第17話

「リスナーのみなさん、こんにちは。ダン研 オフィシャル 広報チャンネルです」


三崎たちがダン研会議室から雑談配信をしてから約1週間後の週末。土曜の13時。


三崎は国内屈指の難易度を誇るダンジョン、富士五湖ダンジョンから配信を開始した。


”お!”

”待ってました!”

”今回も顔出しスタートw”

”あれ、でも既にダンジョンの中なんじゃない?”


「はい、リスナーの皆さん色々コメントありがとうございます。でも、いただいたコメント以上に大事なツッコミポイントがあると思うんですよ」


と何かを憂慮した表情で三崎がつぶやく。


”んー?”

”なんか他にあった?”

”お前はめんどくさいカノジョかw”


「良いですか、今は土曜の13時です」


”うん?”

”うん?”

”うん?”

”うん?”


「そして俺は公務員です」


”何の話かと思ったらw”

”おまえw”

”働けw”


「今回は「変身!」かつ「フォームチェンジ!」が映える環境ということでダンジョンをチョイスしましたが、その結果週末の13時からという放送になってしまいました」


と「私、休日出勤は絶対嫌です」オーラを醸し出している三崎がそこにいた。


”まったくこいつはw”

”まぁ確かにこのチャンネルはオフィシャル広報チャンネルだもんな”

”普段の週末は何しているの?”


「わかってくれた同志がいてくれて良かったです…ん?普段の週末ですか?自分のロマン武器検証のためにダンジョンに泊りがけでアタックしたり、研究所の自分の研究スペースに引きこもってあれやこれや作ってたりしますね」


”うん、知ってたw”

”研究者の鏡w”

”めちゃくちゃ働いてるやんけw”

”いつもダンジョンアタックしているなら今日も同じだろw”

”いつも通りやないかいw”


「ん?あれ?そういえば確かにいつもの週末と変わらないか?」


三崎がネタなのかガチなのかいまいち判断にこまるボケをかましていると


『マスター。しょうもないボケはそれくらいにしてください。そろそろモンスターが来ますよ』


”安定のアルファちゃんw”

”平坦な人工ボイスなのに呆れたように聞こえるのがうけるw”

”そういえばダンジョン内だったw”


とリスナーたちもそういえばすでにダンジョン内だった事を思い出す。


「あぁ、悪い悪い。たしかにモンスターも近づいてるならちゃちゃっと始めますか。リスナーの皆さん、僕は今、富士五湖ダンジョンの深層エリアに来ています」


”おおお!?”

”富士五湖ダンジョン!!!???”

”ガチの最難関ダンジョンのひとつじゃん!”

”しかも深層!!!!????”

”おい、ふざけてる場合じゃないだろ!?”


と相変わらずの三崎の突然のコメントに早速コメント欄が右往左往している中、


「今回のコンセプトは「変身!」と「フォームチェンジ!」ということで、その特性を最大限に活用できそうな富士五湖ダンジョンからお送りさせていただきます」


「ご存知の方も多いかもですが、富士五湖ダンジョンはその名の通り富士五湖周辺に存在するダンジョンで、多種多様な環境のエリアやモンスターが観測されているダンジョンです」


「今回はここをソロで深層アタックしていき、深層エリアの踏破をもって配信を終わりたいと思います。今回は超深層にはアタックしません。流石に配信時間が長すぎると思うので」


喋りながら三崎は周囲を警戒しつつ歩きはじめていた。


”おい、もうこれどこから突っ込めばいいのかw”

”まだ3回目の配信のはずなのに毎回トンデモナイw”

”こいつ、深層エリアの踏破は当然みたいな言い方してたぞw”

”そして超深層エリアもアタックできないとは言ってないw”

”マジでなんなんこいつw”


三崎の紹介にコメント欄も大いに沸き立つ。


「さて、前回は雑談配信だったので、今回はマジで戦闘シーンもりもりでいこうと思います。なのでコメント返しとかはあまり出来ないと思うのでその点はご容赦ください」


”おk”

”おk”

”おk”

”おk”

”おk”


「ということで皆さん、言っとくが俺は、最初からクライマックスだぜ!」


とノリノリで駆け出す三崎。


”モモタ○ス”

”テンション高いなw”

”盛り上がってきたw”


『マスター。そろそろ接敵します。アース・ドラゴンのようです』


”いきなりw”

”アース・ドラゴンw”

”そういえばここは富士五湖ダンジョンの深層エリアでしたねw”


「アルファ、了解!」


といった矢先、ダンジョンの少し狭い洞窟状になっていた通路を三崎が駆け抜けて広間に出た瞬間、


「「「「「ガァァァァァッ!!!!!!!」」」」」


といきなりアース・ドラゴンが先制のストーン・バレットを大量に浴びせかけてくる。


その攻撃を生身のまま、深層探索者のスペックを見せつけるようにひょいひょいと躱してアース・ドラゴンに近づいていく三崎。


そしてその三崎を追尾して撮影を続けるドローンの映像を見ているリスナー達は


”こぇええええええ!!??”

”うぉおおおおおお!!!???”

”うわっ!?ひゅんってなった!ひゅんってなったよ!”

”おおおおおお!!!!????”

”というかなんでまだ変身してないんだ!!!!????”


そのリスナーたちの叫びを他所に全ての攻撃を避けきった三崎は、


「変身ってのはポーズを付けながらするのもロマンだけど…」


攻撃が止んだのを見てさらにダッシュし


「最近は動きの中から流れるように変身するパターンってのもロマンだと思うんですよ!!!!」


と攻撃直後の硬直で身動きがとれないアース・ドラゴンの目前で跳躍し、右の拳を振り被りながら


「さぁ、みなさん行きますよ!!!!!声を揃えて………」


「変身!!!!」


”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”コメント欄の一体感www”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”

”変身!!!!!!!”


『短縮コマンド起動。強化外骨格の展開完了しました』


振りかぶった右の拳でアース・ドラゴンの左頬をぶっ飛ばした。

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