群青の中に生きし悩む緑

河内三比呂

私は緑のままに生きるのだろうか?

 病気、心因性空間侵食症。

 通称、PSES。

 その症状を発症した者達が集められた島にある施設、群青学園。

 そこで私は十歳の頃から住んでいる。


 ……発症者として。

 この症状には段階があり、進行度により色が文字通り変わる。

 だが。

 だからこそ……その中で私はある意味異常であった。

 十歳の頃に発症したと診断され、この島に送られた。

 だが、皆が進行し、色が、世界が変わって行く中で私の色は変わらなかった。

 変わらな過ぎた。

 そう。

 私は初期とも言えるだろう、グリーンから変わることなく六年が経っていたのだ。

 何度計測しても変わらない。

 その事実がまた研究対象としてはある意味興味深かったらしい。

 一人の研究者により、私は被検体として観察対象としてあらゆる事をさせられている。

 ……今もなお。

 変わらぬグリーンとして。

 果たして、私の世界の色が変わる日は来るのだろうか?

 それとも、本当にいつまでもグリーンのままなのだろうか?


 この世界が色づく事に淡い期待を抱きつつ、私は今日もこの学園で生きるのだ。


 おそらく――命尽きるまで。

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群青の中に生きし悩む緑 河内三比呂 @kawacimihiro

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