特級および1級ダンジョンのみに配置されている。


さらに特級、1級ダンジョンの中でも基本的には上層、中層、下層の各エリアのみに配置されており深層や超深層には転移門の配置がない。


これは深層や超深層にアタックできるような探索者の数がそもそも少ないことや、レベルの低い探索者達が無茶な深層アタックを防ぐための処置である。


転移門を実際に利用したい場合は、自身の探索者にカードを転移門のリーダーにかざすことで移動することができるようになる。(仕組み自体はSuicaのようなもので使い勝手は非常に良い。)


そのような転移門の基礎的な技術の研究開発を実施しているのがダン研 研究開発本部の第1課であり、ここ三鷹ダンジョンは非常に重要なテストフィールドとなっていた。


転移門に関する基礎的な話をリスナーに説明しながらぷらぷらと下層を歩いていた三崎だったが、


「お、見えてきましたね。アルファ、カメラをあっちに向けてくれ。あとそういえば撮影用ドローンを複数機にしとくか。2台追加で展開もよろしく」


『承知しました。撮影用ドローンを2台追加で展開します』


三崎が指を指した方向にカメラが向いたところで


”おおお!?”

”思っていたより全然でかいw”

”もっとこじんまりした建物想像してたw”

”ガチのデータセンターと工場じゃないかw”


リスナーの想像を超える規模の建造物がダンジョン内に鎮座していた。データセンター部分は地上部3階建て、地下1階、延床面積10,000平方メートルのかなりしっかりしたサイズの建物となっていた。


さらにファクトリー部分は地上2階建てとなっており、こちらもまた延床面積10,000平方メートルを超えるサイズの建造物となっていた。しかも現在進行系で規模が拡大されている。


「じゃじゃーん。ということでデータセンターとファクトリーです!データセンターの方はサイズのイメージ的には駅前の商業ビルと同じくらいの規模感ですかね」


「データセンターとしてはいわゆる住宅地型データセンターに近いと思います。三鷹市にもたくさんデータセンターありますよね。あれとだいたい同規模です」


「そしてファクトリーの方も延べ床面積はデータセンター部分と大差ないですが、フロア数が少ないので1階1階が広めです。さらにこちらの方は日々増築している状態ですね」


三崎が紹介したファクトリーの方では、無人の建機が数台稼働しており整地をしたり柱を立てたり、コンクリートらしきものを流し込んでいたりしていた。


”すごい、無人で建機が動いてるw”

”ダンジョン内で工事中ってシュールな絵面だなw”

”こうやって実物を見せられるとより違和感が際立つよなw”


更に三崎がデータセンターやファクトリーの外周をぷらぷらしながら建物の概要を説明していると


『マスター、モンスターの接近を検知しました。いつも通り対応しても??』


「お、ちょうど良かった。対応任せる。せっかくだから撮影用ドローン2台も上空から撮影しておいてくれる??」


『了解です。対応進めます』


三崎とアルファのやり取りのあと、建造物の外壁に取り付けられていたサイレンが鳴り、スピーカーからアルファと似たような声で『モンスターの接近を検知しました。迎撃モードに移行します』というアナウンスが流れた。


そのアナウンスの直後、データセンター最上階の屋根が開いたところから普段三崎が利用しているファ○ネルよりも大型で概ね人間サイズ程度のヘリ型ドローンが10体飛び出してきた。


そしてそのドローンがモンスターの方向に向かう中、建物本体の方にはバリアが周囲に展開されていた。


データセンター・ファクトリーに近づいてきていたのはどうやら3体のオーガだったらしく、三崎の偵察用ドローンにもオーガと大型ドローンが映っていた。


10体の大型ドローンがするするとオーガの集団に近づいていくと、ある程度の距離になったところでいきなり各機体の下部からビームが連射された。


そしてオーガたちはなすすべも無く敗れ去った。


大型ドローンたちは仕留めたオーガの素材を回収し、何事もなかっかのように編隊を組んで戻ってきたのち、回収した素材をファクトリーに搬入した後、データセンター最上階へ帰還した。


その一連の様子を撮影していた三崎の動画を見ていたリスナー達は色んな意味で慄いていた。


”これはむしろ要塞なのでは?w”

”無駄な動きがなさすぎてもはや怖いw”

”オーガさんが一瞬でw”

”しかも素材をしっかり回収してたしなw”

”すべて自動化されてるのが怖すぎるw”

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