第30話
「よし、じゃあこれで配信は切れたかな?」
『配信の終了を確認できました。通信回線を公開回線から秘匿回線へ切り替えも完了しました』
富士五湖ダンジョンでの第3回配信終了後、三崎はそのまま深層エリア最奥、火山エリアに残っていた。
「さて。じゃあもう少しお仕事しますかね。しかし林所長も南野課長も人使いが荒い」
『まぁマスターの性能を考えると今の状況下で遊ばせておく余裕がないことも理解できますけどね』
「はいはい。そういう正論は良いんだよ」
などと三崎とアルファがだべっていると、
「悪い、またせたな!」
「すいません。お待たせしました」
と2人の探索者が三崎の前に現れた。
「いえいえ、少し休憩も必要だったので構いませんよ」
「悪いな。しかしまぁ、お前の配信もちょいちょい見させてもらっていたが相変わらずデタラメな強さだな」
三崎と話をしているのは内藤誠一と生田鈴。ふたりともダン研技術評価本部所属の7人しかいない深層探索者であり、三崎の友人の佐野恵太郎と同じくダン研セブンと呼ばれている実力者である。
「またそんなこと言って。内藤さんだってドラゴン種くらいは軽く片付けられるでしょうに」
「まぁ確かに一体一体は勝てるのは間違いないけどな。けどソロで4回連続でドラゴン種との戦闘はさすがにきついぜ。生田はどうだ?」
「私も一体ずつなら勝てますけど、連戦はきついですね」
「内藤さんも生田さんもまたそんなこと言って。まぁそれはともかくミッションの確認をしましょうか。アルファ、頼めるか?」
『承知しました。今回のミッションは林所長、および加賀 本部長の連名での指令書となっています。ざっくりいうと富士五湖ダンジョンの超深層エリアの強行偵察ですね』
林所長は言うまでもなくダン研の長であるが、加賀 本部長とはダン研 技術評価本部の長であり元深層探索者の実力者でもある。
アルファが説明するところによると、最近の変異種モンスターの異常発生や魔素濃度の上昇を受けてダン研や軍などが各地のダンジョンの調査を実施しているらしい。
その一環として佐野は九州へ遠征し現地の軍と協力して九州エリアの各ダンジョンを調査している。
そしてここにいる内藤と生田は富士五湖ダンジョンの超深層エリアの調査担当となったらしい。
技術評価本部の深層探索者たちが超深層を強行偵察するにあたっては、深層エリアまで彼らをキャリーする探索者が選ばれる。
今回の富士五湖ダンジョンは表向きは配信するためという理由での三崎の深層アタックであったが、実はキャリー役として深層エリアまでのモンスターを片付けるという役割も課せられていた。
したがってダン研としては一粒で2度美味しい三崎の深層ソロアタックとなっていた。
「まぁそんな訳で僕がここまでキャリーしましたけど、お二方は体力とか装備は大丈夫ですか?」
「あぁ。俺は大丈夫だ。三崎のおかげで戦闘らしい戦闘もなくここまでこれたしな」
「はい。私も問題ありません。というかここまで戦闘が少なく超深層まで来られたのは初かもです。次からもキャリー役を三崎先輩にお願いしたいくらいです」
「そんなに褒めても何も出ないですってば。それはともかく、このあとの確認を進めましょう。僕はこの深層エリア最奥にこのまま待機。救護エリアとして拠点を確保しておきます」
「あぁ、ここまで連戦させて悪いが頼むぜ。俺と生田はこのまま超深層に強行偵察にアタックする。現在18時だから22時頃にはここに戻る想定で動く。超深層は通信の精度も悪いしダンジョン内通信ネットワークもあまり整備されてないから、簡易中継機も設置しながら進もうと思う」
「今回の目的はあくまで強行偵察だからな。とにかくモンスターとの戦闘は避けながら時間の許す限り超深層の偵察を優先する。もし仮に超深層級モンスターと遭遇・接敵したらそのまま逃げるぞ。いいな生田」
「はい、大丈夫です。今回は三崎先輩が作成してくれたドローン型の簡易中継機やアイテムボックス(小)もあるのでふだんに比べても大分楽ですよ」
そう言って生田が腰のポーチからそのサイズに合わないドローンを取り出した。
そのポーチこそ三崎が先行量産型として作成してみたアイテムボックス(小)である。
製造難易度や制御の難しさから三崎自身も試行錯誤している段階ではあるものの、暫定的な先行量産型としてダン研所属の深層探索者たちに限ってアイテムボックス装備が配布されていた。
ちなみにこのアイテムボックス(小)の現在のコストは余裕で都内で上等なマンションが買えるレベルのものであり量産化までにはまだまだ道のりは遠い。
容量に関しても一般的な行軍用の背嚢(バックパック)の50リットルから60リットル程度の容量しかないが、それでも探索者たちにとってはとても価値がある装備となっていた。
特にいつとんでもないモンスターと遭遇するのかわからない深層探索者たちにとっては身軽でいられることはとてつもなく大きい価値がある。
そのため今回の各地の大型ダンジョン超深層エリアへの強行偵察にむけて三崎が突貫工事で準備した。
「よし、じゃあ準備はこんなもんでいいかな。じゃあ三崎、拠点の確保は頼んだ」
「先輩、行ってきます」
「はい。お二人共気をつけて!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます