第25話
約1kmからの超遠距離攻撃により一撃で爆散したウインド・ドラゴン。遠くからその破片が地上にバラバラと降り注ぐ様子を確認していた三崎は、
『マスター、ウインド・ドラゴンの生体エネルギー消失を確認しました』
「おう、うまくいったな」
と非常にドヤ顔だった。散々圧倒的なロマン武器を披露してきた三崎だったが、さすがに超遠距離攻撃については上手くいくかどうか半々という手応えだったためウインド・ドラゴンを一撃で仕留めたことにとても大きな手応えを感じていた。
”ウインド・ドラゴンが一撃で…w”
”もう何見ても驚かないつもりだったけど、この距離はやばいw”
”1kmからの狙撃で、しかもドラゴン種を一撃ってw”
”パワードフォームもスピードフォームも圧倒的な感じあったけど、マジックフォームはそれ以上に意味不明w”
覇王弓を手に持ったまま、ウインド・ドラゴンの残骸の落下点へ周囲を警戒しつつ進み、そしてそのまま素材や魔核の回収を続ける。
「爆散したときはやりすぎたかと思ったけど、ちゃんと素材がのこっててよかったわ」
『そうですね、今回撃墜したウインド・ドラゴンはどうやら一般的なウインド・ドラゴンよりも大型だったみたいです。そのおかげで素材も魔核も無事のようですね』
”大型のウインド・ドラゴンって階層主レベルの化け物モンスターなのでは?w”
”ウインド・ドラゴンさん、まったくいいところ無く一撃で消滅するw”
”のんびり空飛んでたらいきなりあの攻撃だもんなw”
”むしろドラゴンさんが不憫w”
”それなw”
「よし回収完了っと。ではリスナーの皆様、また少し休憩してから今回最後の火山エリアにアタックします」
マジックフォームのまま草原エリアを少し進み、見つけた大木の木陰にバリアをはって安全圏を確保した三崎は強化外骨格をパージして休憩を取りつつマジックフォームについての説明をしていた。
「説明するまでもない気がしますが、マジックフォームは遠距離攻撃、魔法攻撃に特化したフォームですね。周囲からの魔素を取り込む力を魔素変換効率と言うのですが、それを極限まで上昇させたフォームです」
「なので魔法攻撃や、魔法を付与した遠距離攻撃については抜群の性能を発揮します。一方で魔素変換効率を上げるために装甲が複雑な機構になっていて防御力が非常に低いです。要するに紙装甲ですね」
「防御力が低いことに加えて繊細な機能とかパーツを多く利用しているので格闘戦などの近距離戦も非常に苦手です。多分ですけどドラゴニュートとやった時の30体組手みたいなことをしたらほとんどの機能が壊れるような気がします」
”繊細すぎるw”
”けどそれを補って余りある遠距離攻撃能力だよね。”
”これまで見た3つのフォームの中では実は一番実戦向きなんじゃない??”
マジックフォームに関する三崎の説明を聞いているリスナー達もそれぞれ思い思いに各フォームのメリット・デメリットをコメントしていた。
「そうですね、状況にもよるかなと思うのですが、真面目にパーティー組んでダンジョンアタックするならマジックフォームが一番良いかもしれないですね。というかパワードフォームとスピードフォームが共に短期決戦型というか、色々と使い所が難しいので」
「とは言っても実はマジックフォームにも結構大きな欠点があるんですよ」
”お?”
”欠点?繊細ってこと?”
”さっきの戦い見てる感じだとそこまで悪い感じしなかったけど?”
「それはですね、おカネです」
今まで圧倒的な能力のロマン武器を壊れることも厭わず使いまわしてきた三崎からまさかコストの話が出てくるとは思ってなかったリスナー達は、
”まさかのここにきておカネw”
”今までも相当なコストぶっ込んできてるはずだけど…w”
”ということはそれらを上回るとんでもコストがかかるフォームなんじゃね?w”
と若干の困惑と好奇心が刺激されている様子だった。
「確かにコメントいただいた通り他のロマン武器とか強化外骨格もコストは結構掛かってるんですけどマジックフォームはマジで一桁違うくらいの感じです」
「何におカネがかかってるかと言うと、魔素変換効率を上げるための装甲に結構色々なレア素材を使ってます。それからさっき使用したダイアモンドアローなんかも、ダイアモンドタートルの素材を加工して作成するのでぶっちゃけめちゃくちゃレア装備です。しかもあの矢、爆散するので使い切りの装備です」
”確かにそもそもダイアモンドタートル自体が変異種でめちゃくちゃ珍しいよなw”
”しかも使い切り装備とかw”
”冷静に考えると値段を聞くのも恐ろしいわw”
この話の流れで三崎のロマン武器のおカネの出処の話になった。前提としてダン研職員は公務員扱いなので、その給料は超高給取りという訳ではない。(ただし民間企業や外資系からの引き抜きを阻止するためそこそこの給料になっており、採用倍率は非常に高い。)
なので三崎は自腹でロマン武器のコストを賄える訳が無いのだが、各研究員に付与される研究費も常識の範囲内の金額である。
そこで彼が普段利用しているのは素材買い取り制度であった。一般的な探索者であれば探索の結果得た素材をダンジョン庁が運営する買い取り施設で売却して収入を得る。
ただしダン研職員などの公務員は副業規定が存在し、一般的な探索者と同じように素材を売却することが制度上制限されている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます