僕だけの夜中開演系オペラ座

神永 遙麦

僕だけのオペラ座

 僕は夜中にこっそりテレビを見てみたくなった。

 家族にバレないように、兄貴大碁のめちゃくちゃ良いヘッドホンをパクって。ミュージカルが観たい。


 そんなことをネットを見ながら考えていた。

 画面にはミュージカルのチケット。小学生の小遣いではムリな値段。おまにド田舎なら、劇場に行くなら交通費もエグい。そもそも親の許可が必要だ。チケット高いから1人で行くことになるだろうし。中学生1人で劇場に入れるのかな?あ、行けるらしい。

 ネズミー原作の冒険物は飽きるくらい見せられた。男兄弟だから、恋愛モノには興味ないと思われてんだろうな。

 けど、僕は知ってる。大量の恋愛系ミュージカルのDVDが本棚にあるってこと。でも、母さんも父さんも知らないのは、僕はそのDVDに興味津々だってこと。

 前、それとなく観る流れに持って行こうとしたら、「翔碁しょうごには早い」って言われた。ハリウッド映画じゃないんだから、気まずいシーンはないだろうが。

 

 とにかく、夜中だったらバレない。劇場気分を味わいたいから、テレビで。オレのヘッドホンは安いやつで、ボロくなった。だから、兄貴が買ったやつを借りよう。

 ってか早く高校生になって兄貴みたいにバイトしたい。そしたらいいヘッドホンも買えるし、モニターも買える。後、部屋に鍵つけたい。勝手に入って来られんのマジで嫌なんだが。


 あ、ヤベ。

 僕は慌ててタブレットの画面を切り替えた。教育系のチャンネルに切り替えた。

 後ろに母さんが回り込まれた。

 

 *


 その後、チッチッチッチッチッと時間が過ぎていった。

 22時。僕は狸寝入りを始めた。

 今日は祝日だから、父さんも母さんも寝る時間は早いはずだ。

 そら、母さんが寝室に入った気配が。父さんは晩酌かな?

 さっきから睡魔に誘われてる。今日晴れだったから?日光浴をしたから?

 睡魔に流されまいと戦い続け、時計を見た。22時半だって気付いた時、僕は絶望した。

 父さんが2階に上がった気配がした。時計を見ると、22時45分。父さんは下戸だからすぐ寝るだろうな。母さんも寝付くのは早いし。


 僕は布団から抜け出した。ベッドの下に手を突っ込んで、兄貴からパクったヘッドホンと、恋愛系ミュージカルのDVDを出した。このミュージカル観た後の母さん、泣いた跡がすごい。目ぇパンパンだし、鼻水ズルズルだし、情緒不安定だ。


 コソコソと忍者になったつもりで1階に下りた。TVにヘッドホン繋いで、ディスクにDVDを入れた。ってかいつこのDVD買ったんだろう?


 ウィーンと鳴った。


 オペラ座が舞台だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕だけの夜中開演系オペラ座 神永 遙麦 @hosanna_7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説