第18話

三崎の攻撃を受けたドラゴンが轟音を立てて吹っ飛んでいく中、それをそのまま黒い強化外骨格を身にまとった三崎が追いかける。


「ということで最初は皆さんご存知、黒いニュートラル・フォームで行きます」


と解説しながらドラゴンに追いついた三崎は、そのままフラついているアース・ドラゴンの胴体に豪快な回し蹴りを放った。


「「「「グォオオオオオオ!!!!???」」」」


と叫び声を上げながらアース・ドラゴンが再び吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


それを見逃すわけもなく、三崎は壁に叩きつけられたアース・ドラゴンに拳のラッシュを浴びせかける。


”これはw”

”えっと、富士五湖ダンジョンの深層ですよね?w”

”リアルタイム配信してなかったら確実にCGだと思ってたと思うわw”

”現実感がなさすぎるw”

”アース・ドラゴンってこんなに弱いんですか??”

”↑ダンジョンあまり詳しくない勢だと思うけど、アース・ドラゴンは間違いなく深層エリアにふさわしいモンスター。ミサキがおかしいだけw”


すでに勝敗が決まったかのように見えたが、そこは流石に深層モンスター。


三崎のラッシュの一瞬の隙をついて尻尾で三崎を吹き飛ばし、体勢を立て直した。


一方で吹き飛ばされた三崎は空中で体勢を立て直し、華麗に着地する。


”ハリ○ッド映画かよw”

”マジでそれなw”

”マー○ル・シリーズでこういうのあるって言われたらそのまま信じると思うw”

”わかるw”

”ドラゴンさんもさすがやし、三崎もノーダメージっぽいのが意味不明w”


一瞬の睨み合いを経て、アース・ドラゴンが連続して魔法攻撃を放ってくる。


しかも最初に放ったストーン・バレットのようにクールタイムが必要になる規模の攻撃はせず、断続的に多種多様な土系の魔法を放ってきた。


”ドランゴンさん賢い”

”モンスターってこんなに行動学習するもんなん?”

”なんかもうすごすぎて意味わからんw”


それらの攻撃を避け、時には拳で弾き、さらには時折弾幕を超えて拳を叩き込んでいたが素人目に戦闘は膠着状況となっていた。


”これは…”

”お互いに決め手にかけるな…”

”うーん…”


とコメント欄もどうしたもんかと考えるものが多くなってきた中、とあるリスナーがふと


”あれ、もしかしてこのシチュエーションは…”

”あ”

”あ”

”あ”

”お!?”


このコメント欄の流れをヘッドアップディスプレイの視界の端で捉えた三崎はニヤリと笑い、


「ご明察」


と一言つぶやくと、


「アルファ、強化外骨格 パワードフォーム スタンバイ!」


『Ready! Set!』


そしてアルファがあいかわらず無駄に良い発音の英語で応える。そして、


「フォームチェンジ!!!!!」


『フォームチェンジコマンド承認しました。パワードフォームを量子空間から実体化、使用者に装着します』


そして一瞬の後、そこには紫色の強化外骨格に身を包んだ三崎がいた。


”キターーーー!!!”

”フォームチェンジ!!!!”

”おおおお!!!!!”

”紫色!!!”

”実際に見るとフォームチェンジ超かっけーな!”


フォームチェンジに盛り上がるコメント欄にさらに追い打ちをかけるように、


「アルファ、パワードフォーム専用兵装、斬艦刀」


『了解です。アイテムボックス起動、パワードフォーム専用兵装、斬艦刀を実体化』


三崎の手元には長さが10メートルを超えるとんでもないサイズの大型の刀が握られていた。


”斬艦刀キターーーー!!!”

”うおおおおおお!!!!!”

”これは激アツの展開!!”


そしてその超大型の刀を引きずりながら、三崎はドラゴンへ向かって一歩一歩踏みしめるように歩き始めた。


”え、まさかこの展開は…”

”え、うそでしょw”

”え、ここ深層やで、マジでそれやるの!!??w”


三崎の姿が変わり、よくわからない大きな物を謎の空間から取り出したことを見ていたアース・ドラゴンはその様子を警戒していたが、ドラゴンへ向かって歩き始めた三崎を見て改めて牽制の魔法攻撃を開始した。


・・・また避けられるであろうと思いながら。


「「「「!!!!!?????」」」」


そしてあらゆる牽制攻撃を全く避ける素振りすら見せず、さらにはその身に全ての攻撃を受けてもまったく歩みを止めない三崎を見てアース・ドラゴンは驚愕に目を見開いていた。


”ドラゴンがびっくりしている表情とか初めてみたw”

”こうやって見るとモンスターも意外と表情ってわかるもんなんだなw”

”それなw”


一歩一歩着実に近づいてくる三崎に対して牽制攻撃では効果がないと判断したドラゴンは、多少のクールタイムを覚悟して再びストーンバレットを放った。


その一撃は、


「ふんっ!!!!」


という三崎の気合の掛け声で跳ね飛ばされた。そのあまりに理不尽な防御力に呆然としたアース・ドラゴンのすぐ目の前にまで三崎はたどり着いた。


「アルファ、パワードフォーム最大出力、同時に斬艦刀のブーストも起動!!!」


『了解。パワードフォーム最大出力、および斬艦刀ブースト起動しました』


三崎が身につけている紫色の強化外骨格が淡く輝きだし、そして斬艦刀の峰の部分から何かしらのエンジン音らしき音が聞こえ始めた。


あっけにとられるドラゴンというそれはそれで非常に珍しい絵面の前で、


「いくぞ、アース・ドラゴン」


三崎はずっと引きずっていた巨大な斬艦刀の切っ先を初めて地面から持ち上げ、力を入れて振り被り、そして自らの頭上に構えた。


その構えはまるで薩摩示現流の蜻蛉の構えのようだった。


「ダン研流剣術 秘剣、二の太刀要らず」


斬艦刀が全力で振り下された。

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