第23話

「ということでパワードフォームに続く2つ目のフォームチェンジはスピードフォームでした!」


30体ほどのドラゴニュートが倒れている湖畔を背景に、先程までの激闘が嘘のように静寂が広がる中で三崎はポーズを決めながらリスナーたちに語りかけていた。


”最後がとんでもなさすぎるw”

”ガチで一瞬で15体くらいのドラゴニュートの首が飛んだぞw”

”こちら画像解析班。早すぎて超スローにしても飛び飛びでしか映ってないw”

”スピードフォーム、めちゃくちゃ強いのでは?”


「さて、また素材なんかをさっさと回収してから安全圏に離脱したいと思いますので、質問なんかはまた追って対応させてくださいね。ということで少々お待ちください」


”おk”

”おk”

”おk”

”おk”

”おk”


三崎がそう言って素材の回収に向かおうとすると、彼の手元にあった双剣の刀身がボロボロと欠け始めた。


「げ」


『マスター、双銃剣ですがこれはもうダメそうですね。高周波ブレードはやはり実用性を考えるとまだまだ改善の余地がありそうです』


「確かになぁ。切れ味めちゃくちゃよくなるけど刀身がまだ持たないか…。このまま劣化パターンの解析にかけるから収納しといてくれる?」


『了解です。あとスピードフォームも解除した方が良さそうです。スラスターがもう少しで焼き切れそうですね。加えて各関節の保護機能ももう少しで破断しそうです』


「げ、スピードフォームの方もか。とりあえず強化外骨格もパージで」


『了解。強化外骨格もパージします。ニュートラルフォームを着用しますか?』


「いや、ひとまず今は良いや。先に片付けしちゃうよ」


”高周波ブレードが壊れるのはお約束w”

”スピードフォームも一回の戦闘でボロボロw”

”これはロマン武器の鑑w”

”確かにあのスピードはさすがに異常だったよなw”


リスナーたちがスピードフォームや双銃剣についてあれこれコメントを交わす中、ドラゴニュートの武器や素材を回収し終えた三崎はそのままその場を離脱し、大きな湖をぐるりと回り対岸に存在していた岩陰に腰を下ろした。


そして再びファ○ネルを出し、周囲にバリアを張って休憩タイムに入った。


「はい、ということで2回目の休憩タイムです。さすがに先程の戦闘で少し疲れたので今回はちょっと長めに休憩を取ります」


そういうとそのまま湖畔の岩陰でごろりと寝転がる三崎。


”冷静に考えてドラゴニュート30体を一人で制圧したのは頭がおかしいw”

”最後の一瞬が鮮烈すぎたけど、ニュートラルフォームで乱戦やってたときもすごかったw”

”というかニュートラルフォームの乱戦こそがガチの深層探索者感出てたw”

”わかる。小細工なしで純粋な技術というか体術のみで対応してたもんな”

”30人組手からのあの超速戦闘はそりゃ疲れるだろw”


普段はロマン武器の圧倒的なまでの攻撃力を前面に押し出すスタイルで戦うことが多い三崎だが、そんな彼の素に近い戦闘が見れたとあってリスナー達のテンションも上がっていた。


そんなコメント欄の流れを手元に出したモニターで眺めつつ三崎は寝転がったまま、


「じゃあ先程の戦闘とか武装について説明しますね。申し訳ないけどこのまま寝そべったまま話します」


”全然おk”

”おk”

”しっかり休め”

”気にすんな”

”おk”


「まずいきなりスピードフォームで戦わなかった理由から説明していきますね」


”それ気になってた。”

”フォームチェンジが映える場面を待っていたとかじゃないんだ?”

”ちゃんと理由があるの?”


「まぁ確かにフォームチェンジの見栄えとかもありますが、実戦的な観点からスピードフォームっていきなり使えないんですよ。というのもあのフォーム、早すぎて実は僕だけだと制御しきれません」


”えw”

”えw”

”えw”

”えw”

”えw”


「あまりにもスピードが速い上に、しかも直線的な動き以外もしっかり動けるのでアルファの制御なしにあのフォームの最大出力で動こうとすると制御に失敗して壁とか地面に激突します」


”とんでもないフォームだなw”

”パワードフォームといいスピードフォームといい癖がすごいw”

”ロマン武器としては正しいw”


「スピードフォームの能力を最大限に発揮するためには、まずは敵の動作解析をして相手の動きを理解した上で動作予測をできるようにし、その動作予測に基づいた進路補整支援をアルファに実施してもらう必要があります」


「なので今回は最初にニュートラルフォームのまま30体のドラゴニュートの集団と戦い、相手の動作解析をしたりするためのデータを集めていました。だいたい数分でデータを取り終えたので、データを取り終えたタイミングでスピードフォームにフォームチェンジしたという訳です」


『ちなみに補足ですが、ドラゴニュートそのものの基本的な行動パターンは私のデータベースの中にも存在しているのですが、特定の環境下で、かつマスターのスピードフォームの能力を最大限に発揮させるために最適化のための時間が必要だったという感じですね』


「アルファも補足サンキュー。で、色々データが揃って、ちゃんとスピードフォームの能力を引き出せる条件が揃ったあとはご覧の通りという感じですね」

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