第22話

ドラゴニュートの集団との戦闘に突入してから数分、三崎は相変わらず集団相手にヒット・アンド・アウェイを繰り返しつつ、致命傷になりうる攻撃は全て避けながらも徐々に被弾する回数が増えてきていた。


ニュートラルフォームの装甲表面にも目視で確認できる程度には被弾のあとがあり、傍から見ていると明らかに劣勢であることがわかる。


”おいおいコレは不味いんじゃないか?”

”さすがにちょっと心配になってきた”

”相手はまだ一体も減ってないじゃん、大丈夫か…”


リスナーたちも不穏な流れに心配になりはじめた頃、


「アルファ、そろそろ敵の行動パターンは読めたか?」


『はい、お待たせしました。ドラゴニュート集団の動作解析が完了しました。これで動作予測が可能になります』


「よし、じゃあここからは俺のターンということで」


そういった三崎は引き続きドラゴニュートからの致命傷になりうる攻撃を避け、牽制の攻撃を放ち、一瞬の隙をついて集団の中に突入する。そして流れるような動きの中で


「アルファ、フォームチェンジ、スピードフォーム。兵装、双銃剣」


『短縮コマンド起動。フォームチェンジおよび武装の実体化完了しました』


一瞬でフォームチェンジが完了。黒いニュートラルフォームから青いスピードフォームへと変化し、その両手には双剣が握られていた。


「スピードフォーム、最大出力!」


『了解。出力最大。行動予測支援も実施します』


その一言と共に三崎の姿が一瞬ぶれ、画面から消えた。そしてその直後、数体のドラゴニュートがその首筋から血を吹き出して倒れた。


”え?”

”え?”

”え?”

”え?”

”え?”


そのままさらに数体のドラゴニュートが首筋から血を吹き出して倒れたところで、集団からやや離れたところに急に三崎が現れた。


青いスピードフォームが淡く発光しており、その手に握られている双剣からはモンスターの血が大量に流れていた。


その様子を見たドラゴニュートもリスナー達も、やっと何が起きたのかを理解した。


すなわち三崎が超速で移動し、そしてその双剣でドラゴニュートたちを切り倒したことを。


”まじかよ、何も見えんかったw”

”これは速すぎw”

”スピード系のフォームと双剣とかめちゃくちゃ好みなんだけどw”


一方で急に数を20体ほどに減らしたドラゴニュートたちは最大限の警戒をしつつ、盾持ちや刀を装備したスピード重視の個体を前面に押し出してきた。


さらにその後ろから弓や杖持ちの個体が先程以上の密度で遠距離攻撃を放ってくるがその尽くを三崎は一瞬で避け、ドラゴニュートの集団に近づくと見せかけてフェイントを掛け、相手の一瞬の隙をつき手元の双剣を銃剣モードに変更し、ドラゴニュート数体を撃ち抜いた。


”双剣でしかも銃剣!!!!”

”これは確かにロマン武器w”

”めちゃくちゃカッコイイw”


いいようにやられていたドラゴニュートの集団だったが、そこは流石に深層エリア最強格。


三崎のスピードと武装の特性を理解した後にはスピードが早い個体のうち数体が三崎にベタ貼りで張り付きつつ行動をある程度制限し、そして周囲のドラゴニュートが支援攻撃をつづけるというスタイルに落ち着いた。


「ドラゴニュートはさすがにやるな!」


そう言いつつ双剣を振るい、相手が一瞬距離を取ったタイミングで銃剣モードで遠くのドラゴニュートへ牽制攻撃を放ち、そしてまた近くのドラゴニュートの攻撃を捌くという作業を繰り返していた。


また再び膠着状態になりつつある中で、


『マスター、このままのペースだとエネルギーが尽きます。そろそろ決着をつけてください』


とアルファからの警告が入る。強化外骨格含めて各種兵装は時間をかければエネルギーの自動回復自体は可能ではあるものの、特にスピードフォームの場合は最大出力での戦闘には時間制限が存在する。


「了解、このまま押し切りたかったけど流石にそうはいかないか…」


とやや残念そうに呟いた三崎は


「よし、このまま決める。アルファ、双銃剣第2形態。高周波ブレード展開」


『了解。高周波ブレード展開しました』


三崎の手元の双剣の刀身がその中央から前後に割れ、その間から青いビーム状の光が放出され刀身全体を包んだ。


「スラスター全開、行動予測支援、進路補整支援も頼む」


『了解です。スラスター全開、各種支援実行。突入どうぞ』


そうアルファが言った直後再び三崎の姿が一瞬で消え、そして15体いた残りの全てのドラゴニュートの首が飛んだ。

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