第24話

スピードフォームの説明や双銃剣の説明をしつつ暫く休憩を取っていた三崎だったが、手元の時計を確認すると


「よし、それじゃあそろそろ動きますか。次は平原エリアに向かいます」


そういうと強化外骨格を装着しないまま動き始める。


”お、また生身で動く感じ?”

”探索者は普通は生身なんだけど逆に違和感あるなw”

”まぁ言うて深層探索者だからな、先程の集団戦みてても普通に強い。”


などなどコメント欄の賑わいを手元の端末でたまに確かめていると早速


『マスター。約1km先にモンスターを検知しました。さらに飛行型もその先に補足しました』


「お、ナイスタイミング。しかも飛行型も来ましたか」


『はい、地上のモンスターはウルフ型の上位種、飛行型はおそらくですがウィンド・ドラゴンかと思われます』


”またもやドラゴン!”

”さすが深層、こんなにドラゴンって出てくるもんなんだw”

”岩石エリアのアース・ドラゴン、湖エリアのドラゴニュート、そして平原エリアのウィンド・ドラゴンw”

”富士五湖ダンジョンのフルコースやないかw”

”ドラゴン種3連戦w”


リスナー達の盛り上がりを確認しつつ三崎は


「よし、じゃあ早速次のフォームいきましょうか!アルファ、強化外骨格 マジックモード スタンバイ!」


『Ready! Set!』


そしていつものようにアルファが無駄に良い発音の英語で応える。そして、


「変身!!!!!」


そこには緑色の強化外骨格を纏った三崎が立っていた。さらに続けて、


「アルファ、マジックフォーム専用兵装、覇王弓」


『了解です。アイテムボックス起動、マジックフォーム専用兵装、覇王弓を実体化』


三崎の手には身長を超えるサイズの約2メートルほどの弓が握られていた。


”おお!今度は遠距離戦用のフォーム!”

”斬艦刀、双剣に続いて弓とはわかっているw”

”これはまたぜんぜん違うテイストで楽しみ!”


「このままモンスターを倒しても多分皆さんに見えないと思うので。アルファ、偵察用ドローンを3機射出。敵モンスター周辺にそれぞれ1機づつと、戦場全体を俯瞰できる感じで1機配置しておいてくれる?」


『了解です。偵察用ドローン実体化。射出完了。リスナーの皆様、画面を4分割しました。お好みの画面を選択するとその画面が最大化されるのでご確認ください』


”至れり尽くせりの視聴体験w”

”ワールドカップかよw”

”何気にマルチアングルの配信は初かも?”

”お。ほんとにウルフいた。”

”ドラゴンも結構高いところ飛んでるのな。”

”戦場全体を俯瞰できる画像もこれはこれで面白いアングルやね”


「よし、じゃあ早速やりますか」


そういうと三崎はまず大きな矢を実体化させ弓につがえた。


「アルファ、狙撃モード起動。照準補整を頼む」


『了解しました。狙撃モード起動。照準補整を実施します』


三崎の言葉に応える形で、三崎の仮面の右目の部分にホログラム上のスコープが出現し、さらに矢じりのすぐ前にも魔法陣が出現した。


『対象、ウルフ型。照準合いました。いつでもどうぞ』


「よし、じゃあまずはひとつ」


そう小さく呟くと、息を静かに吸い、そして静かに息を吐き出すと同時に矢を放つ。放たれた矢は真っ直ぐに平原を駆け抜け、ウルフ型モンスターを貫いた。


”すげぇ、この距離を一撃w”

”先程までの戦いと違ってめちゃくちゃ静かだけど怖いw”

”ウルフの上位種ってこんな簡単に狩れるもんなの?w”


コメント欄の盛り上がりを他所に三崎は


「調子も悪くないな。じゃあこのまま行くか。アルファ、ダイアモンドタートルの甲羅から加工した矢をくれ」


『了解しました。特殊矢、ダイアモンドアローを実体化しました』


アルファが実体化したのはいつぞやのダイアモンドタートルから採取した甲羅から加工した特殊な矢だった。そしてその形状は、


”これは矢というより剣なのでは?”

”おいまさかこいつ…!”

”まじかよ、現実で見られるなんて…!”


一見すると剣に見える特殊な矢を覇王弓につがえる三崎。そしてその体勢のまま矢に膨大なエネルギーをチャージしていく。


ダイアモンドタートルは魔法攻撃を無効化するが、正確に言うと無効化ではなく甲羅にエネルギーを溜め込むことで魔法を無効化している。


その特性を活かしたのがこの特殊な矢。エネルギーを溜め込むことが可能になりとんでもない破壊力を発揮することができるようになった。


矢にエネルギーを充填している中、さらに続けて


「アルファ、引き続き狙撃モードと照準補整を頼む。更に射出速度増加のため加速用魔法陣を10枚展開」


『了解しました。マジックモード最大出力。照準補整完了。加速用魔法陣の展開も完了しました』


三崎がまとう緑色の強化外骨格が淡く発光をはじめ、弓に番えた矢がバチバチと輝きだし、そして構える弓矢の前方にはガードレールのように輝く魔法陣が10枚重ねで展開されていた。


「目標、ウィンド・ドラゴン。一撃で決めるぞ」


『了解です。目標ウインド・ドラゴン補足しました。ロック完了。いつでもどうぞ』


対象との距離は1kmを超える。さらにウィンド・ドラゴンは悠々と飛んでいた。そんな相手に対して


「ふっ」


っと静かに息を吐き出すと同時に矢を放つ。矢は凄まじい光量と轟音を撒き散らしながら空を超え、無防備なウィンド・ドラゴンに襲いかかり、そして大爆発を引き起こした。

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