第21話
アース・ドラゴンとの戦闘後、安全地帯での休息を経て三崎は引き続き富士五湖ダンジョン深層エリアの探索を継続していた。
途中で幾度かモンスターと遭遇したもののモンスターのランクが低かったことから三崎はさくっと瞬殺することを選び、ニュートラルフォームのままモンスターをぶん殴る・蹴り飛ばすなどしていた。
”アース・ドラゴンの話は置いといても深層モンスターが一瞬でw”
”なぁ、さっきぶっ飛ばされてたのはミノタウロスさんなのでは…w”
”ニュートラルフォームの基本性能が高すぎて感覚が麻痺するw”
リスナーからのリアクションは概ね好意的なものが多いものの、三崎としてはせっかくの機会なのでフォームチェンジをお披露目したくてうずうずしていた。
そしてアース・ドラゴン戦から約1時間経過した頃、周囲の雰囲気がガラッと変わった。
富士五湖ダンジョンはその名の通り富士五湖周辺に存在する。
ダンジョンはその地域の環境を模擬することが知られており、例えば山の中に出現したダンジョンは木々が生い茂り、採掘場などの近くに出現したダンジョンは瓦礫の山から成るダンジョンとなり、海辺に出現したダンジョンには海が現れる。
そしてここ富士五湖ダンジョンは、富士五湖周辺の豊かな自然環境を模擬する形で岩石エリア、湖エリア、平原エリア、そして火山エリアから構成されていた。
この多種多様なエリアと、各エリアに適合するモンスターのバリエーションの豊かさがこの富士五湖ダンジョンを国内屈指の難易度のダンジョンにしていた。
三崎がアース・ドラゴンと戦い先程まで探索していたのが岩石エリアである。そして今、眼前には広い湖が広がっていた。
”おお!”
”さすが富士五湖ダンジョン!!一気に雰囲気変わる!!”
”人の手が入ってないからホント綺麗な湖だよね。”
などなどコメント欄が深層アタック中であることを忘れさせるような風光明媚な光景にふんわりしている中、
「アルファ、拠点制圧兵装 超電磁砲展開」
『了解です。アイテムボックス起動。拠点制圧兵装 超電磁砲を実体化』
「よし、超電磁砲発射用意。対象、湖」
『エネルギーチャージ開始しました。発射まで10秒、9、8、7、』
突然超電磁砲をアイテムボックスから取り出し、湖に向かって構えた三崎はそのまま
『エネルギーチャージ完了しました。いつでもどうぞ』
「おっけー、いけ!超電磁砲!!!!」
そのまま何の躊躇いもなくトリガーを引いた。
膨大なエネルギーと共に光の奔流が湖に向かって放たれ、そしてそのまま轟音を立てて湖が爆発した。湖全体が凄まじい波に包まれ、そして上空には綺麗な虹がかかる中、
”え、いきなり何してんのこいつw”
”長閑な湖がいきなり台風後みたいにw”
”超電磁砲はやっぱかっこいいなw”
”ちゃんと修理したんだなw”
などとリスナーが若干ドン引きしてる中、
『マスター。多数のモンスターを感知しました。おそらくドラゴニュートです』
「よし。予定通りだな」
三崎の表情は仮面で隠れて見えないものの、その声には「計画通り」という雰囲気が溢れていた。
”どういうこと?”
”時間あるなら解説よろ。”
”俺はなんとなく察した…w”
超電磁砲をアイテムボックスに収納しつつコメント欄をヘッドアップディスプレイでチラリとみた三崎は、
「そうですね、ご存知の方も多いかもしれませんが富士五湖ダンジョンの湖エリアにはドラゴニュートが生息しています。ただ普通に探索していると彼らとはなかなか遭遇することが難しいんですよね」
「モンスターと言ってもサイズが人型程度であることや、知能が高く集団行動をしつつ好戦的ではないためです。ただ一方でモンスターとしての強さは富士五湖ダンジョン深層でも最強クラスです。一体一体も充分強いですが、特に集団戦となるとめちゃくちゃ強いですね」
「ということで、そんな彼らの方からやってきてくれるようにするために湖を吹き飛ばしました。ドラゴニュートにとって湖は大事な生活圏らしいので、怒って出てくるかと思って」
”相手がモンスターだということを除けば完全に悪役の発想w”
”完全に侵略者w”
”効率を追い求めたモンスターがここに…w”
そんなやり取りをしていると三崎の前に30体程のドラゴニュートが現れた。
各個体はそれぞれ手に武器を構えており、刀、槍、ハルバード、盾、弓、杖などそのバリエーションも豊かだった。
”え、これ普通に数めちゃくちゃ多くね?”
”これ大丈夫か?”
”ドラゴニュートさんたち、表情が完全に怒ってるw”
三崎はニュートラルフォームのままドラゴニュートの集団と相対し、一瞬の静寂の後、ドラゴニュートの指揮官らしき個体が三崎に向かって咆哮した。
その咆哮を合図に戦端が開かれた。弓や杖を持つドラゴニュートたちから一斉に遠距離攻撃が放たれる。その全ての攻撃を三崎は躱しつつドラゴニュートの集団に突っ込んでいく。
一瞬でドラゴニュートの集団に近づいた三崎がその拳で手近な場所にいた槍を持ったドラゴニュートをぶん殴ろうとすると、その間に盾をもった個体が割り込み拳を受ける。
拳を盾で受けられた三崎の背後から刀を持った個体が切りかかってくるが、そのまま三崎はその場を離脱し、さらに弓や魔法を避けつつ別の個体に殴りかかる。
”これ、完全に乱戦だけど大丈夫か?”
”ドラゴニュートさん達の集団戦、かなりエグいなw”
”これは普通にピンチなのでは??”
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