第14話
とある金曜日の20時すぎ。第2回目ダン研 オフィシャル広報チャンネルの放送が無事に終了した後、ダン研コミュニティースペースではささやかな打ち上げが開かれてた。
「それでは放送が無事に終了したことを祝して乾杯!」
という古賀の音頭と共にあちこちで飲み物の缶やコップを乾杯する音がする。
この打ち上げには放送に出演していた三崎、古賀、西原に加えて、撮影などの運営を担当していた広報部の職員達、ダン研の長である林所長、三崎の直接の上司である南野課長たちが当たり前顔で参加していた。
さらにたまたま通りすがった何人かのダン研職員や、冷やかしで撮影を見学していた三崎の同僚や友人たちもなりゆきで参加している。
「にしても今のところびっくりするくらい順調ですよ!正直笑いがとまりません!」
あまりにも順調な滑り出しに、普段は飄々としつつも一定の節度は必ず守るタイプの古賀が明らかに調子に乗っていた。そんな古賀を微笑ましく見ながら林所長や南野課長も頷く。
「あらためて古賀くん、そして三崎もお疲れ様。西原さんも今回は同席ありがとう」
そういって林所長もにこやかに話し始める。
「最初にこの企画を古賀くんが持ってきたときには大いに悩んだものだけど…乗って大正解だったね。さっそく中央の方からも色々と連絡がきているよ」
林所長に同意する形で南野課長も、
「そうですね。三崎くんの技術が形はどうであれ世の中に認知されて私も非常にうれしいです。そして正直とても助かるわ」
南野課長の最後の一言に込められた色々な背景を感じとった三崎は心の中で「サーセン…」と思いつつ、まだ2回目の配信とはいえしっかり手応えを感じてきていた。
そんな和やかな雰囲気の中、西原が
「そういえば配信中には聞きそびれちゃったんですけど」
と切り出した。
「アルファちゃんをうごかしているサーバー?ってダンジョンの中にあるんですか?」
とリスナー達から「配信中に聞いてくれよそれ!」と総ツッコミが入りそうな質問をしていた。その質問に対して三崎は気軽な感じで、
「あぁ、そうですね。三鷹ダンジョンの下層エリアにありますよ」
と当たり前のように当たり前では無いことを話始めた。この辺りの経緯をしっている林所長や南野課長は若干苦笑いをしながら、詳細は聞いたことがない古賀は興味津々といった様子で話の続きを待つ。
「三鷹ダンジョン?」
「西原さんはそこからか。三鷹ダンジョンってのは、この国立ダンジョン技術研究所の地下にあるダンジョンの名前だよ」
「えぇ!?ダン研の地下ってダンジョンなんですか!!??」
「正確に言うと、ダン研がダンジョンの上に建てられたんだよ。まぁその辺の経緯とかはダン研のホームページにも書いてあるから暇なときにでも見といてくださいね」
一応情報公開はしっかりされているものの積極的には広報されていない類の情報であり、一般人はもちろん若手の探索者でさえ知らない者が多いのが三鷹ダンジョンである。
一方である程度の経験をつんだ中堅からベテラン探索者の間では知らぬものはいないというのもまた三鷹ダンジョンの一面でもあった。
「まぁ三鷹ダンジョン自身のアレコレはともかく、三鷹ダンジョンの下層エリアの一角にアルファを動かしているサーバーというかデータセンターがありますよ」
そう話をしていた三崎の後ろから、
「そしてそのデータセンターのお守りは俺たち技術評価本部やダン研に雇われている探索者達が交代で対応してるって訳だ」
そう言いながら林所長や南野課長、古賀に軽く挨拶しつつ会話に入ってきたのは爽やか体育会系のイケメンだった。
「お、佐野か。おつかれさん。来てたのか」
「そりゃまぁ同期があれだけ注目浴びてれば気になるだろ笑」
この佐野、三崎本人に対して最初にバズっていることを告げた張本人である(第3話参照)。
「西原さん、はじめまして。三崎の同期で佐野恵太郎といいます。ダン研の技術評価本部所属で深層探索者です。よろしくね」
佐野は三崎とは異なり中途でダン研に入所しているのだが、入所時期に加えて年齢がたまたま同じだったことから三崎とは普段から昼飯を一緒に食べたり、週末もプライベートで遊びに行くような仲だった。
「初めまして、西原です!佐野さんも深層探索者なんですね…すごい!というかダン研ってこんなに深層探索者の方が多いんですか??」
西原のもっともな疑問に対して林所長が、
「いや、さすがにそれはないよ。この二人が少々お転婆でね」
と若干乾いた笑いで説明する。
「三崎はともかく、技術評価本部にはダン研の成果物を評価するために探索者に在籍してもらっているんだけど深層探索者は多い時期でも10人いないよ。現在はここの佐野くん含めて技術評価本部には7人だったかな?」
林所長に確認された佐野は、
「そうですね、林所長がおっしゃるとおり現在技術評価本部には7人の深層探索者がいますね。なお巷ではダン研セブンとよばれています」
とどうでも良いことを補足していた。
「まぁ俺たちは全国各地のダンジョン調査とか、海外との演習とか、軍とのアレコレとかもあるから、三鷹のダン研にいるのは普段はだいたい3人前後かな。俺も来週からまた長期遠征だし」
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