第32話

三崎が3回目の配信をして、そして内藤と生田の超深層への強行偵察を支援してから数日後のダンジョン研究所。


三崎の研究室内にて。


『マスター。さすがに勤務時間中にソファーでだらけるのはいかがなものかと』


「大丈夫。ちゃんとPadで書類読んでるから」


三崎は自室の応接セットで盛大にだらけていた。


先週の土曜日のその後。内藤と生田と合流してからは深層を抜け、下層に戻った段階で転移門を利用し一気にダンジョン入口付近まで戻った3名はそのままダンジョンを出た。


そしてダンジョン出入り口で待機していた警察のバスに回収された三人はその日はそのまま現地の警察が手配してくれた宿に宿泊し、翌日にダン研にもどった。(なお日曜日の話である。)


そのまま3名は林所長、加賀本部長に事の次第を報告し、今回内藤と生田が撮影してきた超深層の各種動画や、魔素濃度の履歴などを研究開発本部の主に第3課からなる臨時プロジェクトチームへと引き渡した。


そこまでやってやっと開放された3名は打ち上げと称して三鷹駅付近でささやかな飲み会を開催し、ダン研の不規則勤務にやや愚痴を吐きつつ、今回は割りと真面目にやばそうだからもうひと頑張りしますかと言いつつ比較的早い時間帯に解散。


月曜、火曜を振替休日で休んだ三崎だが、水曜に久々にダン研に出勤してきて午前中から自室でだらけながら資料を読んでいた。


「なぁアルファ」


『なんでしょう??』


「深層アタックって意外と疲れるんだよ」


『まぁそうでしょうね』


「しかもその後もお仕事ですよ」


『頑張ってましたね。偉いですよ』


「あの日は配信が13時からだったから、なんだかんだでダンジョン自体には11時には入ってたからな。そこからダンジョン出たのが23時ころだぜ。まるまる12時ガチで活動するのは流石につかれるのですよ」


『そうですね。言われてみれば確かにかなり長時間ダンジョンに潜っていましたね』


「しかもだぜ?そのままダンジョン出たら警察のバスで宿まで強制送還されて、翌朝叩き起こされて三鷹まで戻ってくるこの強行軍」


『たしかに見方によっては何かやらかした人のスケジュールですね』


そんな三崎のしょうもない愚痴にアルファがやれやれという雰囲気で付き合ってあげている中、部屋のドアがノックされた。


「すいませーん、三崎先輩、古賀です。入っても良いですかー??」


「おー、古賀さんかー。全然いいぜーどうぞー」


相手が古賀だとわかった三崎はソファに寝転がった姿勢を変えずにそのままOKをだす。そして部屋に入ってきた古賀が、


「先輩、なにやってるんですか」


とやや呆れた表情のジト目で三崎に声をかけてきた。


「見たらわかるだろ。書類を確認してるんだよ」


そんな三崎の舐めた発言に「はぁー」とため息を吐きつつ、対面のソファに腰掛ける古賀。


「まぁ良いですけど。ちょっと配信の件で相談があるんですけど30分ほどお時間いただいても良いですか?」


「ああ良いぜ。今日の午前中は他に打ち合わせとかも無いからな。ところで古賀さんや」


「なんです?」


「30分くらいお話するならコーヒーが欲しくないかね??」


「はぁー…はいはい、わかりましたよ。買ってくるからちょっと待っててくださいね」


「お、さすが話がわかる!!机のうえに小銭あるから二人分買ってきてくれ。俺はブラックで」


「わかりました。もう、ほんと普段はしょうがない人ですね」


と小言を言いながら三崎のデスクの上に転がっていた小銭を拾い、コーヒーを買いに行く古賀。


『マスター』


「なんだね、アルファ君」


『後輩の女性をパシらせて飲むコーヒーはさぞ美味しいんでしょうね?』


「…うむ。さすがに俺もこれはいかんと感じ始めていたところだった。反省している」

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