第2話
ブレスが放たれた瞬間、ホマレは目をつぶっていた。せめて苦しまずに死ねたら良いな…と思っていたがいつまで経っても何も起きない。
恐る恐る目を開けると自分の周囲が半透明の壁で覆われていた。
「これは…?バリア?」
ホマレを中心とした三角錐が形成されていた。三角錐のそれぞれの頂点にはなにやら見慣れないタイプのドローンのような板状の人工物が浮遊していた。
その板状の人工物同士が魔法のようなエネルギーを発しており、板状の人工物の間に半透明の膜が形成されていた。要するにファ○ネル・バリアである。
ドラゴンもこの状況に戸惑っている様子が感じられた一瞬の静寂あと。
「間に合ったみたいだな」
という男性の声がホマレの隣から聞こえてきた。そこに目を向けると黒ずくめで仮面をつけた不審者がいた。
「え…?誰?」
”誰?”
”ホマレが生きてる!…え、誰?”
”え?”
ホマレも視聴者もドラゴンさえも思考が追いついていない状況の中、黒ずくめの仮面の男(三崎)はホマレに問いかけてきた。
「立てるか?」
「ごめんなさい、足をくじいたみたいで…」
「そうか。念のための確認だけど戦えるか?」
「ごめんなさい、そもそもドラゴンに勝てないからずっと逃げてきたの。私は今日はじめて下層に潜ってきたばかりで」
「わかった。あとは任せろ」
男はそれだけ言うとホマレを庇うようにドラゴンと対峙した。
「アルファ」
『はい、マスター』
「彼女を抱えて逃げられると思うか?」
『難しいと思います。こちらのドラゴンはおそらく変異種です。逃げるよりも撃退することを推奨します』
「だな。ということは早速お披露目会だな!ドラゴン相手だ。相手にとって不足なし」
そう仮面の男がつぶやいた。いきなり現れた男を警戒して様子を伺っていたドラゴンも動き出そうとしている中、
「アルファ、最初から全力だ。スラスター全開。空間制圧型自律起動兵装、全機展開」
『了解。スラスター起動。空間制圧型自律起動兵装、全機展開します』
男の背面のバックパックらしきところから板状のドローンのようなものが8機周囲に展開された。
さらにそのバックパックから大量のエネルギーが放出され男が宙に浮き上がる。
その様子を見ていたホマレもリスナーもあっけに取られていた。現代のダンジョンにおいて人が宙に浮くなどありえない。
さらに8機ものドローンを一人の人間が制御するのもありえない。(ホマレを守っている分を含めると12機になる。)
そんな彼女たちの様子を気にすることもなく、宙に浮いた仮面の男の周囲をドローンが旋回していた。その時突然、様子を伺っていたドラゴンからブレスが放たれる。
「アルファ、シールド展開」
『シールド展開します』
男がそう命令すると8機の板状のドローンが男の前で円環状になりシールドを展開した。
ブレスが着弾した際にすさまじい爆発音と光量が発生し、ホマレや多くのリスナーは目を瞑ったが光が落ち着いたそこには無傷の男がいた。
「アルファ、状況を」
『ビットに異常はなし。エネルギー残量40%に低下』
「やっぱエネルギーの消費が激しいな。まぁそれはあとでいいか。もうやってしまおう」
男は宙に浮いたまま左腰に装着していた銃を構えると、
「マルチロック起動。対象、ドラゴン!、フルバースト!」
そう叫ぶと、男が構えていた銃と周囲を旋回していた8機のドローンからドラゴンめがけてビームが発射された。
ブレス発射後の硬直で身動きが取れなかったドラゴンは避けることができず全ての攻撃が直撃する。
「「「「「グガァアアアアアアアアアアア」」」」」
攻撃が直撃したドラゴンは苦しみながらのたうち回っている。その隙を逃さずに男がさらに攻撃を加える。
「アルファ、全機で連続攻撃!」
『了解しました。対象を殲滅するまで攻撃を続行します』
その命令をうけた8機のドローンが男の周囲を離れ、ドラゴンの周囲を旋回し始めた。そしてドラゴンの周囲を旋回しながら連続的にビームを浴びせていく。
ビームの檻に閉じ込められたドラゴンはその身を削られながら、なんとかドローンを撃墜しようと尻尾や爪で攻撃をしようとするが、その尽くが空振りになる。
その様子を見ていたホマレやリスナーは…
「すごい…」
”え、何あれ、マジでやばくない??”
”ドラゴンが一方的に削られている!?”
”見た目完全に厨二病なのにまじで強い!?”
などあっけに取られていた。
8機のドローンがドラゴンの周囲を飛び交いながらビームを乱れ打ちする様は見ようによっては幻想的な光景でもあった。
そしてホマレも、リスナーも、ドラゴンすらもドローンによる攻撃に気を取られていた間に本命を準備した男はトドメの一撃を宣告する。
「よしエネルギーチャージ完了!アルファ、空間制圧型自律起動兵装を拠点制圧兵装に換装する!」
『了解。拠点制圧兵装に換装します』
ドラゴンの周囲を旋回していた8機のドローンと、ホマレをガードしていた4機のドローンがすべて男の場所へ戻っていく。
連続して攻撃を受けていたドラゴンはぐったりしており動きが鈍い。
そして男のもとへ戻ってきた12機のドローンが、男が把持していた銃に合体し一つの巨大な銃となる。
『マスター、拠点制圧兵装換装完了。いつでもどうぞ』
「さんきゅー!っしゃいくぜ!これを一回やってみたかった!」
男の手元の巨大な銃からバチバチとした音と光がもれてくる。その音と光に気づいたドラゴンがなんとか逃げ出そうと藻掻いているがもう遅い。
「ロマン武器といえばこれだろ!
そう叫んだ男がトリガーを引いた瞬間、光の奔流がドラゴンを飲み込んだ。
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